鉢ヶ峯/2002 「トンボ釣り大会」

報告/酒井 和子

日 時:7月6日(土)16:45〜19:15 晴れ、たまにバラッと雨
場 所:鉢ヶ峯のどんぐり広場 第二豊田川ホタル橋付近
主 催:関西トンボ談話会 鉢ヶ峯の自然を守る会
広 報:
鉢ヶ峯の自然を守る会会報誌、大阪自然環境保全協会「都市と自然」、トンボ王国通信、「しぜんにタッチ」、地域紙−泉北コミュニティ・ホームタウン・リビング堺、自然ふれあいの森委員会ほか
指 導:松田勲さん
参 加:
関西トンボ談話会  2人
一般参加者  64人

スタッフ  12人(応援スタッフ3人を含む)
山本哲央、酒井和子、野口隆司、清水俊雄、米道綱夫、山本浩平、仁木梅子、田中多美子、鞭目和幸、川口麻梨子、金沢克也、新田芙江
内 容:
 宣伝が早かったのとリビング紙に松田さんの写真入りのコメントが出たせいか、問い合わせと申し込みが相次ぎ、例年になく泉北外からの参加が多かった。
 今年は松田さんの提案で早目に集合して、まず、どんぐり広場で参加者の方々にトンボ釣りの”歴史”の紹介と、「ブリ」の作り方、使い方の説明と実技が行 われた。糸の両サイドに小石を油紙(謄写版)でくるんで作るブリも、ブリをスイングさせて放物線を描くように投げ上げるのも小学生には難しかったが、中に はカンの良い子もいてそこそこに技術を習得。コナラの道を抜け20分ほど歩いて第二豊田川沿いの”会場”にくる。
 バラッと雨もきたが、トンボ釣りには支障はない。と言っても風があるせいか蚊など小さな虫が少なく、そのせいか餌をとりに山から下りたヤンマの姿も少な い。碧色の複眼が美しいマルタンヤンマも時折姿をみせるが、ブリにはかからない。ちょっと待ちくたぴれてぐずる幼児もいる。その間、網で採ったヤブヤンマ やネアカヨシヤンマ、コシボソヤンマなどを観察する。翅を力強くふるわせ、あごを大きくあけて噛みつくヤンマに子どもたちは魅せられている。
たそがれが山合いに忍んできて、そろそろお開きかと思う頃、ついに名人・松田勲さんがヤブヤンマを1頭、ゲット。歓声が湧く。
 トンボ釣りの釣果は、松田さんのヤブヤンマ♂と参加者の道野さんが最初に釣ったトンボの仲間のコヤマトンボ♂の2頭だった。子どもたちは岡田三朗さん(関西トンボ談話会)からのお土産を手に、懐中電灯を頼りに帰路についた。

●参加者感想 −とんぼ釣り・考−
 50年ぶりの”ブり”だった。とんぼ釣りやりまあーす!に引かれて少年のころにタイムスリップした。オニヤンマにはこれ。銀ヤンマにはこちらと。2種類の”ブリ”を用意して鉢ヶ峯に気負って出かけた。
 何をいまさら気負ってと言われそうだが10才のころの夏の夕暮れ。ランニングシャツ一枚のいで立で出かける近くの原っぱには、もう何人かが集まっている と思うと、少なからず心がはやった。直前に夕立が止んだ日などはなおさらだ。母も解ってか「今日はふた桁かな?ガンバッといでや。」とけしかける。今から 思うと(トンボつり今日はどこまで行ったやら)の心境だったのだろうか。
 西日が赤く染まる前から六甲の峰の向こうに沈むころまで東方から飛んでくるヤンマをねらった。
地上10〜20m位を飛んでくる羽が透明なのは”ラッポウ”といって銀ヤンマのオスと僕らは呼んでいた。時々、茶色も色濃い羽根のメスの銀ヤンマが悠々と 上空の”蚊”をねらって飛来すると、周りの友達はいっせいに”ホイラーン”と掛け声をかけて”ブリ”を中空にめがけて放り投げる。メスは貴重なのだ。明く る日の昼下がりにそれをオトリにしてラッポウがおもしろいように釣れるからだ。だからメスが釣れるとホッとひと安心だった。
 入り口を開けるのももどかしく「お母さん!ぞうきん、ぞうきん」とさけぶと板の間にすでに用意されていた。ていねいに羽根をそろえて横たえて充分水分を含んだぞうきんの間に挟んで一夜を過ごさせた。なぜこうすると生きながらえるか、だれに教わったか、今でも分からない。
 セミの鳴き声で目覚めると一目散に土間へ急ぐ。そおーとぞうきんをめくると果たせるかな羽根を小刻みに動かしている。一晩窮屈な思いをしたせいかうれし そうに羽根を羽ばたかせている。体全体をさするようにいとおしんでやると、それが分かったかのように更に力強く羽ばたく。子ども心に命の大切さの原体験 だったかもしれない。
 伝聞によると鉢ヶ峯の森は100へクタールを越える多くのため池や小さな水系を有している里山だそうだ。
 釣り場は樹木生い茂る数m程の川幅の谷道が選ばれた。立地的にはオニヤンマのたまり場だなあーと直感した。

谷道の奥にため池でもあれば銀ヤンマも・・と予想したが。
 暮色が進むにつれ上空に来るわ来るわ。10代のころにときめいた心がよみがえって来た。3〜4回ブリを試投してみた。驚いたことにすでに目的の方向、高さに放り投げることができた。幼少のころの原体験のなせる技と実感せざるを得なかった。
予感は当たったようだ。目視なので断定できないが、飛来するのはオニヤンマ系ばかりのようだった。1〜2回目前に投げてみたが全く食いついてくれない。3回目比較的低く飛んで来たので条件よく投げてみた。えさに見立てた釣り用のシズにも目もくれない。
しかし、運良く羽根に釣り糸が格んでくれたので、例の”カシャカシャ”と本当に懐かしい音をたてて地上に!。子どものオニヤンマかなと思いきや、スタッフの先生に”ヤブヤンマ”と教えられた。
(閑話休題)帰宅後、家族にこの時の感想を聞かれたが、「そばに100万円の札束があってもヤンマを押さえるのに必死やった」との答えに「この年になって 金銭では絶対に買えない体験やってんなあ!」(我ながら、こそばゆい、それでいて少々鼻のてっぺんが伸びたように感じました)
 その後高く低くヤンマ君は目の前に来れどもブリには無関心の様子。
1時間余りのひとさま(人間)とトンボ(自然)の戦い?は完敗。近ごろのトンボは軽くなって”シズ”のごとき疑似餌はとっくの昔にお見通しで、半世紀も経って同じ方法とは「進歩がないんだねーとあざ笑われているような気がした。
 様々な工夫をした”ブリ”で挑戦した50人程の参加者の釣果?も数羽だったようだ。
 昔は、銀ヤンマにはこの”シズブリ”でおもしろいように釣れたのに・・。オニヤンマに対する疑似餌は何が良いか−−は来年の課題としておこう。
H14.7.8
青少年のとんぼ釣り