緑のミュージアム造成及び東西道路整備工事に関する要望書

                                        1999年3月25日
堺市長 幡谷 豪男 様
                                        堺市庭代台1-23-5-206
                                        鉢ヶ峯の自然を守る会
                                        代表 清水 俊雄

「ゆとりとふれあいの場」構想関連
 仮称緑のミュージアム造成及び東西道路整備工事に関する要望書

 2000年7月に一部オープンが予定されている「緑のミュージアム」の造成工事が急ピッチで進められようとしています。これに伴う東西道路と駐車場の整備工事も、すでに着工されていますが、この造成について、事業の基本理念(南部丘陵地域の自然環境を生かして、都市住民が農業文化や自然にふれ、楽しむ場を提供する)からいって、いくつかの疑問点があります。また、当初発表された事業計画地を拡張して行われる駐車場建設についても、環境への負荷が大きすぎるなど、納得がいきません。  「緑のミュージアム」の名にふさわしく「緑」を生かす方策を採られ、設計変更および自然の保全に最大の配慮をされるよう、下記の4点を強く要望します。

                        記

1.白樫池西側(施設配置平面図、2ブロック)の樹林地を全面的に残すこと。
 @この地域は、当初事業計画案の概要には一部しか示されていませんでした。樹林地をつぶして駐車場にするのは断固やめて下さい。
 A市が作成した「南部丘陵地域基礎調査及びゾーニング報告書」の「自然環境条件に基づく評価区分」では、ここは「T−1」にランクづけられており、また「ゾーニング区分」でも「B−1ゾーン」にあたり、その活用にあたっては「立地と自然特性に十分配慮」することと規定されている。ここを駐車場にすることは、この考え方と明らかに矛盾しています。  また、当会が作成した「里山イラストマップ」でも、自然度が高くまとまった樹林地であるところから「保全ゾーン」として提言している場所です。
 B私たちの観察によれば、この樹林地はフクロウの餌場となつており、夏には猛禽類のサシバの営巣も確認されています。また、タヌキの溜め糞(共同トイレ)やウサギのフィールドサイン(糞)も見つかっており、野鳥のみならず小動物の生息地としても貴重です。

2.計画地内のため池およびカスミザクラの樹林地を保全し、「緑のミュージアム」に生かすため東西道路を迂回させること。
 @市が実施した「緑のミュージアム事業計画地域自然環境調査」では触れられていませんが、別紙「カスミザクラの樹林地の植生調査」(3/13堺自然観察会)と添付写真に見られるように、東西道路予定地の東端にはカスミザクラの群落があります。4月中旬の花の咲く頃には、文字通り樹林地全体が淡いピンクでかすむほど美しい景観が見られます。群落として貴重であるばかりでなく、これを保全することにより「緑のミュージアム」を訪れる人々にも多大の楽しみを与え、ミュージアムの評価を高めるものと思われます。ぜひここを再調査し、その保全を検討して下さい。   Aため池には、カメやトノサマガエルといった生き物が生息し、カワセミの飛翔も見られ、子供たちの興味を引きつけることができます。
 B一帯の樹林地を、私たちが提案したイラストマップ「こんな里山がいいなぁ・・」のように整備すれば農業体験とともに、野鳥観察など自然にふれあう体験の場が提供できます。一年を通して多面的に自然に親しめ、特に冬場の人寄せの対策にもなります。

3.駐車場は、1ブロックの北側だけとし、不足分は、府道堺かつらぎ線周辺の空き地を借りて、臨時の駐車場とすること。
 @2500〜3000台にも及ぶ大駐車場の設置は、堺市環境基本計画に言うところの「環境への負荷の少ない都市交通体系の形成」という市の施策と矛盾します。排ガス問題、ヒートアイランド問題等が起きることは言うまでもありません。
 A「緑のミュージアム」へのアクセス手段として、利用者が集中する土・日・祝日は、泉ヶ丘駅からシャトルバスを頻繁に出すなど、公共交通機関の利用を考えて下さい。  「会場には、車は乗り入れない」というのが先進的な発想です。
 Bミュージアム内は基本的には「歩く」のがふさわしく、ほかに周遊用の乗り物として電気自動車や貸し自転車(地場産業のPRにもなる)の利用も考えられます。

4.予定地とその周辺の動植物の保全・保護を生き物の側に立って検討するため、当会を含む市民参加のもと、早急に話し合いの場を持つこと。
 @市民グループでは、植物や野鳥観察、自然とふれあうための子供たちのイベントを行っていて、業者の調査や机上の企画より、より生きた現状把握ができています。ぜひ、市民と一体となって「緑のミュージアム」の環境整備を行って下さい。
 A道路建設にあたっては、U字溝に小動物が落ち込んでも脱出できるようなスロープをつけ、また舗装道路の下にトンネル(別紙参照)をつけるなど、小動物が交通事故に遭わずに緑地の間を自由に移動できるよう、設計面で細心の配慮をして下さい。
 B内河池西側の尾根道(通称、ツツジ尾根)には、工事用の車両を入れないで下さい。 ここは、「Aゾーン」との境界にあたり、春には林床にヤマツツジやモチツツジなどの花が咲き雑木林の素晴らしい景観が見られるところです。