東西道路建設に関して、意見書を提出しました

大阪府建設事業評価委員会で再審議

大阪府建設事業評価委員会が改めて東西道路(府事業区間)に関して府民意見を募集しており、本会として次の意見書を提出しました。
12月24日に開催された第10回の評価委員会で東西道路は安威川ダム建設事業などとともに「別途意見具申を行うこととし、引き続き審議を行っていくこととする。」という審議結果になりました。
以下に、本会から提出した意見書を掲載します。

<<<以下意見書の本文>>>

 

2003年12月9日

「交流型集落道堺南部地区(いわゆる東西道路)」についての意見

大阪府建設事業評価委員会 様

鉢ヶ峯の自然を守る会

 建設事業評価委員会の委員各位におかれては、真摯なご審議を重ねておられることに敬意を表します。
 本「東西道路」が計画されている堺市鉢ヶ峯のエリアは、堺市のみならず大阪府でも有数の里山であり豊かな自然生態系が育まれていることは堺市の調査や市民参加のもとで行われた「いきもの調査」でも明らかです。この里山の自然環境は後世に残すべき「市民遺産」、「府民遺産」であると思われます。しかし、100haにも満たないこの里山は、一旦、生態系に十分な配慮を怠った開発が行われれば、生き物の生息地は奪われ、景観も消失し、単なる荒れた山林という「負の遺産」とも成りかねない、脆い里山でもあります。
 鉢ヶ峯の里山の真価は、いつに種の多様性にあります。起伏に富んだ地形で尾根や谷が入り組み、小さな尾根一つ越えても植物相は異なって個性に富んでいます。地形の変化ばかりでなく、長年培われてきた里山の棚田やため池、用水路といった生物の生息空間が今に残されていてトンボの種を例にとっても71種を数えるほどの貴重な生息地です。
 そうした自然の中で、開発の影響により最もダメージを受けやすいと思われるのは、谷筋と谷につながるため池や小河川、旧の田んぼといった湿り気のある場所です。工事重機が入り樹木が伐採され、濁水や土砂の流入と乾燥にさらされると壊滅状態になります。
現在、鉢ヶ峯の谷津田(東西道路/堺市造成地区間)でも両生類や爬虫類、水生昆虫類の棲み家が失われつつあるのを目にしているところです。開発の際に計られる「自然環境影響調査」では、一般に環境の指標となる生物やレッドデータ記載種が評価の対象となり、普通種の種類と数量が挙げられることはありませんが、わたし達が思う「豊かな自然」とは希少種が存在する貴重な自然という視点とともに、普通種が多種、多様にあることにあります。それが鉢ヶ峯の真価です。
 本東西道路計画地では、墓地南側の尾根筋を通すよう予定されていますが、予定地の南斜面下の急峻な谷が、鉢ヶ峯では貴重なビオトープとなっています。ハンノキやスギの高木とつる植物で覆われた谷は周年、空中湿度が保たれ谷底は常にぬかっていて、それが地下水となって小さなため池に流れ込んでいます。独特の植物相が見られ、きのこやシダ類(わたし達の調査で22種)の宝庫になっています。又、カスミサンショウウオやシュレーゲルアオガエル、サラサヤンマの産卵場所になっていて、他に替えがたい特有の自然が残されている所です。この谷が東西道路の造成による濁水や土砂の流入と乾燥化にさらされ、地下水に変動をきたし、林床が変貌するとどのように自然が衰退するのか、大変、危惧するところです。特に「RDB」で地域固体群に挙げられているカスミサンショウウオについては危機感を募らせています。狭い範囲でしか生息できない生き物にとっては重大な問題です。
 本東西道路に関する府民意見に当たって新規事業評価調書が示されており、このことに関して以下の意見を申し述べます。

1. 同調書の自然環境等への影響と対策欄に「環境アセスに準じた資料整理を行った。以下、略」とありますが、11月4日の「第5回(仮称)堺南部丘陵の地域振興と自然環境を考える会」で「生態系に及ぼす影響予測〜評価一覧表(以下、「一覧表」という。)が大阪府から示されただけで東西道路築造に関する自然環境等の保全措置の検討はされていません。
2. 上記同欄で「本事業区域でこれまでに実施された環境調査等を基に…。」とありますが、同一覧表を見る限りでは、影響予測において墓地南側の谷筋とその周辺の詳細な生物調査や工事予定地の集水域の水量測定が必要です。例えばカスミサンショウウオの生息頭数を含む調査や移動実態把握などの事前調査がどこまで行われたか明らかにされておらず、同調書でも述べられている「適切な保全措置」を行う場合、新たな事前調査が求められます。
3. 同一覧表に「影響予測」、「予測に応じた保全措置」、「保全措置の具体策」、「予測や措置に対する不確実性」云々が列挙されています。例えば、造成工事による濁水の処理法や谷の乾燥化の防止など、「保全措置の具体策」に抽象的な点が多く、さらに「予測や措置に対する不確実性」として保全対応を避けている項目が随所に見られるなど、どこまで実効性のある措置がなされ生態系の保全が担保されるかの確証を得ません。
 貴建設事業評価委員会の事前評価の一つに「自然環境等への影響と対策」があります。今年1月10日付の貴委員会の「本東西道路に対する意見具申」において「環境負荷を最小限に止めることが可能か不確定な要因もある」、「今後ともモニタリング調査を継続すること。その調査結果を踏まえて構造、工法、線形を変更するなど、適切な事業管理に努めること。」などが述べられています。今後、当会として大阪府が予定する道路計画における環境等への影響と対策について意見等を提示し話し合いを行う考えです。なお、それら対策が生き物の生息環境に十分な保全に至らず、生態系に大きな打撃を与えると判断される場合の「自然環境負荷の回避」と言う視点、保全対策に莫大な費用がかかると判断される場合の「事業コストの縮減」という点から、当会が当初から提案している公園墓地の法面などへの線形の変更を求めることがあり得ることを申し添えます。

 以上、貴建設事業評価委員会の各委員には当会の意見をご理解いただき、適切なご審議をお願い申し上げます。