ふれあいの森計画に対する申し入れ

ふれあいの森について、行政と市民による検討会で話し合いがなされましたが、検討が不十分なものがあり、当会から申し入れ書を提出しました。以下は、その本文です。

2002年2月8日

堺市長 
 木原 敬介  様

鉢ヶ峯の自然を守る会
代表 清水 俊雄

「堺市(仮称)自然ふれあいの森計画」に対する申し入れ書

 昨年9月、当会から「管理運営に関する検討会」の場へ「自然ふれあいの森」への意見を提出しました。4回に亘る検討会において、当会の意見の一部は検討会の「課題の整理」の項目に表されていますが、検討が不十分なものがありますので、改めて堺市の考えを示されるよう申し入れます。また、同検討会から堺市長に提言されたことについての検討結果についてもお尋ねいたします。
 なお、本申し入れ書を事前に送付いたしますので、平成14年2月25日までに下記の(1)、(2)の申し入れ項目毎に可否等の理由を添えて文書にて回答されるようお願いいたします。

(1)   検討会の場を通じての当会の意見関係
1. 管理運営に関する検討会の開催回数と期間の設定は不十分である旨の意見を述べ、開催回数が1回増となりましたが、今年、設置を予定している「準備委員会」の位置付けを森の管理運営に関することに留めず、引き続き、森のレイアウト計画などの検討を行う場にしてください。
2. 検討委員会で協議された内容を市民に中間報告し、改めて市民・自然保護団体などの意見を取り入れる場(公聴会的なもの)の開催を求めたところ、残念ながら具体化されていません。そこで、堺市民の提案によってつくられる森として、さらにより多くの市民が愛着のわく森にするためにも、公募市民だけでなく、関心を持つ多くの市民が計画段階から意見を述べ、参加する機会を保障する場として、準備委員会の前に公聴会を開催してください。
3. 施設整備によって現況の自然環境が損なわれることでは「自然ふれいあいの森づくり」は本末転倒になることは自明のことです。森の小屋など、堺市が提示した施設計画は何ら変わっておらず、以下の点を踏まえ、森づくりを行うべきと考えていますが、市の考えを明らかにしてください。

@ 自然環境の保全や創出を最優先にした森づくりを進めるため、施設整備などで手を加える前に現況の自然環境調査を行うとともに、「自然ふれあいの森自然環境保全計画」を策定してください。

A 自然ふれあいの森予定地はオオタカをはじめとした猛禽類の生息地となっており環境省の「猛禽類の保護の進め方」に基づき、調査、調査結果の解析、保護対策、モニタリングを実施し、施設計画等にどう反映させるのか明らかにしてください。また、その関連で堺市が実施されているオオタカ生息調査の状況を明らかにしてください。なお、当会の調査でも本予定地は、オオタカの高利用域(採餌場所等)としての生息エリアになっていることを申し添えます。

B 行政側の既定の施設計画ではなく、@Aの調査、保全計画・保護対策を踏まえながら市民が主体的に森の管理運営活動を行うなかで、利用市民のニーズに応じて時間をかけた施設計画づくりにしてください。

C 駐車場は管理車両のみとし、アプローチは管理道に限定し、公園墓地の既設駐車場の利用や既設バス路線の延長により、大規模な駐車場整備やアプローチのための車道を設置しないようにしてください。

D 整備工事期間案は平成14年4月からの着工となっていますが、この間の市民参加による森づくりの検討期間が保障されていません。さらに@ABの点から十分な検討期間を設けるとともに、整備工事期間についても1年間という短期間ではなく、環境に与える影響をモニタリングしながら整備することが可能な期間設定をしてください。なお、申し入れに拘わらず早期着工、1年間の整備期間にする必要があるのであれば、その理由を明らかにしてください。

(2)  「管理運営に関する検討会」の提言関係
1. 市民参加型での準備委員会を真に市民参加とし、市民による森の管理運営に繋げるためにも、市としてこの間の検討結果を管理運営準備委員会に先立って当会をはじめ広く堺市民に明らかにし、意見を求めてください。
  2. 1の手続きを踏み、市民から管理運営以外のことで意見や具体の提案などが出された場合は、管理運営準備委員会の場でも検討してください。
3. 検討会から提言された以下のことについて堺市の対応を明らかにされたい。

@〈基本的な考え方〉自然環境の保全、配慮の項で「ふれあいの森周辺との連続性を踏まえつつ、生き物や地形等生態系に配慮して地区内の整備の方針を検討すること。」との提言を受けて、自然環境を保全し配慮した整備方針についてどのように検討をされたのか示してください。

A上記の項で、「自然環境の保全を前提に、保護(貴重種の保護)、活用(人の手を加えながら自然の機能を維持・増進)、復元(造成地等における自然の復元)の手法を行う中で、多様性を担保した整備を行うこと。」との提言を受けておられます。各施設計画(森の館、里山木道・散策浮床、各森の小屋等)は提言における「活用」を根拠にされていると判断されますが、各施設の役割が人の手を加えながら自然機能の維持・増進に当てはまるのか、また、自然機能の維持・増進に整合する具体の施設整備内容を示してください。

B上記の項で、「整備の程度については住民参加型の検討を継続し、施工段階で十分検討すること。」と提言されていますが、市民参加型の検討はどのようにして継続されるのか、また、施工のいつの段階で、どのような場で、どのような市民を対象に検討されるのか明らかにしてください。そのためには施工段階で施設計画の柔軟な見直しが求められると考えますが、どのように対応されるのか示してください。

C森の館の項で、「生物に対して影響の少ない規模、形態、素材、工法について検討すること。」と提言を受けて、具体の検討結果を示してください。

D里山木道・散策浮床の項で、「貴重種の保護や自然へのダメージを極力少なくするよう、土の道との併設やルートの選択、素材及工法についても配慮すること。」と提言されていますが、既定の計画をどのように変更されるのか示してください。

E駐車場の項で、「自然環境への負荷をできるだけ少なくするため、必要最小限のスペースとし、バス等公共交通機関との連携を考慮すること。」と提言され、また、備考欄に「パークアンドライド方式」とありますが、どのように検討されたのか示されたい。
 当会から提案しているように隣接の公園墓地内既設駐車場の柔軟な利用によって、自然環境への負荷軽減や必要最小限のスペース確保にもなると考えますが、提言を受けた中で貴市の考えを示してください。

F湿地の項で、「基盤整備として農作業等の活動プログラムに適応した浅い水域の湿地や様々な水深の湿地を検討すること。」と提言されていますが、当会から提案している森と農のつながりを活かした計画づくりとして水田の復元による体験型農業の場づくりと関連して、どのような検討をされたのか示してください。

G施工方法の項で、「施工段階において、現場の状況に応じて適宜変更可能な施工方法を検討すること。」との提言を受けて、市民参加の下での検討システムや工事日程や工事工程の変更が生じることを、どのように保障するのかを示してください。 

以上