公害調停の主な経過

2000.12.18

天野山ゴルフ場拡張開発(48ヘクタール)に係る公害調停の主な経過

 鉢ケ峯の自然を守る会など自然保護団体や市民14名が、堺市別所地区のゴルフ場開発(開発事業者:大和開発観光株式会社)に対して、1999年4月6日に公害調停の申立てを行い、10回に亘る公害調停委員会とその間に6回の両者だけでの話し合いの場をもち、本日、公害調停の成立に至りました。以下は主な経過日程と経過概要です。

主な経過日程

1999年(H11)
 4月 6日 大阪府公害審査会に、「公害調停申立て」を行う。
6月25日 堺市:都市計画法の開発許可及び宅地造成法の工事許可、大阪府:森林法の林地開発許可
7月14日 第一回公害調停委員会開催
7月15日 堺市から非公開図面(土地利用計画、造成計画図など)の開示通知あり(開発許可されたため)
8月24日 第二回公害調停委員会開催
10月 9日 調停委員会の現地調査
カスミサンショウウオの池・湿地エリアとアカシデ林エリアの調査。
※カスミサンショウウオの池の上流谷筋とその周辺は造成済
12月10日 第三回公害調停委員会開催
【委員長調停】
申立人側から被申立人に自然環境等の保全に閑して「お願い書」を出して当事者間で話合いできないか。
12月24日 別所の森の自然保全についてのお願い書」を大阪府公害審査会事務局経由で被申請人に提出。
2000年(H12)
1月23日 第1回話し合い(於:天野山CCのクラブハウス内)
2月10日 第四回公害調停委員会開催
3月20日 第2回話し合い(於:天野山CCのクラブハウス内)
4月21日 第五回公害調停委員会開催
6月24日 第3回話し合い(於:天野山CCのクラブハウス内)
7月 7日 第六回公害調停委員会開催
9月 2日 第4回話し合い(於:天野山CCのクラブハウス内)
9月13日 第七回公害調停委員会開催
10月11日 第八回公害調停委員会開催
11月18日 第5回話し合い(於:天野山CCのクラブハウス内)
11月27日 第九回公害調停委員会開催
12月10日 第6回話し合い(於:天野山CCのクラブハウス内)
12月18日 第十回公害調停委員会開催
調停成立

主な経過概要
申立事項の要旨
調停申立て
申立事項とそれに対する返答の要旨
補足申立書の提出とそれに対する返答の要旨
お願い要旨
当事者同士の話し合い
計画変更検討へ
計画変更案提示
計画変更案了解
調停成立

 

申立事項の要旨は、以下のとおり。
(1)ゴルフ場開発計画図の開示
(2)農薬や造成に伴う水質汚濁によるカスミサンショウウオなどの生息に対する環境アセスメントの実施
(3)自然樹林地の保全(特に、アカシデ林)
(4)農薬の種類等と散布後のデータの開示
(5)工事中及び開業後の立入り調査の認知
(6)ゴルフ場への車利用者へ走行ルート・時間帯などを周知
 
当初の段階では、被申請人から公害紛争処理法において自然環境や動植物の保全等にかかる調停申立事項は公害調停に馴染む事項ではないなどを主張され、申立事項に対して以下の返答であった。
 
【申立事項とそれに対する返答の要旨】
(1)土地利用図等の開示してください。
・開発申請中であり事業内容が未確定であり、企業秘密に属し設計者の著作権の同意が得られない。
(2)農薬や造成に伴う水質汚濁によるカスミサンショウウオ等への影響に関するアセスメントの実施してください。
・6回に亘る動植物調査を踏まえ利用計画で動植物の生態環境の保全に配慮し、減農薬・水質・濁水対策をしておりアセスメントは行いません。
(3)緑の回廊としての樹林地保全、特にアカシデ林を自然樹林地として保全してください。
・自然緑地として区域の47%を残し回復緑地を入れて68.5%の森林を確保し、開発後も相当(アカシデ林のうち、1/4程度を残し他は造成)のアカシデ林を残します。なお、アカシデは重要もしくは貴重な植物にはあたりません。
(4)無農薬・減農薬に努め、農薬の種類等と散布後のデータの開示してください。
・減農薬、水質対策を実施し定期的に水質の監視、農薬使用量・水質データ記録の作成を堺市と打合せしています。
(5)工事段階、開業後に申立人の立入り調査を認めてください。
・ 工事中、開業後も危険を伴うので認められません。
〈6〉ゴルフ場への車利用者へ走行ルート・時間帯などを周知してください。
・主要出入ルートは国道170号線〈外環状線〉であり、堺市側ルートはゲートにガードマンによる出入り車両の管理をします。
※後で6/25にゴルフ場開発の許可がされ、7/8から工事用進入路工事が進められていることが分かる。
 
【補足申立書の提出とそれに対する返答の要旨】
(1)カスミサンショウウオの現況生息調査と生息谷筋の工事の中断及び池への造成土砂の堆積、濁水の流入対策をしてください。
・8月の調査で池に幼生(1匹)、池の土手に幼体(2匹)を確認した。工事は進める.濁水排水のバイパス管敷設工事中であり対策を講じる。
(2)開示された計画図ではアカシデ林の相当エリアが切土工事で消失するため工事の留保と切土区域を縮小してください。
・アカシデ林部分は未だ工事をしていない.土地利用計画の変更は技術、費用、開発変更手続(時間)などの面からできない。
(3)アカシデ林へのハイキングルートを開設してください。
・ 現地をよく見ていないので即答は控える。
 
【お願い要旨/1999.12.24提出】
(1)アカシデ林はできる限り本数を残してはしい。困難な場合は回復緑地に造成箇所のアカシデの幼木を移植してほしい。
(2)カスミサンショウウオが生息できるよう、可能な限り池や谷筋周辺の環境保全に配慮していただき、復元などを図ってほしい。
(3)これら保全に向けて私たちも活動の提供をしたい。
(4)ゴルフ場が休みの日はアカシデ林などの自然観集会等を実施するために開放してほしい。
 
その後、調停委員会の回を重ね、又、委員長の提案で当事者同士だけの話し合いの場をもつ中で、被申請人から「初めは申請人らが自然保護に名を借りて開発妨害などをする団体と思っていたが、高梼先生(府大名誉教授)をはじめ真面目に自然環境の保全を取り組んでいる人達だと分かった。」と申請人側の要請等に対して前向きに検討する旨の考えを示される。
 
公害調停委員会や両者間での話し合いを通じて、申請人から「できるだけ、まとまった自然樹林地の確保」を要請したところ、被申請人からコース設計の変更を含め開発計画の変更を検討する旨、表明される。あわせて大阪府ゴルフ場開発基準(コース間に30mの樹林地、うち、自然樹林地を20m確保)との関係について大阪府に協力依頼することになった。
@アカシデ林の保全エリアの拡大
Aアカシデ林へのアプローチの開放
Bカスミサンショウウオの産卵池や下流湿地及びその谷筋周辺の樹林地の保全
※Bに開しては、申請人らが今年2月〜3月頃にかけてカスミサンショウウオの当該産卵池及び下流の湿地で卵塊の有無を調査をしたが、当該地での産卵は確認できなかった。
 なお、近接の溜め池でカスミサンショウウオの卵塊(数房)を確認した。
 このような状況から次年の産卵の可能性は低いと判断されるため、当該ゴルフ場開発区域にカスミサンショウウオが生息・産卵できる環境を整え、近接の溜め池で産卵したカスミサンショウウオの卵塊の一部の移し替えなどを行い、カスミサンショウウオの生息、環境の復元を図ることをお願いする。
 
第六回公害調停委員会で被申請人からゴルフ場開発計画の変更案を提示さる。
(変更概要)
計画変更の基本として、できるだけまとまった自然樹林として残し、ゴルフコース計画を見なおす。
 具体には、
(1)アカシデ林及びその周辺は再発区域から除外しすべて残し、当該材林地を保全する。
(2)開発区域の変更に伴い当初の区域外の所有地を区域に入れる。なお、開発区域面頓は変わらない。
(3)カスミサンショウウオの溜め池の上部谷筋やバイパス管を敷設した斜面樹林地は一部造成済だが、造成したところには木を植えて回復緑地とし、さらに造成を計画した都分は計画を見直し、自樹林地として残す。
(4)カスミサンショウウオの溜め池や下流の湿地は他人所有地(当初から再発区域外〉であり、被申請人として放ることはできないが、ノウハウを教えてもらえれば再発区域内でカスミサンショウウオが生息できるクリークを復元する考えはある。
(5)アカシデ林への観察ルートを確保し、事前に届出があればゲートを開ける。
 
申請人側で検討の結果、当該変更案に対して了解する旨を表明し、被申請人より設計変更の開発許可(大阪府:森林法、堺市:都市計画法)申請を行い、11月中に許可される見通しとなる。
 
以上の経過を踏まえ、第八回公害調停委員から「調停条項原案」が示され、原案をもとに両者の話し合いの場を持ちながら、第九回公害調停委員会で一部修正し、別紙の調停条項となり本日、公害調停が成立し調停書の締結に至った。
 
なお、調停成立後も、両者間で定期的に話し合いを続けながら当該地域の自然環境の保全を図っていくことを確認している。