2019年8月23日

南部丘陵の通称「鉢ヶ峯の森」の保全を求める要望書

堺市
 永藤 英機 様

    鉢ヶ峯の自然を守る会 

       代表 米道 綱夫


堺 市農業公園「ハーベストの丘」の南側に位置し石津川の源流部にあたる「鉢ヶ峯の森」は、南部丘陵を代表するシリブカガシやコナラが残存する深い自然林を有 するエリアです。樹林内には小河川が蛇行し、切り立った崖地には希少なシダ類が繁茂。川にはサワガニやヌマムツが棲息し、オオタカの営巣が見られたことや 植物遺体が露出したこともあり、「堺の自然遺産」にも値する貴重で希少な樹林地でもあります。また広く自然環境の観点から見れば、大阪から河内長野を繋ぐ 野鳥たちの回廊としても重要な拠点となっており、他に代えがたいエリアであるとも言えるでしょう。

 堺市の上位計画をみると、南部丘陵は「堺市マスタープラン」(H23 年3月)において環境共生の重点推進エリアとし緑の拠点「クールダム」を形成すると位置づけ、また「堺市生物多様性地域戦略」(H25年3月)では生物多 様性のホットスポットとし、さらに「堺市緑の基本計画」(H25年3月改定)では豊かな緑を次世代に継承するエリアとし、まさに南部丘陵の中核をなす最重 要のエリアです。

平成23年1月に堺市緑の政策審議会は「南部丘陵の中でも豊富な緑地や希少な動植物が残るこの約160haの区域を緑地保全優先地区とし、緑地保全制度として開発に市長の許可が必要な特別緑地保全地区の活用が最も有効。」と答申しました。

相前後して平成21年頃にその保全優先地区である上記のエリアを残土で埋立て学校法人藍野学院の野外活動施設を建設する計画が明らかになりました。

このような動きも背景に、堺市は平成23年2月開催の堺市都市計画審議会にこの14haを「特別緑地保全地区に指定する素案」を報告しました。その後、本素案の説明会や公聴会が開催されましたが、建設計画が頓挫したこともあり特別緑地保全地区指定の都市計画手続きは事実上保留扱いとなっています。

これらの経緯をへて、堺市は最近の情勢(堺市がSDGs未来都市へ選定、東西道路の供用開始、地元からの緑地保全要望)に鑑み、今年1月開催の堺市都市計画審議会に「南部丘陵における緑地保全」について報告、さらに同年4月の同審議会で8年前と同じ案の「特別緑地保全地区の決定(素案)」を報告し、同案の公聴会の開催等を経て都市計画決定の決定・告示を行うことを堺市民に示しました。

ところが7月開催の堺市都市計画審議会での別の報告事項の説明会・公聴会の開催が先行され、特別緑地保全地区の公聴会等が現在に至っても開催されず、この件がなおざりにされていると言われざるを得ません。

一方、前述の埋立て計画地が新たな地権者になり、当該地で再び土砂の埋立て開発計画が進められていることが明らかになりました。今後、大阪府土砂埋立て等の規制条例による事前協議申請が始まることを仄聞しています。

一、特別緑地保全地区指定の前に埋立て開発が許可され埋立てが進めば、堺市マスタープランや堺市生物多様性地域戦略等は画餅に過ぎないと言わざるを得ません。

一旦自然環境が破壊されればもう復元することは不可能であり、上記の生き物への影響ほか周辺の生態系への負荷も多大であり、損失の重大さは明らかであります。

また、近年の異常気象によるゲリラ豪雨の多発や大型台風の襲来に伴い土砂災害が南部丘陵のあちこちで発生しているなかで、この樹林地が消失すれば保水力の低下により土砂崩れや洪水のリスクがさらに高まり、直下のハーベストの丘や下流の住宅地への影響が懸念されます。さらに埋立て計画地の明正川下流の水質悪化等による営農環境(上神谷米に代表される地域ブランドに対する風評等)の悪化、大型ダンプカーの往来による環境悪化と交通事故の危惧など、地域住民の生活に多大な被害を及ぼすことは明らかであります。

 
以上のことから下記の点を要望いたします。

なお、回答は文書にて2019年8月30日までにお願いいたします。

 
要望事項】

1.現在都市計画決定の手続中の特別緑地保全地区への指定に向けて直ちに公聴会を開催してください。

2.鉢ヶ峯の森の土砂埋立て開発が許可されるまでに速やかに特別緑地保全地区の指定を行ってください。

3.堺市緑の政策審議会で答申された「特に緑地保全を優先すべき地区」とされた区域(約160ha)について、緑地保全のロードマップを作成し堺市民に示してください。