2001年度のまとめと2002年度の方針について

 中央尾根間の棚田、丘陵が重機により破壊された年となりました。
 行政からは以前より情報は入ってくるようになりましたが、開発を止めるまでの動きは出来ず、よりダメージを減らすという内容の働きかけになりました。
 行政、他団体とのパートナーシップ、連携が現実化する中で、これまで以上に私たちの活動の基本方針が問われています。状況に流されるのでなく、状況を切り開き、新たな流れを創出していく力量が求められています。また行政との話し合いの場が多く持たれていますが、われわれのスタンス、考え方を明確にし、行政への働きかけを目的意識的に追求する必要があります。
 行政との協議は密室で行なわれてしまう傾向があります。私たちは意識して適切な時期に情報を会員、一般市民に提供し、問題提起していく必要があります。市民に支持されない活動では、開発者また行政に影響を与えることは出来ません。そして開発から自然を守るためのネットワークを今以上に大きくし、幅広い市民の声を背景に残されたわずかな堺市の里山環境の保全を実現したいと考えます。
 ふれあいの森という発想が堺市から生まれたことは私たちの活動の成果として評価できます。しかし、その内容、検討方式においては問題も多く、より係わりを強め、里山の自然環境保全の実現の場として市民と共に取組んでいきたいと考えます。

 以下個別の問題について今年取組んだことと2002年度の課題=方針について述べます。

 

東西道路延伸
 

ハーベストの丘から中央尾根への延伸。
 メダカ救出を行なった後、延伸に伴う実施設計図が10月示される。工事の規模はわれわれの想定を超え、棚田は全滅。コンクリート張りとなる。課題 行政との話し合いはかなり精力的に行なったつもりであったが、結果的に決定段階でしか工事内容を知ることが出来なかった。今後もっと多様な方法での情報収集に努めることが課題。
保全協会を通じて大阪府農政室、堺市と中央道以東の東西道路(農道)建設についての話し合い。
 公園墓地渋滞解消のための道路から、酪農団地振興へと建設の目的が変わっている。建設反対運動をしても阻止できる見込がないため、路線、工法の見直しにより、環境へのダメージを減らすために話し合いを継続することにした。 公園墓地内へのルート変更を主張するが、公園墓地の使用用途に照らし堺市公園整備課の了解を得られず。できるだけ北側よりのルートを取ることとなった。 決定までの段階で本会との協議の場が設定されたことは「鉢ケ峯の自然を守る会」が無視できない存在として認知されたことであり、行政の意志決定過程への市民関与として一歩前進といえる。しかし、実際上は建設が動かしがたい既定のものとして進行している段階での協議であり、いわばわれわれに対して追認を強いる=自然保護団体のお墨付きを求める場であるともいえる。
現状認識 今回のこのようなスタンスをわれわれが取らざるを得なかったこと、開発阻止が出来なかったことは、われわれの主体的力量の程度に依存している。
現状認識 今回のこのようなスタンスをわれわれが取らざるを得なかったこと、開発阻止が出来なかったことは、われわれの主体的力量の程度に依存している。
反 省 東西道路建設についての行政へのアプローチをもっと積極的に行ない、情報収集を行ない、環境破壊を阻止する手段を執るべきであった。
注 意 御用自然保護団体にならないよう、われわれの自然保護のスタンスを内外に明らかにすること。
課 題  政策提案を行政に反映、実行させるだけの力を持つこと。

 

自然ふれあいの森 オオタカ尾根北半分を対象にした堺市による構想
 
 検討委員会(構想内容を検討する)
 管理運営準備委員会(管理運営のあり方について検討する)
 本会からは清水代表が検討委員会に委員として参加すると共に、9月に意見書を提出。内容は14項目に渡る。「協議内容を中間段階で公開し改めて市民の意見を聞くこと、オオタカが棲み続けられる森とすること、施設は最低限にし自然環境への負荷を減らすこと、駐車場は作らないこと、整備は時間をかけお金をかけない森作りをすること」などである。市民参加による公募委員による検討、立案を建前にしており、そのこと自体は従来の堺市のスタンスからは一歩前進と評価できるが、検討委員会においては堺市が描いた青写真の元、誘導的に進捗し、市民委員が協議、決定できる時間も運営も充分でなかった。それを事務局がまとめて管理運営準備委員会の資料としているが、指摘した点を充分に反映できていない。(但し段階的整備など、われわれの指摘によって変わった評価すべき点もあり)課題については管理運営準備委員会での検討に委ねるといえうのが堺市の考え方。
 管理運営準備委員会には本会から清水、酒井が参加。
 管理運営準備委員会においては予定地がどのような自然環境の元にあり、どのような位置づけで利活用、保全しようとしているのかについて市民委員が充分理解できていない段階で各自絵を描かそうとしており、委員の理解を深める企画を行なう必要があることを準備委員会で話すと共に、別に会議を設定して公園整備課に要請した。準備委員会の会議運営の仕方が堺市有数の自然が残る場所をどう守り残すかという課題と合致しておらず、一般的な利活用のイメージ作りとなっているという問題がある。
現状認識 堺市は本会との協議を拒否しないものの、その提案等についての尊重はしていない。→本会の力量不足。
課 題 堺市がこのやり方を取るのであれば、もっと積極的に市民委員として名をあげることが必要であった。継続して鉢ケ峯の自然を守る会として意見を出し続けることが必要。
天濃池ビオトープ 大阪府が企画している市民と自然のふれあいの場作り事業
 
 一年間通じての生物調査が本会の意見を取入れ実施される。全般に生物相が少ないが堰堤に希少植物が見つかる。ビオトープの必要性についての疑問(主に費用対効果)から府との協議を中止することも検討したが、府のビオトープについての考え方が野鳥観察小屋作りから、浅瀬を作り生き物の住みやすい環境作りへとシフトしたことにより、協議、協力を継続することとなる。府のプランの中には堰堤の崩れを補強するための改修(土盛り)が入っているが、現地の希少種を含む植生に影響するため、その規模について見直すよう要望している。
課 題 継続して協議の場に参加し、必要な意見を反映させることにより、多様な生き物が棲む環境の創出を図ると共に、利用についても会として検討する。
オオタカの生息域保全
 
 南部丘陵におけるオオタカの生息状況に対して、東西道路及びふれあいの森工事が与える影響について懸念される。環境保全部、公園整備課(ふれあいの森)、農業土木課(東西道路)との話し合いを現在継続中。オオタカの存在の公表、情報の扱いについて本会の中でも意見が分かれる。堺市環境保全部は堺市各部局及び外部に対して報道管制を敷いているがオオタカの保全についての情報、問題共有という意味ではそれが障害になり、結果的に生息環境の開発による悪化に対して有効な手を打てていないのが実情。堺市は生息状況について委託調査をしており、5月27日にその結果についての協議が為される。この件については「地球村」が独自の取り組みとして市にアプローチしている。
課 題 東西道路の延長工事がオオタカの保全に与える影響についての認識が本会としても充分論議されていなかった。とりわけ中央尾根以東の工事及びふれあいの森がオオタカに与える影響について改めて他の事例、情報を集め、適切な要望府と市に行なう必要がある。
別所湿地の復元(カスミサンショウウオ)
 2001年5月の湿地作り作業後初めてのカスミサンショウウオの産卵時期を迎えた。湿地において2対の卵塊が確認される。但し他の場所では見られなかった。従って全般的な周辺の生息環境としては悪化し、個体数は2年前と比べ、激減しており、継続した調査が必要。今後個体数回復のために何が出来るかを大阪府大夏原助教授、大和開発観光と検討したい。
 
ネットワーク、他団体との協力
 
東西道路 大阪自然環境保全協会 大阪府 堺市
天濃池ビオトープ 大阪府    
ふれあいの森 堺市    
オオタカ保全 堺市 大和開発観光 日本野鳥の会大阪支部
里山管理、ゴミ拾い
ドングリまつり
みどりの写真展
堺市
大阪自然環境保全協会
大阪自然環境保全協会
大阪府
エスコープ大阪
 
子ども自然探検 エスコープ大阪    

ネットワークは2001年度は休止状態でした。
 2002年度は下記の行事について特に児童等の環境教育についてのパートナーシップを各団体(大阪自然環境保全協会、関西トンボ談話会、エスコープ大阪、日本野鳥の会大阪支部、堺野鳥の会、堺市等)と強化したい。

  活 動 内 容
4月 里山一斉調査
5月  
6月 ホタル観察会
7月 トンボ釣り大会(自然の中での伝承遊びの継承)
8月 夏の虫観察会
9月  
10月 ザリガニ釣り、 ドングリまつり(自然素材使った遊びと工作)
11月 子ども自然探検(水生生物と水質調査)
12月  

 

里山管理
 堺市職員研修への協力と第2豊田川沿いの作業を行なう。今年は2001年度 以上の作業を行なう。
活動の充実
 観察会における入会の呼びかけなどで会員を増強する。またスタッフとして参加するメンバーを新規に増やすことを目標にする。各行事において参加者間の意見交換の場を設けるなど、コミュニケーションと参加意識を高め、参加して良かったと思 える場作りに努める。
運営体制とNS会議
 NS会議の参加者も固定、少人数になりがち。活気ある会議運営を行なう。会費収入が機関誌の郵送料と印刷費でなくなってしまい、交通費等は活動の活発化により増えているので、構造的に毎年4〜6万円の赤字を繰越金の取り崩しで賄っている。この構造を改善するため、会費を現行1000円から1500円に値上げする。
機関誌 安定した発行を追求。
ホームページ
 管理者に随時更新を行なってもらうために、必要な情報をタイムリーに提供する必要がある。何をいつ載せるかについてNS会議にて決めることが必要。