天野山ゴルフ場拡張開発(48ヘクタール)に対する取り組み経過と現状

 堺市の別所地区は南部丘陵の最南端に位置し、鉢ケ峯に劣らない深い森や谷のある豊かな自然を残しているところです。1995年に作られた「泉北自然マップ」でも、この別所は“どきどきコース”として紹介され、四季折々に市民に親しまれてきました。コナラやカスミザクラなど、尾根筋の落葉樹林、ジュンサイやヒツジグサなどの溜め池の水草や紅葉の美しいアカシデのまとまった樹林などが存在し、美しい里山景観を形成しています。
 また、レッドデータブックに記載のあるカスミサンショウウオ(地域個体群)、大阪府の貴重な昆虫であるイワワキオサムシの生息やオオタカの飛翔など、生きものにとっても大切な場所として多様な生態系を育んでいます。さらに、ここは「緑の回廊としても重要な役割を持ち、北の畑・逆瀬川・鉢ケ峯から別所を中継地として南の槙尾山・父鬼、天野山・滝畑の緑へとつながり、動植物の孤立化を防いできました。
 ゴルフ場の拡張計画を知って以来、さまざまな取り組みを行なってきましたが、別所の森は開発によって姿を変えようとしています。昨年6月にゴルフ場開発が許可され、現在、造成工事が進められています。
 このような中で少しでも生態系が損なわれないことを願って、公害調停の場で開発者への理解を求めて話し合いを進めているところです。

(主な経過)

1999年(H9年)
2月頃  別所地区で天野山ゴルフ場拡張開発の動きを知る。
8月21日 堺市に「別所の森の保全について」の申入書を提出。
 
1998年(H10年)
3月26日 天野山ゴルフ場増設開発の事前申出書が堺市に申請される。
7月17日 「ゴルフ場計画に反対する申入書」を堺市長に提出。
7月〜10月 署名活動の実施(当会などで泉ヶ丘・堺東駅頭での署名を訴える)
8月24日 「ゴルフ場増設に関する事前申出書」の公文書公開を申請
9月3日 堺市がゴルフ場の立地条件承認を発表。
市民が親しめるレクリエーションの場の整備、地域振興を図るものであり、自然環境に
配慮しているなどを理由に承認。
8月10日 堺市に「ゴルフ場の立地条件承認の抗議書」を提出。
10月15日 公文書公開申請に対し、土地利用図・造成計画図等が非公開のため「異議
申立書」を提出。
10月15日 ゴルフ場増設反対の署名(17,920筆)を堺市に提出。
11月25日 土地利用図などの図書を非公開とする堺市の弁明書に対して反論書を堺市公文書公開審査会に提出。
【この間、開発許可申請が提出され堺市で審査中であることが判明する】
 
1999年(H11年)
4月6日  大阪府公害審査会に、「公害調停申立て」を行う。
7月14日  第一回公害調停委員会開催
 
[申立て事項とそれに対する返答の要旨]
(1)土地利用図等を開示してください。
 −開発申請中であり事業内容が未確定であり、企業秘密に属し設計者の著作権の同意が得られない。
(2)農薬や造成による水質汚濁によるカスミサンショウウオ等への影響に関するアセスメントを実施してください。
 −6回に亘る動植物調査を踏まえ利用計画で動植物の生態環境の保全に配慮し、減農薬、水質、濁水対策をしておりアセスメントは行いません。
(3)緑の回廊としての樹林地保全、特にアカシデ林を自然樹林地として保全してください。
 −自然緑地として区域の47%を残し回復緑地を入れて68.5%の森林を確保し、開発後も相当のアカシデ林を残します。なお、アカシデは重要もしくは貴重な植物にはあたりません。
(4)無農薬・減農薬に努め、農薬の種類等と散布後のデータを開示してください。
 −減農薬、水質対策を実施し定期的に水質の監視、農薬使用量・水質データ記録の作成を堺市と打合せしています。
(5)工事段階、開業後に申立人の立入り調査を認めてください。
 −工事中、開業後も危険を伴うので認められません。
(6)ゴルフ場への車利用者へ走行ルート・時間帯などを周知してください。
−主要出入ルートは国道170号線(外環状線)であり、堺市側ルートはゲートにガードマンによる出入り車両の管理をします。
 
※後で6/25にゴルフ場開発の許可がされ、7/8から工事用進入路工事が進められていることが分かる。
7月15日  堺市から非公開図面(土地利用計画図、造成計面図など)の開示通知あり(開発許可されたため)
8月24日  第二回公害調停委員会開催
 
【補足申立書の提出とそれに対する返答の要旨】
(1)カスミサンショウウオの現況生息調査と生息谷筋の工事の中断及び池への造成土砂の堆積、濁水の流入対策をしてください。
−8月の調査で池に幼生(1匹)、池の土手に幼体(2匹)を確認した。工事は進める。濁水排水のバイパス管敷設工事中であり対策を講じる。
(2)開示された計画図ではアカシデ林の相当エリアが切土工事で消失するため工事の留保と切土区域を縮小してください。
−アカシデ林部分は未だ工事をしていない。土地利用計画の変更は技術、費用、開発変更手続(時間)などの面からできない。
(3)アカシデ林へのハイキングルートを開設してください。
−現地をよく見ていないので即答は控える。
 
10月9日  調停委員会の現地調査
−カスミサンショウウオの池・湿地エリアとアカシデ林エリアの調査。
   ※カスミサンショウウオの池の上流谷筋とその周辺は造成済
12月10日  第三回公害調停委員会開催
 
[委員長調停]
 申立人側から被申立人に自然環境等の保全に関して「お願い書」を出して当事者間で話合いできないか。
[調停に対する意見]
 被申立人としては環境保全に配慮してきたつもりである。申立人が権利主張だけをされるのでなければ、一緒に話し合うことはやぶさかではない。
 申立人としても権利主張という観点ではなく、申立事項(アカシデ林の保全やカスミサンショウウオの生息など)について話し合いをしたいし「お願い書」も提出することにする。
 
12月24日  「別所の森の自然保全についてのお願い書」を大阪府公害審査会事務局の経由で提出。
[お願い要旨]
(1)アカシデ林はできる限り本数を残してほしい。困難な場合は回復緑地に造成箇所のアカシデの幼木を移植してしてほしい。
(2)カスミサンショウウオが生息できるよう、可能な限り池や谷筋周辺の環境保全に配慮していただき、復元などを図ってほしい。
(3)これら保全に向けて私たちも活動の提供をしたい。
(4)ゴルフ場が休みの日はアカシデ林などの自然観察会等を実施するために開放してほしい。
2000年(H12年)
1月23日  第一回話し合い(於:天野山CCのクラブハウス内)
 
[話し合い結果の要旨]
(1)アカシデ林はできるだけ残すべく計画変更を検討している。
(2)カスミサンショウウオの池や湿地について、当面、今年2〜3月の産卵状況を見守る中で一緒に考えてほしいということに対して、池は区域外であり所有地でないが、市の指導もありカスミサンショウウオの保全には最大限の関心をもっている。
(3)ゴルフ場の休日での観察会等は事前の届出やゴミ等への配慮があれば差しつかえない。
 
2月10日  第四回公害調停委員会開催
 1月23日の両者の話し合いの一致事項の確認。
 委員長から被申立人が検討されている土地利用図の変更案をもとに、3月中に両者で話し合う調停が示される。(了解)
 第五回調停委員会を4月21日に予定。

以 上