鉢ヶ峯を見学しての感想

内河池まわり航空写真(クリックすると大きい画像を開きます)少し以前のことなんですが、自然観察インストラクター養成講座(大阪自然環境保全協会主催)で鉢ヶ峯の里山の実情を紹介しました。私米道が講師で主に東西道路の開発に関わる話と開発される道路及びその周辺をどれだけ元の形に復元していくかなど行政に要望していることをはなしながら、植物やホタルのことを中西伸氏及び手島司氏にお願いして解説していただきました。その時の感想を相川さんがまとめておられるので紹介します。またここに添付の地図は夏原由博大阪府大助教授にお借りしたものをコピーしたものです。航空写真でみると開発の様子が良くわかります。

米道綱夫

2003年5月11日(日)・鉢ヶ峯誌

インストラクター養成講座13期生 相川理恵子

 あいにくの雨。泉北高速・泉ヶ丘駅からバスに乗り、鉢ヶ峯に着いたとき、傘無しではおれない状態でした。もっとも、風がないだけましだったかもしれませんが。
 私たち一行20数名は、講師の米道さんに連れられ、ビオトープを考える団体に先を越されてバス停から遠い方の休憩所まで歩かなければならないという「ケチ」がつきつつも、いったん屋根のある休憩所に集合。土地勘のない私にとっては、鉢ヶ峯の里山を観察するということで現地にやっと到着したと思ったら、立派な道路と盛りの過ぎたツツジの植え込みが続く雨の墓地公園を、「安息所」を求めていきなり歩くということになり、何とも奇妙な始まりでした。
 しきり直しです。雨仕様に身支度を整え、長時間の雨の中での移動は困難であろうことから、講義の時間を少し長めにということで本日の講座が始まりました。そもそも里山とは何であるか。
 米道さんは、私たちに質問された際、受講生の中での「里山」という言葉の認知度の高さにとりあえず安心しておられましたが、これは、里山保全運動の普及もあるでしょうが、大ヒットアニメ「となりの卜トロ」に描かれる景色の認知度が高いことによるのではないかとも思いました。
ともかく、航空写真で現地の置かれている状況、すなわち鉢ヶ峯周囲にはゴルフ場、農業公園・ハーベストの丘があることを知った上で、2グループに分かれいざ行動開始。例によって、目的地までの道のりが発見の連続で遅々として進まず。新緑の雨にうたれたケヤキの葉に鈴なりの虫ぶ、各種よりどりみどりの毛虫、エトセトラ。ちなみに後藤さんはナメクジを愛おしそうに「ナメちゃん」と発声しておられました。
 やっとのことで山らしき所に分け入り、急な坂道を下って視界が開けた場所に着いたと思えば、そこは東西道路の開発現場でした。10m道路の建設であるということで、ゴーサインか出されたものの、高速道路とは違って橋脚を持つ道路ではなく盛り土であるために、むき出しの赤土の大山に他ならない悲劇的な状態。ため池はなくなり、棚田は半分に減り、何とも虚しさを感じる開発現場。米道さんのお話しでは、業者がその山の斜面部分には何らかの植物の種を散布して土砂流出防止を狙うというところを、周囲に自生するめずらしい種のイヌフグリを根付かせたいと交渉しているとのことでした。地権者と行政、開発業者それぞれの思惑に、自然保護団体がどこまでアプローチできるか。厳しい現実と草の根運動の一端をほんの少しお聞きできました。
一方、午後からはゲンジボタルか生息する第2豊田川の観察が印象的でした。3面コンクリート張りのごくありふれた川。しかし川底に堆積する土砂のある場所にカワニナが生息しており、毎年そこでホタルの観察会を行っているとのこと。それもヘイケボタルより澄んだ水辺を好むゲンジボタルを。治水工事が施された川であっても、水質がよく、土砂の堆積・草の繁茂など生物が生き延びるチャンスが残っておりさえすれば、人間の居住区に間近なこんな場所でもホタルを見ることが出来るのだなという喜びを感じた場面でした。また、堺市の職員と実験的にシリブカガシの木の生えているわずかな面積の下草を刈り、刈った草は昆虫類繁殖の温床として一所に集め、太陽光の入る山へと手を入れてゆく試みをしている場所の観察も行いました。
 今回の講座では、私有地と公有地が入り交じる里山の現状維持はやはり厳しいということを再確認しました。時代の流れの中で、開発を免れることかできないのであれば、せめて回復するチャンスを与えること、しかしそのような発想が生じるに背景には、開発主体に自然豊かな環境の素晴らしさを大切に思う心がなければなりません。ここに自然環境保護の啓蒙活動の大切さがあることが分かります。その活動方法として残された自然環境をいかに「価値ある場所に仕立てる」か。夢のない割り切りすぎた表現かもしれませんが1つの考え方ではないでしょうか。ゴルフ場や農業公園を遠目に見ながら思ったことです。
 最後に、私はクリスチャンではありませんが、墓地公園内のある墓石に刻まれた文言に感じ入ったことを付け加えます。「わたしたちの国籍は、天国である」とありました。自然開発についても、私たらのパーティション発想が、バランスを欠く開発の元凶と言えるのではないでしょうか。
自然の素晴らしさを体感したというより、少し考え込んだ観察会でした。
第2豊田川生き延びるチャンスさえあれば、、、、