異議申し立てに対する堺市の弁明書

 鉢ヶ峯の自然を守る会は、別所ゴルフ場の計画に関し、公文書公開条例に基づき、計画図など
の公開を求めましたが、計画図等の最も重要な書類が非公開とされました。
 この事に対し、条例の手続きに基づいて、「異議申し立て」を行いました。
 これに対し、堺市側から、非公開としたことについての「弁明書」が、当会に送付されてきました。以下は、その「弁明書」の記述です。

            弁明書
                        堺開指第483号
                        平成10年11月10日
堺市公文書公開審査会
会長  辻 一郎  殿
                        堺市長 幡谷豪男
異議申立人鉢ヶ峰の自然を守る会 清水俊雄(以下「異議申立人」という。)が平成10年10月15日付けで提起した堺市公文書公開条例(以下「条例」という。)第10条第1項の規定による部分公開決定処分に係る異議申立てについて、次のとおり弁明します。

1 弁明の趣旨
 「本市の決定は妥当である。」との答申を求める。

2 本件の経過
(1)異議申立人は、平成10年8月24日、本市に対し、条例第9条の規定に基づき堺市別所1549−44他44筆における「大和開発観光(株)による天野山CCの拡張計画に係る事前相談申出書(計画書)」及び「同審議会関係書類一式(大規模開発協議会)」の公開を請求した。
(2)本市は、平成10年9月7日、対象公文書に記載された情報量が膨大であり、その 内容を確認し、公開・非公開の判断を行うために日数を要するという理由により、公文書公開決定期間延長を行った。
(3)本市は、平成10年9月22日に本件請求に係る対象公文書を大規模開発事前申出書、大規模開発変更申出書、堺市大規模開発協議会幹事会案件及び資料、堺市大規模開発協議会幹事会議事録、回答書、堺市大規模開発協議会案件及び資料、堺市大規模開発協議会議事録と特定し、大和開発観光(株)による天野山CCの拡張計画に係る事前相談申出書(計画書)(以下「本件公文書」という。)のうち、変更前、変更後土地利用計画平面図、土地利用計画平面図、造成断面図、切盛計画図(案)、水循環ルート図(案)、防災施設図(案)、経路図(案)、地下防災施設図(案)、調整地流域図(案)(以下これらを「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件処分」という。)を行い、公開しない理由を次のとおり付して異議申立人に
通知した。
 (イ)条例第6条第1項に該当する。
 本件非公開部分に記載された情報は、事業者の事業活動上の秘密又はノウハウに関する情報であり、公開することにより当該事業者の正当な利益を害すると認められる。
(4)異議申立人は、通知された公開の期日、及び時間の平成10年10月1日午後4時30分に来庁の上、公文書の公開を受けた。
(5)異議申立人は、平成10年10月15日本件処分を不服として、行政不服審査法第6条の規定により本件処分のうち、変更前、変更後土地利用計画平面図、土地利用計画平面図、造成断面図、切盛計画図(案)の非公開とした処分を取り消し、公開するとの決定を求めて異議申立を行った。

3 弁明の理由
(1)本件ゴルフ場開発について
 本市は5ヘクタール以上のゴルフ場の開発については、立地条件については大規模開発協
議会において、具体の内容(技術基準等)については大規模開発調整委員会でそれぞれ都市計画法第34条第10号イの規定に基づく開発行為に準じて開発計画の審議を行っている。大規模開発協議会は、当該開発が環境保全に配慮しつつ、地域の均衡ある発展に資するという観点から審査し、立地を判断することを目的としている。その判断基準は、「第3次堺市総合計画」と「南部丘陵検討委員会のゾーニング」の趣旨、大阪府土地利用等調整協議会の「ゴルフ場開発に関する取扱方針」(以下「取扱方針」という。)及び「都市計画法第34条第10号イの規定に基づく開発行為に関する取扱基準」との整合性等、総合的に判断している。具体的には、緑地環境の保全整備、地域環境との調和、地域振興への寄与等について十分な検討を行っている。
(2)変更前、変更後土地利用計画平面図及び土地利用計画平面図について
 本件変更前、変更後土地利用計画平面図及び土地利用計画平面図は、本件開発計画の計画区域内におけるコースの形状、配置、樹林配置等の計画内容が具体的に図示され、しかもその内容は、取扱方針に定める面積の自然地、樹林地及び周辺部の樹林帯の確保、各コースの連絡等の事項について相互に関連させながら設計上の工夫がなされているものである。このようなものについては、いわゆる市販書に掲げられているおおまかなマニュアルだけでは足りるものでなく、特にコースの設計は、ゴルフ場の評価の最大の要素でありゴルフ場事業の命運をにぎる重要な要素重来である。したがって、本件変更前、変更後土地利用計画平面図及び土地利用計画平面図は、設計者の創意工夫により、本件開発計画区域に係る設計条件等を踏まえ、具体的な設計として創作した知的生産物として保護されるべきものである。
(3)造成断面図及び切盛計画図(案)について
 本件造成断面図及び切盛計画図(案)は、前述の変更前、変更後土地利用計画平面図及び土地利用計画平面図と同じく、本件開発計画の計画区域内におけるコースの形状及び配置を具体的に図示しているほか、本件開発計画の計画区域における土地の造成前後の状況を図示したものである。また、同図面は特定された土地の形状、起伏並びに斜面部分の切土及び盛土等の特性を考慮して、計画区域における具体的な設計として計画したものであり、設計者の創意工夫により、本件開発計画区域に係る設計条件等を踏まえ、具体的な計画として創作した知的生産物として保護されるべきものである。
(4)条例第6条第1号の該当性について
 法人等又は事業を営む個人の事業活動の自由を原則として保障し、競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる情報は、非公開とすることができるというのが条例第6条第1号の趣旨である。本件開発計画の変更前、変更後土地利用計画平面図、土地利用計画平面図、造成断面図、切盛計画図(案)は、本件開発計画の計画区域内におけるコース形状、配置、樹林配置等の計画内容が具体的に図示されている。一般に、これらゴルフ場開発に係る計画内容については、基本的にはその土地の自然の形状に合わせて設計されるものであるが、斜面部分の切土及び盛土等、土地を造成し平坦地を造る土木設計技術が駆使される設計の部分も少なくない。また、取扱方針に定める面積の自然地、樹林地及び周辺部の樹林帯の確保、コースの連絡等の事項について相互に関連させながら設計上の工夫がなされているものである。こうようなものについては、いわゆる市販書に掲げられているおおまかなマニュアルだけでは足りるものでなく、そこには設計者の創意工夫により、本件開発計画区域に係る設計条件等を踏まえ、具体的な計画として創作した知的創作物であることが認められる。以上のとおり、本件各図面に記載されている情報は、事業者の技術的又は知的創作物であることは明かであり、通常、経営上の秘密に属する情報であると認められる。法人の事業活動は、それが正当なものである限り社会的に十分保護されなければならず、そのため技術上、経営上の情報などは事業を営む個人及び法人等に関する情報であって公開することにより、事業を営む個人及び法人等の正当な利益を害すると認められるものについては保護されるべきであり、条例第6条第1号に該当すると判断する。
(5)条例第6条第1号ただし書に該当しないことについて
 異議申立人は、当開発により貴重な動植物の生存を危うくし、市民全体の共有財産とも言える自然環境を破壊し良好な環境を亨受する権利を奪うものであると言及しているが、大規模開発協議会は、開発者に対して貴重な自然環境を保全すべき場所等を計画地から除外し、又計画区域内外の貴重な動植物に対して複数の学識経験者の指導を受け配慮方策の検討を行い、或いは緑地比率について協定の締結(大阪府自然環境保全条例の協定に基づき約68%の緑地の確保を図る)、切土盛土量、がけ崩れ、土砂の流出、地滑り及び出水等の災害防止措置、農薬散布等による周辺環境への影響防止措置等(農薬使用量の大幅削減:前年比の約63%削減)を指導し、自然環境の保全及び周辺地域への負荷の軽減に努めている。したがって、本計画が、直ちに市民の生命、身体、又は健康を揖ない、自然環境を破壊すとは言えないものである。
 また、ゴルフ場開発は、都市計画法上その立地は否定されるものではなく、違法もしくは不当な事業活動に当たらず、条例第6条第1号の「ただし書」に該当しない。
(6)以上のとおり、本件処分には違法、不当な点はなく、本市の決定は正当なもので
あることを主張する。