堺市の弁明書に対する当会の反論書

 堺市は、当会が公開を求めたゴルフ場開発に関する書類の一部非公開を妥当とする「弁明書」を提出しましたが、これに対し、当会では改めて文書の全面公開を求める「反論書」を提出しました。

                          1998年11月25日
堺市公文書公開審査会
   会長 辻 一郎 様
                            鉢ヶ峯の自然を守る会
                               清水 俊雄

        反論書

 平成10年10月15日に、私は、堺市文書公開条例に基づき部分公開された「大和
開発観光鰍ノよる天野山CCの拡張計画に係る事前相談申出書(計画書)」及び「同審
議会関係書類一式(大規模開発協議会)」の非公開部分のうち、変更前、変更後土地利
用計画平面図、土地利用計画平面図、造成断面図、切盛計画図(案)について公開する
決定を求め異議申し立てを致しました。
 当件につき、堺市長から決定が妥当である旨の答申を求める弁明書が提出されていま
す。ここに改めて、公開を求める趣旨及びその理由を申し述べます。

1.反論の趣旨
 「堺市長は、求めに応じ非公開部分を公開すること。」との答申を求めます。

2.反論の理由
 (1)情報公開が必要なことについて
 堺市南部丘陵検討委員会の「ゾーニング報告書」にも書かれているように、計画地は
、丘陵地を特徴づける良好で典型的な森林景観が見られるところであり、またそこは府
下でも貴重な動植物の生息が確認されている場所でもあります。
 例えば、「レッドデータブック」に記載のカスミサンショウウオをはじめ、昆虫の中
では食物連鎖の上位に位置し、大阪府の「特定昆虫」にも指定されているイワワキオサ
ムシなどです。
 さらに、計画地は、和泉市の槙尾山、河内長野市の天野山と堺市の鉢ヶ峯の樹林地を
結ぶ重要な場所で、このたびの開発は、オオタカなどの鳥類や動植物の生息地をつなぐ
緑の回廊を破壊しかねず、市民や研究者にとっては大きな関心事です。
 開発業者の「天野山パブリック計画地 動物等調査報告書」(平成元年3月)によれ
ば、昆虫類だけでも329種が確認されていて、この地域の生態系が比較的安定した良
好な状況にあることがわかります。このような良好な自然環境は、計画地である別所以
外には鉢ヶ峯しか残されておらず、しかも別所と鉢ヶ峯は隣接しながらも異なった自然
条件を持ったいわばかけがえのない場所です。それゆえ別所の自然は、市民の共有財産
とも言うべき性格を持っています。
 私たち市民は、自然観察やハイキングを通して森の生き物と触れ合い、生命の循環や
生き物にとって環境の大切さなどを学びます。森という良好な自然環境を享受すること
は、私たち市民の権利であり、また、私たちは、この森を将来に引き継いでいく義務を
も負っています。
 ゴルフ場のような大規模開発により、この森の自然がどの程度失われ、何が残るのか
を知ることは、市民にとって大切なことです。自然を保全することは、企業と行政だけ
で考えられることではなく、広く市民の参加の下に行われべきだと考えます。

(2)以下の文書を公開することは、条例第6条第1号に該当しない。

(イ) 変更前、変更後土地利用計画平面図、土地利用計画平面図について
 計画地内のどの自然地を残しどこに新たに樹林地を作るのか、またどこの樹林を伐採
してゴルフコースにするのかを、土地利用計画平面図上において明らかにすることによ
り環境への影響が評価できます。
 コースの設計が例えゴルフ場評価の最大の要素であり、そのための創意工夫はあった
としても、土地利用の改変が市民の共有財産とも言える豊かで、貴重な自然環境の存在
自体を危うくすることを考えたとき、どこをどのように保全すべきかを市民が検討する
ために必要な資料を公開することは、公共性のあることであり、それを超えてまで保護
すべき企業活動上の利益をこれらの図面が持っているとは考えられません。

(ロ)造成断面図及び切盛計画図(案)について
 土地の造成は、特に生き物に与える影響が大きく、重大です。植物はもちろん、昆虫
など多くの生き物は土に依存して生活しています。どこの土を削り、どこの谷に埋める
のかその方法次第では、自然環境に大きな影響を与えます。表土をはがし別の土を持っ
て来たりすれば、そこに生息する多くの生き物が死滅します。人間の無知が、むだに生
き物の命を奪うことがあってはなりません。
 これらの図面は、設計者の創意工夫があったとしても、開発による生物の多様性をは
じめとした自然環境への影響を考える上で、また堺市がそれに対してどのように開発業
者を指導したのかを市民が知る上で必要不可欠であり、公開することのメリットを優先
させるべきと考えます。

  以 上