公害審査会あて業者からの意見書

 別所地区のゴルフ場増設問題(天野山カントリークラブ)について、開発を計画している業者との公害調停を、当会から大阪府公害審査会に求めていましたが、この度、業者側から本件に関しての意見書が提出されました。以下はその全文です。

平成11年5月18日

意見書

大阪府公害審査会殿

大阪府河内長野市天野町906番2
大和開発観光株式会社      
代表取締役井山幸次郎

 「平成11年(調)第1号(堺市ゴルフ場開発問題)事件」について、次のとおり意見書を提出します。

1 当事者について
 申請書「2公害に係わる事業活動の行われる場所および被害の生じる場所(2)被害の生じる場所」に該当しない住所が記載されている者については、当事者資格はないと考えます。

2 事業活動の行われる場所について
 開発事業を行う場所に関しては、特に意見はありません。

3 被害の生じる場所について
 当社は、30年を超えて当地で事業を継続し、環境対策にも真剣に取り組んでいることから、当開発事業について、周辺自治会、水利組合の同意を得ています。(*別添資料−1参照)
・堺市美木多校区自治連合会
・上別所自治会
・下別所自治会
・上別所川井谷水利組合
・上別所大法水利組合

4 調停を求める事項について
(1)資料の開示について
 開発区域測量図、土地利用計画図および造成計画等は、現在、開発にかかる各種申請書として官公庁に提出している最中であり、事業内容が確定していないことから、開示できません。なお、これらは長年のゴルフ場運営の結果を集約した当社の企業秘密に属するものであると考えており、また設計者の著作の問題もあり、同意も得られなかったので、開示できません。

(2)環境俣全についての配慮
 当社としては、当開発事業については昭和62年からの懸案事業として進めているもので、環境調査についても、昭和62年から6回にわたって実施しています。(*別添資料−2参照)
 この調査で、計画地は環境庁第2回自然環境保全基礎調査報告(1979)による特定植物群落の成育地には該当しないことを確認し、また、レッドデータブック記載のヤマトミクリ、カスミサンショウウオ、その他各種行政機関が重要もしくは貴重な動植物に指定あるいは報告しているイワワキオサムシ、ヒツジグサ、ジュンサイなど、開発に伴う動植物への影響等について考察しています。
 土地利用計画等の計画においては、一連の調査結果を踏まえて貴重な動植物の生態環境の保全に配慮しています。
 このことは堺市大規模開発協議会、堺市大規模開発調整委員会の2回の審査により承認されています。(*別添資料−3参照)

(3)自然樹林地の保全について
 当開発計画では、開発区域のうち47.0%(国および府の林地開発基準では40%以上)を自然樹林地として保全する計画です。また、造成後、植林等によって将来森林となる区域が21.5%あり、計画地全体としては68.5%の森林が確保される計画です。
 アカシデ林については当方も詳細な調査を平成10年12月に行い(*別添資料−4参照)、開発後も相当数のアカシデが自然樹林地として残ることになります。
 なお、申請人が強く保全を主張するアカシデは、レッドデータブックをはじめ、自然環境に関する保護の基準とすべき何れの公的資料にも「重要もしくは貴重な種」として掲載されていません。したがって、申請人の木村進氏が書かれた調停申請書別添資料Oにある「堺市内で保護すべき最も貴重な樹林の一つであるといえる」との意見は、一般的に受け入れられているものではなく、当社としても理解しがたいものです。

(4)農薬散布について
 当社は、これまでも減農薬の努力をしてきました。その結果、既存の27ホールにおいて、年間農薬使用量は平成元年度1053kgであったものが平成9年度には499kgとなっています。平成10年度以降も同程度で推移しています。また、フェロモントラップ、木酢液の使用を実験的に行い、殺虫剤の削減に努力しています。(*別添資料−5参照)
 また、流出農薬の削減をテーマに積極的に以下のような実験的研究を実施しています。
@散布場所の土壌を農薬の流出しにくい吸着性の高いものとする。
A流出した農薬を含んだ水が池に流入する途中のクリーク部に木炭による濾過装置を設置する。
B調整池およびコース内の池に水処理装置を設置する。(西コース)
その結果、流末調整池での水質測定結果は良好なものとなっています。
 なお、水質の魚類等に対する影響を監視し、農薬流出を防止する意味あいから、過去10数年にわたって場内各池にコイ、フナ、金魚等を飼い、観察していますが問題はありませんでした。
 さらに新9ホールにおいては減農薬実験に積極的に取り組み、既存コース9ホール当たりの使用量167kg程度を20%カットした130kgを目標値とし、次の対策を実施する計画です。
@農薬の種類および毒性について
できる限り魚毒性の少ない薬剤を使用する。(各池にコイ、フナ、金魚等を放流し、観察を行います。)
A減農薬対策について
フェロモントラップ、木酢液の使用により、殺虫剤の減農薬化を促進する。
B水質対策について
・フェアウェイ全域の表層5cmは吸着性の高い改良砂層とする。(農薬を吸着し微生物分解をうながすために、炭の粉末を混ぜたもの)
・ゴルフ場内の水は、中央の谷の流域を除き修景池、調整池間を循環させ、水質浄化を図るとともに、散水に利用し、できるだけ外部に流出しないよう努める。
・フェアウェイの水を受けるクリーク(排水溝)、桝等を設置し、木炭パレットにより農薬を吸着させる。
・グリーンの雨水は、完全に水を受ける暗渠および排水桝(トラップ桝)を設置し、貴重種の生育が確認された中央の谷に流入するグリーンには、活性炭のフィルター層を設け、農薬除去を徹底する。
・その他の東西の谷に流入する各ホールの桝には木炭層(自家製)を設ける。

 また、農薬を散布する際は、天候に十分留意して、空中に拡散したり、農薬を含んだ表面水が直接外部に流出しないよう慎重に作業を行うこととします。
 さらに水質の汚染状況の監視は、3つの調整池において定期的に行います。農薬使用量と水質データの記録を保管するなど、農薬取締法を遵守し、農薬被害がないようにします。
 なお、堺市が必要と考えた場合には各種データを閲覧可能とする内容の環境監視についての計画書を作成し、現在担当課と協議中です。

(5)濁水防止対策について
 造成工事の実施および完成後において、洪水や土砂の流出・崩壊等の災害を防止するため、以下のような防災対策を講ずることとします。
@当初工事
 当初工事にあたっては、下流河川への影響を防止するため、洪水調整池および沈砂池を造成工事に先行して築造し、洪水の調整・土砂の沈澱を行い、災害の防止を図ります。谷筋部については、盛土の安定のため急斜面の段切工、有孔ヒューム管等の敷設、すべり止めのためのフトン篭の設置等を行うとともに、背面ポケットを仮沈砂池として土砂の流出を防止します。盛土については、造成部分外周での工事中崩土の防止のための編棚工を行います。
A工事中
 工事中の防災対策としては、表面水の処理のため、仮排水路から沈砂池に入れ、先行敷設した有孔ヒューム管等排水路に流します。浸透水については、有孔ヒューム管・竪管・礫暗渠による処理を行います。工事中の土砂流出の防止のため、完成後も利用する沈砂池の他にも仮沈砂池を適切に配置します。
 また、工事完成後の土砂流出防止のために、各谷筋末端に沈砂池を設置します。
法面には、小段排水溝・竪排水溝・法尻排水溝を設置して法面の洗掘を防止するほか、盛土法面の最上段に防護提を設けて排水が法面に集中しないようにするとともに植栽・種子吹付等を行います。なお、まき出し厚さ・転圧機種・転圧回数等を定め、厳密な施工管理を行うほか、盛土部の沈下・滑落の防止のため谷筋地下水の排水には万全を期し、盛土の安定を確保します。
 施工全般にわたって関係法令の防災に関する技術基準を遵守し、災害防止に万全を期すこととします。
B工事完成後
 工事完成後は、沈砂池・調整池の定期点検を行い、良好な管理で災害の発生を防止するよう努めます。
法面に設置した小段排水溝・竪排水溝・法尻排水溝等の排水施設については、清掃管理を十分に行い良好な排水機能を確保します。
植栽は、灌水、剪定等の維持管理を適正に行い、自然緑地と一体となった良好な緑地を創出し、あわせて表土の保全に努めます。
 なお、申請人の立入り調査は、工事中もゴルフ場開業後も、いずれも非常な危険を伴うことであり、固くお断りします。当社は監督行政官庁の許可どおりの工事を適正な手続きのもと実施します。

(6)自動車交通量の増大について
 当社で運営する全ての施設(ゴルフ場、打放し練習場、霊園など)の利用者サービスとして福利厚生用の送迎バスを運行しています(河内長野駅は30分毎、和泉中央駅は1時間毎に運行)。
 当社では日常的に公共交通機関および上記送迎バスの利用、また、来場者および従業員の車両のアイドリング停止を呼びかけて、施設全体として交通量の削減、排気ガスの削減など自動車による公害防止に努めています。
 天野山カントリークラブの主要な出入口は河内長野市側の国道170号(外環状線)に面しています。府道堺かつらぎ線に取り付く通路は、予備または緊急時の利用目的で整備しましたが、地元からの要望もあり、現在は一般に開放し、ごく少数の近隣住民の方が利用しています。この通路にはゲートを設け、日中はガードマンが常駐し、通行車両を管理しています。

5 理由および紛争の経過について
(1) 理由及び紛争の経過のうち(1)、(3)、(4)、(5)、(6)については、当社の一切関知しないことであり、意見はありません。

(2) 理由および紛争の経過のうち(2)について
 平成10年3月26日に堺市長に当社が提出したのは「大規模開発事前申出書」であり、記載とは異なります。

(3)理由および紛争の経過のうち(7)について
 記載内容は事実無根であって、現在まで申請人から当社に対する文書、来社による話し合いの申し入れ等はありません。当社にとって申請人からの調停の申し入れは、全く一方的なもので、内容、手続きの両面から納得しがたいものです。
 なお、当社には当事業計画に関して、個人や団体から各種のいやがらせや金品の強要を伴うような電話があり、対応に苦慮しています。当社では、直接の面談・文書による申し入れについては、誠実に対応しています。

(4)理由および紛争の経過のうち(8)について
 ゴルフ場の開発は、各種法令によって厳しく制限されています。
 大阪府のゴルフ場開発に関する取扱方針では、原則として抑制するとしたうえで、13種の開発規制区域を設け、さらにさまざまな開発条件が設定されています。また都市計画法、森林法その他法令の詳細な規制に適合する必要があります。(*別添資料一6参照)
 許可手続きにおいても、自然環境に対する影響と保全対策を多角的に検討することが含まれ、そのうち立地判断については、堺市大規模開発協議会、堺市大規模開発調整委員会の詳細な検討を経て慎重に承認されています。さらに敷地の安全性、土地利用の適正、周辺環境への影響などに関する技術協議を終え、許可を得ることとなっています。
 申請書には、「ゴルフ場開発が行われた場合のゴルフ場計画地内およびその周辺の相当広い範囲の自然環境と住環境に大きな影響をもたらし、多くの市民がその自然を享受できなくなり、別所を源流とする和田川の水質が汚染されるおそれがある。」と記述されていますが、現行の各種法規制は、まさにその自然環境と開発の調和についての基準を定め、厳正に判断するために整備されたものと考えることができます。
 当社は、厳しい競争社会のなかで、企業の社会的責任を自覚し、特に環境保全に万全を期すべく努力する一方、行政当局の指導にしたがい、適正に開発事業を進めています。

6 ゴルフ場開発によってもたらされる影響について
(1)ゴルフ場開発によってもたらされる影響(1)、(6)について
 当社は昭和62年に当該地においてゴルフ場増設の計画を当時の許認可権者であった大阪府知事にマスタープランとして提示していました。第1回目と2回目の環境調査(植生調査、動物等調査)はその時点で実施したものです。
 その後、自然環境に対する社会的関心が高まるにつれ、ゴルフ場開発についても、行政当局の方針が変更され、その結果、前述した厳しい法規制および審議体制等が敷かれることとなりました。
 その間、堺市においては、当計画地を含む南部丘陵地域のあり方について、「堺市南部丘陵検討委員会」が検討を始めることとされ、当社もその結果を尊重するため、事業計画の提出を凍結し、結論の出るのを待っていたところです。その後「堺市南部丘陵検討委員会」は自然環境の現況や社会的条件等の基礎調査を実施し、調査報告書をまとめていますが、そのなかで、地域を自然環境の保全と活用をはかるうえで3ゾーンに区分し、各ゾーンの特色に応じた施策のあり方についてまとめています。当敷地は、樹林の景観性と生態系のバランスの維持にも配慮し、また、立地と自然特性に配慮しつつ利活用をはかることを基本としたB−1ゾーンに区分されています。
 当社では、堺市南部丘陵検討委員会報告書を受け、平成9年に第3回目の環境調査(動植物調査)を実施し、貴重な動植物の生息環境の保全対策、緑地の配置などの自然環境に対する影響に関わる問題点を検討し、各種法規制を勘案して現計画の原型を策定しました。
 その後は別に示す経過のとおり、担当課と協議を重ね現在に至っていますが(*別添資料−7参照)、とりわけ自然環境への配慮に関する重要事項として、農薬使用量、除去対策および流出防止対策、濁水防止を含めた防災対策、自然樹林地の確保、企業としての社会貢献などの問題を整理、検討し、計画に反映することで合意を得てきました。
 当社の自然環境に対する取り組み、また、社会貢献に対する取り組み(公園整備、ハイキングルート整備)の結果として、今回の9ホール増設は、樹林の景観性と生態系のバランスに配慮し、周辺地域の自然環境、生活環境にも調和していると判断されることになったものと考えます。(*別添資料−8参照)

(2)ゴルフ場開発によってもたらされる影響(2)について
 開発行為の許可基準の運用細則について(平成3年7月25日改正 3林野治第2383号)の表4には開発行為の目的別に事業区域内において残置し、または造成する森林または緑地の割合および森林の配置等について定めています。ゴルフ場造成の場合、@原則として周辺部に幅おおむね30メートル以上の残置森林または造成森林(残置森林は原則としておおむね20メートル以上)を配置する、Aホール間に幅おおむね30メートル以上の残置森林または造成森林(残置森林はおおむね20メートル以上)を配置するとしています。また、森林率は地域計画対象民有林において、おおむね50%以上とすることとされています(残置森林率おおむね40%以上)。
 また、府のゴルフ場開発に関する取扱方針(平成2年9月1日改正)でも同様に、@敷地の65%以上の樹林地を設け、敷地の40%以上の自然地を残すこと、A敷地の周辺部およびコース間におおむね幅30メートル以上(うち自然地20メートル以上)の樹林地を確保すること、B造成に係る切土量、盛土量は、それぞれ18ホール当たり、おおむね200万立方メートル以下とするとしています。
 この規制により、尾根を削り谷を埋めて連続した平面を造成し設定したコース間に植栽する、という旧来のゴルフ場開発は不可能となり、より広い敷地が必要となることから、自ずと自然の中に狭いコースが点在する図柄となります。
 以下は当開発事業の土地利用面積表ですが、事業区域のうち、コースとして利用しているのは3分の1以下であり、自然環境に対して、いかに規制が厳しいものであるか理解できるものと思われます。

名称

面積(u)

比率(%)

備考

コース等

151,795

31.4

自然緑地

226,990

47

*1

造成森林

103,945

21.5

*2

その他緑地

470

0.1

*3

事業区域

483,200

100

*1自然緑地:自然のまま緑地として残す
*2造成森林:造成後、森林法の規定に基づく植裁を行う
*3その他緑地:造成後、芝生を植裁する(調整池周辺)

 さらに、計画地中央部の谷の下流域周辺(地区外)には、動物ではカスミサンショウウオ、植物ではヤマトミクリという貴重な種が確認されていますが、生息地周辺を自然緑地として保全すること、および工事中、工事後において、十分な濁水対策、農薬対策などを行うことで生息環境を保全することができます。これらの対策の結果、確認された貴重種に重大な影響を与えないとの判断を堺市からいただいています。(*別添資料−9参照)

(3)ゴルフ場開発によってもたらされる影響(3)について
 当社の既存コース部分の排水口における残留農薬の詳細は、定期報告資料に示されているように、大阪府の農薬使用環境基準、厚生省および環境庁の指針値と比較してはるかに下回り、問題ないとされる水準です。(*別添資料−10参照)
 なお、「4調停を求める事項について(4)農薬散布について」において農薬対策の概要を示しましたが、コース管理の問題として、不測の事態も予想しながら、流出農薬の削減をテーマに積極的に以下の実験的研究を行っています。

@農薬散布場所の吸着性を高める工夫
 平成7年より年1回(5月中旬〜下旬)フェアウェイ、ラフに目砂を全面散布しています。砂は中国産河砂を使用し、この砂に多孔質微量要素材を1:1の割合で混ぜ混合砂(ミネラルサンド)をつくり、この混合砂容量の10%の値で微生物有機資材(グリーンコンポ)を攪拌し完成砂(GCミネラルサンド)としています。散布量は年1回10mm/uですが、長期的には芝の下に砂・微生物材・多孔質材を含むフィルター層が形成され、土壌中において微生物分解を促進させ農薬を無毒化するものです。また多孔質材で吸着性を高め、農薬の流出はほとんどなくなります。
 さらに、微生物有機資材はリゾクトニアラージパッチ等の病害にも抑制効果が高く殺菌剤の削減になるものと考えています。(*別添資料−11参照)
A木炭等による流下途中での吸着濾過
 平成5年の冬季に製造した木炭を平成5年春からコース間のクリークに設置しています(*別添資料−12参照)。その後3ケ月周期で木炭の交換を行っています。降雨により流出した農薬はクリークに設置した木炭が吸着し、濾過された雨水がコース内の池または調整池に流れ込みます。ゴルフ場内の水はクリークの上下流の池、または調整池間をポンプを使用して常時循環しており、木炭フィルターを通過することと、落差流によるばっき効果、紫外線分解によって農薬除去が進められます。さらにその後の水は、灌水に利用して、地区外に流出させないように努力しています。
 ゴルフ場内で立ち枯れしたマツは毎年700〜1,000本程度あり、その一部を利用して敷地内の炭焼き小屋で木炭を製造しています。2日間で1回200kg、一冬で約2t程度製造しています。全数180〜200枚のパレット(2〜3kgの木炭と重りを入れる)を置くと1回約500kgとなり年間必要量は2tで、生産量とのバランスはとれています。
 立ち枯れのマツが少なく自家製の木炭製造が不足した場合は、市販されている水処理用炭素(*別添資料−13参照)を購入して継続していく考えです。(使用後は土壌改良に使用できることから環境にやさしい水処理と考えています。)
B水処理装置(農薬除去装置ニチノクリーンの設置)
 平成5年2月に西コースのA調整池(西コースの区域の2/3を流域とする)にニチノクリーンを設置しました。分析試験結果によると、その効果が変動することから、今後の経過をみて判断する必要があると考えています。(*別添資料−14参照)

 今後も引き続きこうした対策をつづけ、増設地を含むゴルフ場全体としての排水にかかる水質改善に努力し、下流地区の農業や漁業、生活環境を悪化することのないように十分注意をはらう企業努力を進めることとしています。

(4)ゴルフ場開発によってもたらされる影響(4)について
 当事業計画による9ホール分の利用客は最大限120人です。(午前10時から午後3時まで4人一組として10分間隔スタート30組*4人=120人)一人一台としても120台の車両増加にしかなりません。
 当社事業地の主要な出入口は河内長野市側の国道170号(外環状線)に面しています。したがって、これまでと同様、来場者の大多数が国道170号からになるものと考えています。
 府道堺かつらぎ線、別所草部線へは、堺市内に在住するメンバーなどの一部が流入する程度となります。将来、全施設(ゴルフ場、打放し練習場、霊園、住宅地など)の利用者が最大限増加した場合を検討しましたが、その場合でも一日当たり250台が増加する程度です。こうした結果にもとづいて、堺市は「大規模開発事前申出について(回答)E公共施設整備への影響」のなかで、増加数は周辺道路の許容範囲と判断しています。
 なお、前述したとおり、府道堺かつらぎ線に取り付く通路は、地元からの要望もあり一般に開放し、少数の近隣住民の方が河内長野方面への近道として利用しています。
 工事用の車両については、地元関係者と十分協議し、また、警察署との協議、指導にもとづき交通安全の確保に努めます。ゴルフ場の造成は場内での土工事が中心であり、一般の建設工事と比べて車両の搬出搬入は少ないのですが、学童の通学時間帯の運行をできる限り低減することとし、さらに、運行経路は国道170号からを主とし、堺かつらぎ線の出入口に交通誘導員の配置を考えています。(*別添資料−15参照)

(5)ゴルフ場開発によってもたらされる影響(5)について
 計画区域の設定は、9ホールの増設に必要な最小限の規模を目標とした結果です。
結果として48haとなったものであり、9ホールの増設として計画した平成3年のマスタープラン作成当初より基本的に変更はありません。
 開発に係わる環境影響評価の項目として、一般には@生活環境に与えるものとして大気汚染、水質汚濁、底質汚染、騒音、震動、低周波空気振動、悪臭、地盤沈下、土壌汚染、日照阻害、電波障害、A自然環境に与えるものとして、気象、地象、水象、動物、植物、レクリエーション、自然景観、B歴史的文化的環境に与えるものとして、文化財、歴史的文化的景観等があげられています。
 環境影響評価は、これら該当する項目を調査分析し、事業が環境に及ぼす影響を評価するものです。
 上記項目のうち当計画においては、@では水質汚濁が該当します。ゴルフ場の利用者が増加することにより、汚水、雑排水の処理量が増加することについては法規にもとづき担当課と協議を終えています。
 Aのうち、該当項目である動物、植物についての調査は、すでに「4調停を求める事項について(2)環境保全についての配慮」で示したとおり詳細に実施しています。なかでも貴重な動植物に及ぼす影響を最小限度にとどめ、その生態環境を保全する対策については、当局と長期にわたり協議を行い、その対策を高く評価いただいております。
 Bでは平成10年12月14日に堺市当局が現地調査を行い、試掘調査および発掘調査について必要なしと判断されています。ただし、工事中等で土器等を発見した場合には、文化財保護法第57条5および堺市文化財保護条例第38条2にもとづく届出を行うことが必要となりますので、工事を中断し速やかに堺市社会教育課まで連絡のうえ、協議を行うことになっています。
 環境影響評価要綱の対象となる規模でないため、その手続きは行ってはいませんが、それぞれに該当する項目については長期にわたる調査を自主的に行い、人的環境、自然環境に対する影響への保護対策を積極的に講じています。


7 当開発事業による影響を申請人が懸念している計画地内の動植物について
(1)カスミサンショウウオについて
 平成元年3月の当方調査では、中央谷筋の上流部ため池よりも下流部の湿地で幼生と卵塊を確認し、この湿地一帯で繁殖しているものと考えていました。
 さらに、平成10年5月8日の現地調査において、上流部ため池で卵塊を確認したことから、この池がカスミサンショウウオの産卵場所であることが判明しました。
 このため、本種の産卵場所である、ため池およびその周辺を開発区域から除外しました。

@工事中および完了後の濁水による影響について
 中央谷筋のため池より上流部にある調整池および仮設沈砂池の工事は、カスミサンショウウオの幼生が水辺から周辺の林地へ移動していなくなる生息状況を確認のうえ、8月頃に着工し、12月には安定した水質を確保する工程とします。
 また、工事中および完了後の濁水による湿地帯への影響がないように、防災工事に先立って沈砂池流出口地点から湿地帯への下流の既設排水路までバイパス管渠を設置します。バイパス管渠の撤去は、工事完了後、工事による濁水の状況を監視しながら、堺市と協議のうえ行うこととしております。
A湿地帯の保全について
 谷筋底部に工事中の仮排水とは別系統で集水暗渠(有孔管)を布設して、地下浸透水を湿地帯へ放流させます。調整池内に布設する区間は無孔管とし、表面排水は湿地帯に流入させない構造とします。なお、前述の「4調停を求める事項について(4)−B水質対策について」のとおり、浸透水に農薬は含まれません。

(2)イワワキオサムシについて
 平成元年の当方調査では、開発地中央の谷筋に沿って5地点で比較的多数が確認されているものの、うち4地点は開発区域外です。
 なお、イワワキオサムシの生息に適した森林が周辺地域に広く分布しており、イワワキオサムシも周辺地域一帯に広く分布しています。このため、当開発によって開発区域を含む近隣地域一帯のイワワキオサムシの保全上、支障が生じるおそれはないものと考えられます。

(3)アカシデ林について
 平成9年10月に当方で行ったアカシデ確認調査では、2地点で合計9個体のアカシデの大木を確認しました。A地点では、谷のスギ植林地内に単木で生育、B地点では、崩れやすい谷斜面下部に生育しており、植裁されたヒノキと混生し、群落を形成していました。
 また、アカシデについて、平成10年12月詳細調査を行いました。その結果2ケ所に群生し、一方は生育数は少なくコナラの優占林内にわずかに混じる程度ですが、もう一方は約40m×30mの範囲で群生し、一部ではアカシデが優占している箇所もみられますが、全体としては林冠コナラと共存しています。
この調査で確認されたアカシデ林のうち、半数程度は工事をともなわない残地森林となります。

(4)その他(ヤマトミクリ、ジュンサイ、ヒツジグサ)について
平成6年の当方調査では、中央谷筋の上流部の池でミクリ属の一種、上流部の池および下流部の池でジュンサイ、ヒツジグサを確認しています。
上流部の池およびその周辺は、カスミサンショウウオの生息地でもあり、前述の「7当開発事業による影響を申請人が懸念している計画地内の動植物について(1)」で述べたとおり濁水対策を十分に行います。なお、ジュンサイ、ヒツジグサ、ミクリ属の一種の生育地である上流部および下流部のため池は、いずれも開発区域から除外しました。

8 別添資料一覧

 1.周辺自治会および水利組合の『同意書』
 2.当方が実施した環境調査一覧
 3.(版杯)天野山カントリークラブ9ホール増設計画に関する
 平成10年9月4日付堺市大規模開発協議会意見書
 平成11年1月29日付堺市大規模開発調整委員会意見書
 4.(坂杯)天野山カントリークラブ9ホール増設計画にかかわる環境調査〜アカシデ毎木調査〜報告書
 5.フェロモントラップ設置写真および個体数詞査表
 6.「ゴルフ場開発に関する取扱方針」平成2年9月1日一部改正
 大阪府土地利用等調整協議会
 7.(仮称)天野山カントリークラブ9ホール増設計画手続き経過
 8.水の浄化に対するマスコミ等の放映、掲載および見学者の経緯
 公園計画図
 ハイキングルート整備計画図
 9.大規模開発事前申出について(回答)平成11年2月5日付
10.水質測定結果
11.GCミネラルサンドの特性について
12.木炭パレットの設置写真および木炭による水質浄化について
13.市販されている水処理用炭素
14.ゴルフ場調整池水処理装置「ニチノクリーン」の特長
 日本農業株式会社・化学品事業部
15.工事車両経路図および工事工程表