槇尾川ダム再考の要望書を提出しました

 現在大阪府は、関西国際空港関連の事業などの失敗により全国一の財政危機に陥っています。こうした事情もあって、事業開始後に5年以上経過しても進捗のみられない事業について、ほんとうにその事業が必要かどうかの「再評価」を、学識経験者なども入れた委員会を作ってすすめています。
  当会は、槇尾川ダム建設事業について、再考すべきであると考え、再評価委員会に要望書を提出しました。
  再評価委員会には、「槇尾川ダムの見直しを求める連絡会」や「(社)大阪自然環境保全協会」なども意見書を出しており、再評価委員会の公聴会では、保全協会副会長で大阪市立大学教授の高田氏が、ダムは不必要との意見を述べています。
  見直し論の主張の概要は、(1)ダム予定地には、サツマイナモリやアケボノシュスラン、ブチサンショウウオなどの貴重な動植物や、まとまって残されている大切な自然環境そのものが破壊される、(2)ダム必要論の根拠となっている過去の「水害」が誇大宣伝されており、計算上の洪水流出量があまりに過大に想定されている、(3)100億円が投じられる大規模土木事業の割に効果が小さく、他の方法による治水の方がはるかに効率的である、等というものです。  鉢ヶ峯の自然を守る会としては、土木工学技術的な見解を述べる事はできませんので、自然環境保全の観点から見解を表明しました。 以下はその全文です。

1999年7月21日

大阪府建設事業再評価委員会
    委 員 長 斉 藤  慎 殿

 鉢ヶ峯の自然を守る会
 代 表 清 水 俊 雄

槇尾川ダム計画の再考を

 私たちは、堺市の南部丘陵でその自然に親しみつつ保全運動をしているものです。
 堺市では今、鉢ヶ峯寺地区に農業公園を造成中です。その施設の一部として車3千台分の駐車場が緑を削り造られています。また、槙尾山に続く別所地区では、ゴルフ場の増設計画があり、この6月堺市により認可されました。これに対し、私たちは公害調停の申請をし、少しでもここの自然を残したく活動を行っています。
 ところで大阪府が進めようとしている槇尾川ダム計画地は、里山の多様な自然が残る堺市の南部丘陵から和泉山脈につながる「緑の回廊」部分にあたります。私たちが別所の自然を守りたい理由は、同じくそこがこの回廊の中枢部分にあたるからです。多くの生き物がそこを通って移動し生活しています。
 例えばイワワキオサムシは、飛ぶことの出来ない地表生の肉食昆虫ですが、和泉山脈を中心にごく限られた場所にしか生息していません。別所地区は大阪府下での棲息の北限になっています。この昆虫は餌となる生き物が豊富な、よく発達した森林にしか棲息できず、それはとりもなおさずダム計画地を含む槇尾山一帯には、良好な森林が残っていることを意味しています。オオタカやノスリなど猛禽類が棲息できるのもこのまとまった森林があるからです。
 ダムによる代替道路ができると、この良好な森林も無くなり、槙尾山ばかりか堺市の南部丘陵からも生き物の姿が消えてしまうことでしょう。
 今、地球温暖化が言われ、また水害も大規模化していますが、それは人間が自然環境を省みることなく開発を行ってきたからだとも言われています。大切なことは、今ある自然を残し、自然と共に生きる知恵ではないでしょうか。
 専門家の意見でも、防災効果に疑問のある槇尾川ダム計画を見直していただきたく要望します。

以  上

槙尾川ダムサイト予定地付近の風景