「ふれあいの森」整備計画についての要望と回答

堺市は、墓地の拡張用地として、第二豊田川と法道寺川の合流点の南エリア、いわゆる「オオタカ尾根」の北端にあたる雑木林を取得していました。このエリアについては、かねてから当会より堺市に対し、墓地にするのではなく自然環境を保全してほしい旨を申し入れていたところ、堺市としても、墓地ではなく「ふれあいの森」という名で自然を活かした利用をすすめる方針を出しました。しかし、「緑のミュージアム」として自然を活かした利用をすると言いながら、「ハーベストの丘」のように、従来の自然を大規模に改変させた例もあることから、懸念されるいくつかの問題点について、当会から要望書を出しました。以下は、要望書本文、および、それに対する堺市からの回答です。

 

 要望書本文 

堺市長殿

「ふれあいの森」整備計画についての要望書

2001年4月17日
堺市庭代台1丁23-5-206
鉢ケ峯の自然を守る会
代表 清水 俊雄

 日頃の環境問題への堺市の取り組みに敬意を表します。
わたしたち「鉢ケ峯の自然を守る会」は1991年の「鉢ケ峯の自然環境とゴルフ場問題を考える会」としての発足以来、10年にわたり堺市に残る自然環境−里山の保全を目指して活動し、堺市各部局とも数多くの協議の場を持ってきました。
 その間に鉢ケ峯ゴルフ場開発は中止となり、ハーベストの丘の開設、別所でのゴルフ場拡張の認可など、南部丘陵の利活用・開発は進みましたが、残念ながら残る自然環境を守り、次代に伝えるための施策は明らかにされてきませんでした。このことについて、わたしたち「鉢ケ峯の自然を守る会」は里山公園構想を堺市に提案するとともに、広く市民の理解を得るためにリーフレット「こんな里山がいいな」を発行するなど、21世紀の里山と市民の自然体験のあり方について広く訴えかけてきました。
 そのような状況のもと昨年末、堺市が鉢ケ峯地区の墓地公園拡張予定地として購入した17haを「ふれあいの森」として整備しようという計画があると聞きました。
この「ふれあいの森」予定地は堺市南部丘陵検討委員会が行った土地利用区分においてAゾーン(保全エリア)に当たる場所であり、また、現地では度々オオタカが目撃されるなど、鉢ケ峯の自然環境の中でも自然度の高い、いわばコア(核)にあたる極めて重要な場所です。また、環境から見たときに予定地と一体のものである第二豊田川は、堺市で最大の野生のホタルの自然発生地として高い価値があることも見逃せません。
 わたしたち「鉢ケ峯の自然を守る会」はこの「ふれあいの森」整備計画を豊かな自然環境の保全と、その趣旨にのっとった市民による里山体験が実現できる好ましい計画として大変高い関心を持っています。
 本「ふれあいの森」計画への上記の期待を込めて、以下の要望を提出しますので、実現にむけた検討をしてください。

要望事項

1.予定地の自然環境を守るためには自然破壊をせず、自然を残し、保全対象面積をさらに増やすことが必要です。「ふれあいの森」整備事業に10億9800万円の費用をかけると聞きました。わたしたちはこのような巨費をかけ、大々的な土木工事等を行うことによって、逆に現地の自然環境を大きく損なうことになることを大変心配しています。
 また、税金を財源とし、市民・国民に負担をかける大規模な公共工事は必要性が高く、費用対効果が高いものに限るべきです。「ふれあいの森」への10億円を超える支出は自然を生かし、市民がふれあう森という目的からすると、必要性と費用対効果の両面において無駄としか言いようがありません。
 ・「ふれあいの森」整備事業への支出明細(使途)を明らかにしてください。
 ・次項の提案内容に合わせて支出額を再検討してください。

2.「ふれあいの森」整備についての、施設、アプローチ道路及び散策路等の新規設置は、現地の自然環境を維持・保全するという目的にのっとり最小限に止め、生態系の保全を最優先にしてください。
 ・施設は自然観察の拠点としての最低限の機能である現地の自然の紹介、レンジャーの基地、トイレ程度に止め、自然環境に与える影響を最小限にし、違和感のない外観を持つものとしてください。
 ・アプローチ道路および駐車場は法道寺川以北に設置してください。法道寺川と第二豊田川に挟まれた計画地は全体がコア(自然度の高い核の部分)であり、ここに自動車を誘導することは容易に自然破壊につながります。
 ・遊歩道の整備は最小限に止め、階段や擬木の手すりの設置は自然景観や市民の自然体験を妨げますので原則として設置しないでください。
3.現在、計画策定に当たって所謂コンサルタント会社に案を出させていると聞き及んでいます。このような里山の維持・管理そして市民理解を広めるには市民及び環境保護団体の参加が不可欠です。
 ・堺市の担当者とコンサルタント会社のみの市民不在で計画を進めるのでなく、市民を中心にした計画策定へと足を踏み出してください。
 ・完成後の管理・運営は「ふれあいの森」の理念にのっとり、市民参加としてください。
 21世紀の行政施策、とりわけ地方分権が進む中での市町村行政には市民参加・協働を抜きに考えられません。
4.「ふれあいの森」はわたしたち「鉢ケ峯の自然を守る会」や多くの市民が待ち望んでいた里山保全、及び自然を楽しむ里山体験が実現できる所と確信しています。
 ・予定地を今後墓地等に転用するのでなく、次代に引き継ぐ恒久の自然の森として位置づけ、必要な措置をとってください。

 以上の要望について、4月末日までに文書にて回答してください。

以上

 回答の本文 

堺公整第32号平成13年4月27日

鉢ヶ峯の自然を守る会
代表清水俊雄様

堺市公園緑地部長

「ふれあいの森」整備計画についての要望書(回答)

 2001年4月17臼に提出のあった標記のことについて、下記のとおり回答します。

 記

 ふれあいの森は自然環境保全の方向で計画を進めていますので、提出していただきました要望書の趣旨に賛同できるものと考えます。整備事業費については現在未定で、今後具体的に検討していく中で明らかになる予定です。ご指摘のとおり計画策定にあたっては市民の参画が不可欠ですので、暫時広報等を通じてお知らせする予定です。