鉢ヶ峯の自然を守る会は、8月24日付で、堺市に対して業者から出ている別所のゴルフ場増設に関する事前申出書の公文書公開を申請しました。これに対し、設計図面等一部が非公開でしたので、10月15日に改めて公開の異議申し出を行いました。
申請内容は、別紙の通りです。
また、同日に、ゴルフ場増設反対の署名(第2次集約分)を堺市長宛提出しました。今回提出数は、12,117件で前回分5,803件を加えると全部で、17,920件になります。
異議申立書
堺市長 幡谷 豪男 様
異議申立人
鉢ヶ峯の自然を守る会
清
水 俊 雄
次の通り異議を申し立てます。
1.異議申立人
堺市庭代台1丁23−5−206
鉢ヶ峯の自然を守る会
清 水 俊 雄(生年月日)
2.異議申し立てにかかる処分
平成10年9月22日付け第351号および企画第442号による公文書部分公開
決定処分
3.異議申し立てにかかる処分があったことを知った年月日
平成10年10月1日
4.異議申し立ての趣旨
「2」に記載した処分のうち非公開とした部分(変更前、変更後土地利用計画平
面図、土地利用計画平面図、造成断面図、切盛計画図(案))を取り消し、公開するこ
との決定を求める
5.異議申し立ての理由
[1]はじめに
今回、堺市に対して事前申出書が提出されている天野山CC拡張計画の開発予定地は
、堺市の「南部丘陵地域基礎調査及びゾーニング報告書」(堺市南部丘陵検討委員会
平成6年2月)にも書かれているように「丘陵地を特徴づける良好で典型的な森林景観
」が見られるところです。そこでは、府下では貴重な様々な生き物の生息が確認されて
います。
例えば両生類では、環境庁編「日本の絶滅のおそれのある野生生物」(通称日本版レ
ッドデーターブック)で「保護に留意すべき地域個体群」としてあげられているカスミ
サンショウウオなど。昆虫類では、大阪府が「当該地域において絶滅の危機に瀕してい
る種」として指定しているナニワトンボをはじめ、この地域が生息分布の北限にあたる
イワワキオサムシなど。また、計画地域の下流には、この谷の水環境のもとでゲンジボ
タルなども生息しています。野鳥では、深山性で食物連鎖の上位に位置するノスリやハ
イタカなどのタカ類をはじめ、渓流沿いを好むオオルリやカワセミなども確認されてい
ます。また植物では、アカシデの樹林や林床に育つキンランやミヤマウズラをはじめ、
池沼など湿地に生えるヤマトミクリやジュンサイ群落などがあげられます。
まさに現状そのものがビオトープである所にゴルフ場が造成されようとしています。
堺市南部丘陵検討委員会のゾーニング区分によれば、この地域は大部分が「B−1ゾ
ーン」に該当し、「樹林の景観性と生態系のバランスの維持」(保全)に努め「立地と
自然特性に十分配慮しつつ、利活用をはかること」(活用)と提言されています。
ゴルフ場のような大規模開発は、活用はあっても保全とはほど遠いものです。ゾーニ
ング区分の考え方とは相容れないことはもちろん、このたびの開発によって先に述べた
ような貴重な動植物がこの地域から絶滅することが考えられます。
堺市に提出された事前申出書添付の「天野山パブリック計画地動物等調査報告書」(
平成元年3月)の「W
影響の予測」でも、「当開発によりイワワキオサムシの生息環
境の大部分が失われる」こと、またカスミサンショウウオについては、「その保全のた
めには、残された湿地の水質水象にいちぢるしい変化が生じることのないよう配慮する
とともに、湿地に続く谷の両岸の森林の保全が計られなくてはならない」ことに言及さ
れています。
特に、飛ぶことができない歩行性のイワワキオサムシなどは、この開発により南の槙
尾山方面へと続く「緑の回廊」がたたれることにより、一時的に周辺に生き残ったとし
ても生息地が孤立しやがてこの地域では絶滅するものと考えられます。
私たち市民は、堺市環境基本条例の前文にも書かれているように、「安全で健康かつ
快適な生活を営むことができる良好な環境を享受する権利を有しているとともに、健全
で恵み豊かな環境を保全し、将来に引き継いでいく責務を担っている」と同時に、「環
境が大気、水、土壌及び様々な生物の微妙な均衡と循環のもとに成り立っていることを
深く認識し、環境を基調とした価値観に基づき行動する環境文化を築いていかなければ
ならない」と決意しました。事業者においても、その事業活動を行うに当たっては市民
と同様、その責務を果たすべきです。
この条例に照らしても、今回のゴルフ場開発計画は適法性を欠いています。
[2]以上のことをふまえ、次の理由により4.の通り公開を求めます。
堺市公文書公開条例第6条第1号に該当しない。
前述[1]の通り
ア.当開発は、堺市に生息する貴重な動植物の生存を危うくする。
イ.市民全体の共有財産とも言える自然環境を、ゴルフ場造成のために破壊する
ことは、多くの市民から良好な環境を享受する権利を奪い、将来の世代に対す
る責任放棄である。
よって、公開することが公益上必要であり、公開することが事業者の正当な利益
を害することにはならない。
[3]非公開部分のうち、今回特に非公開の取り消しを求める部分の理由
ア 変更前、変更後土地利用計画平面図
イ.土地利用計画平面図
ウ.造成断面図
エ.切盛計画図(案)
これらの図面によって当初の計画がどのように変更され、また計画地内のどの部分の
土が削られ、谷のどの部分が埋められるのかが分かり、それがどの程度自然環境と生態
系に影響を及ぼすのかを検討するため。
6.異議申し立ての年月日
平成10年10月15日
7.教示の有・無
この決定に不服のある場合は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第
6条の規定により、この決定のあったことを知った日の翌日から起算して60日以内に
堺市長に対して異議申し立てをすることができる旨の教示があった。
以 上