美原区黒山地区の大型商業施設(ららぽーと)開発計画の
                  環境影響評価を巡る動きについて(報告)

   野口 隆司        


これまでの経過

三井不動産梶i東京都中央区)が堺市美原区黒山地区(美原区役所北東部の国道309号線沿い)で約8.2fの土地に大型商業施設(ららぽーと)の開発計画を進め、現在、堺市環境影響評価条例(以下、同条例。)に基づく手続きが行われています。平成29年2月、同社は堺市長に開発の計画段階で環境について配慮することを示す「配慮計画書」を提出しました。

開発計画区域内の北端部にある溜め池(新池)のヨシ原で、昨年の夏、本会のメンバーがピーク時に約7,000羽のツバメの塒(ねぐら)を見つけていましたが公表された配慮計画書をみると、ツバメの塒になっている新池が開発で埋め立てられることが判明しました。公表にあわせて堺市は配慮計画について市民の意見を求めており、4月11日、本会はツバメの塒への配慮をはじめ、新池の代替池として北側に築造される池で生き物が生息・生育できる環境の創出などを求める意見書を堺市長に提出したところです。

堺市環境影響評価審査会が開催される

その後、5月31日に堺市は附属機関の「堺市環境影響評価審査会」を開催し、配慮計画書に対する市長の意見案を諮問しました。あわせて同審査会で委員から本会から提出した意見書についてもコメントがあり、以下、2つの意見について審査会でのやりとりのポイントを報告します。なお、審査会委員15名(自然環境・生き物分野の学識経験者は0名)中、出席者9名。傍聴者は1名でした。

 ◇市長意見案(配慮計画審査書案)の概要

当該大規模商業施設開発で想定される環境への影響は、主に(ア)発生集中交通(来店車両等の交通量)による道路渋滞の悪化、(イ)発生集中交通及び渋滞による大気・騒音及び安全等への影響、(ウ)ため池の移設による動植物の生息・生育環境への影響を懸念している。

 なお、(ウ)についての詳細は次のとおり。

@ため池を生息・生育基盤とする動植物の生息・生育環境の保護のため、新設ため池の水質が悪化しないよう、新設ため池への流入経路等について配慮する必要がある。

A南側の舟渡池公園には水鳥や渡り鳥が多数生息しており、鳥類や水生動植物の生態系ネットワークに対する影響という観点から見ると、現段階では影響が少ないとは判断し難いことから、今後、周辺の類似環境も含めた生態系ネットワークの調査手法について十分に検討し、適切な対応を検討する必要がある。

◇市民意見の概要 ※意見書は本会からの1件だけ 
本会の意見は、堺市が要約した後掲の参考資料として各委員に配付。意見の要旨は@埋め立て予定地の動植物の生息・生育調査を行うこと、A新設池は自然ビオトープの形態を創造すること、B工事にあたっては生物の営巣等に配慮することと堺市が説明しました。

注)同条例において市民意見は審査会の妥当性などの審査対象ではないが、市長意見(配慮計画審査書)とともに市民意見を市長から事業者に送付することになる 

◇委員からの質問・意見等(審査会議事録から要約)

@市長意見について

従来生息していた生物が新設池でも生息できるようになる計画なのか。(委員)→事業者の計画は動植物の生息環境を移植することは考えていない。この点を指摘している。(堺市)

他の委員から現状の動植物に対して配慮すべきとの意見があるが今の段階では生息調査をしておらず、どういう対策ができるか不明なので次の段階以降で調査し対策するよう指摘している。(会長の補足意見)→ 新設池は事業計画地内にあるが、完成後の池の管理は事業者ではなく地元の水利組合のため、最低限配慮できる範囲の中で新設池の環境に対してより良い計画にされるようギリギリの意見を出している。(堺市)

ため池が他にも周辺にあり、それらを動植物が行き来することで生態系のネットワークをつくるが、それへの影響も調査し、調査が難しいのでその調査方法も検討することを意見に含まれている。(委員)

A本会の意見について

かなり具体的なことを意見として出されている。審査会として市民意見をどのように取り扱えばよいのか。(委員) → 審査会では堺市の検討結果(意見)案に対する答申で市民意見の妥当性等の議論は不要ですが、意見があればありがたい。(堺市)

市民意見のDに「ツバメが塒化しているシーズン中は、開発工事を行わないなどの配慮をすること。」とあるが、工事計画で対応するということか。(委員)→ 現地調査し、そのようなツバメのねぐらの形成を確認できれば、いきなりそのような場所を破壊することは避けなければならないと思うので、事業者の一定の配慮を求めていくことになると思う。ただし、ねぐらの場所の消失しないよう開発中止を環境影響評価の中で求めることは難しい。(堺市)

市民意見ではツバメに注目されているが、もっと配慮すべきものがあるかもしれないし、配慮しようにも配慮できないものがあるかもしれないので次の段階で調べて、その対策を拝見して審査会で意見を述べることになると思う。(会長)→ 次の段階(実施計画)で、どのような調査を行うのかにより対策も変わると思うので、まず調査を行う段階でチェックすべきと思う。季節によってどう違うのかという観点も事業者にお願いした方がよいと思う。(委員)

今後の動きは

堺市長のほとんどの意見は大規模商業施設(駐車場約3200台予定)の開業に伴う来店者等による周辺交通の渋滞などの交通問題ですが、本会から言及した新池の埋め立て問題や新設池での動植物の生息・生育環境の創出について市長意見に一部反映され、堺市としても事業者に配慮を求めていくことが明らかになりました。

又、審査会での話し合の中で、新池だけでなく周辺の生態系調査を行い、適切な対応か検討する旨の意見が出されるなど、事業者がこれからの手続きの中でどのような対応をするのか、本会の意見がどのように扱われるかなど引き続き注視しながら、今後の状況を踏まえて取り組んでいきたいと思います。

【今後の流れと本会の対応】

今後、同条例に基づき「実施計画書」→「準備書」→「評価書」等の手続きが予定されています。

〇実施計画書

本事業は同条例で駐車場2000台以上設置の第2種事業になるため、「実施計画書」が提出された場合、堺市HP等で公表される。

  (注)同条例上、市民からは実施計画書に対して意見はできないが、市長は実施計画書の審査ができ、必要な場合、本会の意見を市長審査に反映させるよう求めていく。

〇準備書

調査・予測・評価・環境保全対策の検討結果を取りまとめ環境保全の考え方を示されます。本会の意見を踏まえた対策が講じられるか見極めながら、同条例に基づき、準備書に対する意見書の提出を検討していきます。

             

堺市環境影響評価制度の概要