堺市がゴルフ場立地を承認した理由の詳細

堺市が立地承認した理由は、28号の堺市のプレス発表資料にもありましたが、今回その全文を掲載します。

(仮称)天野山カントリークラブ9ホール増設計画に関する意見書(案)

平成10年 月  日

                                         堺市大規模開発協議会
 本市においては、都市計画法の趣旨に基づく適切な開発を確保する観点から、市街化調整区域における開発は抑制することを基本的態度としているが、環境の保全に配慮しつつ、地域の均衡ある発展に資することを条件に立地の適否判断を行うこととしている。
 この度、大和開発観光株式会社から「(仮杯)天野山カントリークラブ 9ホール増設計画」(以下「開発計画」という。)に関する事前申出書が本市に提出され、本協議会は開発計画概要書に基づき、「開発計画」の内容が、大阪府の「ゴルフ場開発に関する取扱方針」(以下「方針」という。)等で定めている審査要件等に適合しているか否かについて総合的な検討を行った。
 その結果、本協議会は以下の意見を付して、堺市大規模開発調整委員会に送付することが妥当であるとの結論を得た。

1.総合意見
 本市は、平成3年2月に策定した「第3次堺市総合計画」において「創造し伝統をはぐくむ都市・堺」を基本理念のもと、6つの都市像と施策の大綱を掲げている。その1つとして、「歴史が生きる文化創造都市」の部門別計画があり、具体に「多彩なスポーツ・レクリエーション活動の振興」を掲げている。
 その動向と課題は、「労働時間の短縮などによる自由時間の増大とともに、スポーツや健康、自然とのふれあいに対する関心が増大し、生涯にわたって健康で明るく充実した人生をおくるため、スポーツやレクリエーション活動に対する市民要求が高まっており、その振興をはかることが必要である。」としている。
 また、区域別計画では、地域特性を生かした計画的なまちづくりを進める為、市域を6つに区分し、区域の将来像と発展方向を示している。
 当該計画地は「人と人とがふれあう自然文化交流のまち」を将来像とする南区域に該当し、その発展方向を「個性と魅力のある発展を目指すため、南部丘陵地の貴重な自然的環境の保全と活用をはかり、市民が自然や農業にふれ、親しむことができるレクリエーションの場を創出することによって、豊かな自然の中で人と人がふれあう自然文化交流のまちづくりをすすめる。」としている。
 また、当該計画地は、堺市南部丘陵検討委員会の「南部丘陵地域基礎調査及びゾーニングや報告書」(以下「委員会報告書」という。)で、一部Cゾーンを含むものの、大部分がBゾーンに該当し、同委員会はBゾーンを「自然環境の保全に配慮しながら、市民が利用しうる節度ある活用を行い、地域振興をはかるゾーン」と位置づけている。
 「開発計画」は、環境への配慮を踏まえつつ、市民が親しめるスポーツ・レクリエーションの場の整備と共に、地域振興をはかるものであり、その計画内容や開発方針が、本市の総合計画に示された施策方針、並びに地域整備の方向に整合し、かつ「委員会報告書」の趣旨にも配慮したものであると考える。

2.検討項目
@開発規模
 「開発計画」はホール形態を有した約48haのゴルフ場であり、「方針」の適用対象規模である。
A緑地環境の保全整備と地域環境との調和
 「開発計画」は、大阪府自然環境保全条例に基づき「自然環境の保全と回復に関する協定」を締結し、基準以上の緑地の確保をはかる計画である。
 また、カスミサンショウウオやヤマトミクリなどの貴重な動植物は、可能な限り生息地や繁殖地の保全に努めるとし、やむを得ない場合は、生息に配慮した建設資材を用いることや、移植等による保護対策を実施することで、開発による影響を低く押さえることとしている。また、ビオトープの整備による生態系の確保など、これらの保全策を着実に実施することで、本計画による周辺自然環境への負荷は軽減されると考える。
B地域振興への寄与と公益性
 「開発計画」の周辺地は、古くから温州ミカンの産地として盛んに栽培されていたが、オレンジの輸入自由化やミカンの消費減退等にともない長期にわたり価格が低迷し、ミカン経営は厳しい状況にある。
 「開発計画」により、新たな雇用を創出し、特定の日にコースを一般にパブリックとして開放すると共に、コース外縁部でハイキングルートや、ゴルフ場内に一部公園的な利用ができる施設の整備を行い、市民への開放を計画するなど、地域の振興と公益性の観点にも配慮がなされていると認められる。
C開発規制区域等
 開発計画区域内には、「方針」の3の各号及び4の(1)の各号に規定されている除外すべき地域、区域等立地の妨げとなるものは存在していないと認められる。
 また、4の(4)の@からDの各号に規定されている措置の内、必要なものは講ぜられていると認められる。
D切土量・盛土量
 「開発計画」は、切土量、盛土量共に規定内の最小土工事量を基本に計画しており、「方針」の趣旨に整合している。
E公共施設整備への影響
 「開発計画」の土地利用に際して、上水は全量井戸水を使用する。
 また、下水は合併式汚水処理施設で処理し、処理水は区域内の芝に散水することで直接河川放流しない。雨水については、沈砂池、調整池で濁りを防ぐと共に、河川への放流水量の適切な調整を行うこととしている。
 また、計画地への接続道路として国道170号が予定されているが、本計画で生じる新規交通量は、大きな負荷要因にはならないとしている。
 これらのことから、既存の施設で対応が可能であり公共施設整備上支障はないと考える。
F農薬の使用量
 当ゴルフコースは、年間農薬使用量を平成元年度に比べ、平成9年度には半減している。また、増設分の9ホールに対しても、既存の9ホール当たりの農薬使用量に比べさらに削減することを目標とするなど、周辺環境への影響を軽減するための措置を行っていると認められる。