堺市環境基本計画(素案)に対する政策提言

 堺市は、環境基本計画の策定にあたり、市民にひろく意見を求めました。これに応え、当会でも政策提言を行いました。行政の意見募集は、非常に検討期間が短い場合が多く、今回も、実質的に2週間ほどでまとめなくてはなりませんでした。以下、私たちの政策提言の全文です。

堺市環境基本計画(素案)に対する意見と提案

【はじめに】
 かつて、大阪府下のどこにでも見られながら急速に失われてしまった里山の姿を残し、四季折々の変化に富み、豊かな自然環境を有する南部丘陵は、都市近郊で市民が身近なみどりに親しみ、自然に触れ合うことができる、さらに青少年の環境教育の場として、かけがえのない堺市民の共有財産と言えます。
 第三次堺市総合計画において「本市で唯一、まとまった樹林地である南部丘陵は自然と人間が共有する場として保全に努める」とされています。その一方で「近年、残土処分やゴルフ場建設、農地の転用などによって貴重な自然的環境が失われつつある」という問題点を明らかにされています。
 現状をみると、残念ながら同総合計画の実施期間中においても残土処分等による自然破壊は止まらず、ゴルフ場の拡張や緑のミューージアム・東西道路の建設などで、なし崩し的に失われようとしています。今こそ、南部丘陵の豊かな自然環境を次世代に引き継ぐためにもその保全と再生は急務となっています。
 このような状況のなかで、堺市は環境基本計画(素案)を市民に提案されました。私たち堺市民は南部丘陵の自然環境の保全に向けて、この間の反省と新たなステップに踏みだされた堺市への期待と同時に、市民と共に本当に実効ある保全施策が講じられるのか注目しているところです。
 以上のことから、主に「自然環境−自然とのふれあいを大切にするまち」に関して、より良い環境基本計画とするため次のとおり意見と提案をします。あわせて堺市として市民の声を真摯に検討され、基本計画に反映されることを要請します。

【意見及び提案】
◇P5@の「みどりとのふれあいが確保されている」について
(1)[緑地]長期的に市域面積の概ね30%を緑地として確保するとされていますが、緑地の範囲は自然緑地をはじめ公園緑地、回復縁地など多岐に亘ることは言うまでもありません。
@緑地構成の種類・内容を明記するとともに種別毎の緑地確保の数値目標を設定すること。
A緑地構成の中で多くを占める自然緑地の数値目標は、現存する自然緑地の保持を前提に設定すること。
B又、「長期的に」となっていますが具体の目標期間を明らかにすること。

(2)「緑地の保全と活用−南部丘陵等の樹林地の保全と活用」とされていますが、とりわけ、南部丘陵はコナラ林などの樹林地とともに溜池・小川・棚田などが有機的なつながりで成り立ち、それによって多様な生きものが育まれ、豊かな生態系が保持されている里山と言えます。
@南部丘陵の樹林地に限定せず、南部丘陵の里山(樹林地、溜池、小川、棚田等で構成)の保全に変更すること。
Aこの間、活用の名のもとでゴルフ場をはじめ公共事業などの開発によって南部丘陵の豊かな自然環境の破壊とそこに育む多様な生きもの生息環境が消失し、現在もその危機にあることを改めて認識され、人が手を加える場合、開発を伴う活用ではなく基本方針として保全を大前提に自然環境に負荷を与えない「賢い利用」や「再生」に表現を変更すること。
B「緑地の確保」の環境目標に基づき、主要な基本施策として「緑地の保全」を明記されていますが、保全の方策なくして保全は達成できないことは明らかであり、主要な基本施策の中に「緑地保全制度の確立」を追記すること。

◇P5の「生き物とのふれあいが確保されている」について
(1)生物目録に向けて、この間、堺市が市民・研究者と協働して「身近な生き物調査」を実施されてきたことは高く評価します。又、堺市版レッドリストを作成されることは大いに賛同するところです。そこで、作成にあたっては、
@レッドリスト指定基準について環境庁基準よりも広範囲の指定基準にすること。そのため「堺市独自基準による堺市版レッドリストの作成」に表現訂正すること。
A堺市版レッドリストの作成が目的でないことは自明のことです。レッドリストをどのように用いるのか、基本施策において欠落しています。下段の「野生生物の生息域の保全と創造」の施策を実行するうえで、重要な指標として「堺市版レッドリストの使用」を追記すること。

(2)野生生物の生息域の保全と創造において、特に民有地における生息域の保全にあたっては地権者の理解・協力に止まらず、生息域の適正な維持の助成や固定資産税の減免など、地権者への保全に向けた援助等が重要な課題です。
@このことも踏まえた保全のための方策として保全制度の確立を明記すること。

◇その他
(1)堺市環境基本条例第10条で環境に「著しい影響の在る事業に対してあらかじめ環境影響評価の実施を義務付けしています。本環境基本計画の施策をより実効あるものにするため、公共事業はいうまでもなく市域における民間開発に対して、単に現在の大阪府環境影響評価要綱に依拠するのでほなく、適用規模の拡充、予測・評価方法の充実など市独自の環響評価制度の確立が求められます。以上のことから、
@本基本計画素案のU.2環境目標と目標達成のための施策のリード文章中、‥‥その達成に向けて、「市独自の環境影響評価制度の確立」を図るとともに諸施策を展開しますに訂正追記すること。

 本環境基本計画の推進は市・市民・事業者の参加、協働活動により達成されることは言うまでもありません。その手始めとして、本基本計画素案を市民に提示され、広く市民の意見等を募集し計画素案をよりよいものにされると理解します。
 従来の市民からの意見を聴取したという−方通行型のものにせず、市民の意見や提案に対して採用できること、取り入れることが難しいことはその理由など、市民に明らかにすることが大切です。
 このことを踏まえ、以上のわたし達の意見、提案に対して成案化するまでに回答されることを申し添えます。

              1999年3月12日

  氏名 鉢ヶ峯の自然を守る会 代表者 清水 俊雄