東西道路建設について(経過報告)

野口 隆司

行政との話し合い

東西道路は、今から10年程前に鉢ヶ峯のゴルフ場開発計画を認めなかった代わりに堺市がゴルフ場計画地を対象に策定した「ゆとりとふれあいの場構想」でハーベストの丘建設とともに先導事業の1つとして位置づけた道路建設計画(ハーベストの丘〜堺市公園墓地方面を繋ぐ)です。当初、東西道路は泉北2号線からハーベストの丘を通り公園墓地へ行くための墓参道として計画されましたが、大阪府事業として堺酪農団地のアクセス道路として公園墓地からさらに堺酪農団地へ延伸する目的に変更されていることが明らかになり、大阪府、堺市に改めて道路ルート変更の申し入れを行い、建設による自然環境や生態系への環境負荷対策を追及してきました。
※概要は本会ホームページ参照。 

大阪府建設事業評価委員会の意見

 その後、H14年9月、公共事業の是非を審議する「大阪府建設事業評価委員会」に東西道路(大阪府事業区間/園墓地〜堺酪農団地)が付議されました。府民意見募集に当たって、本会会員の有志や本会名で同委員会に対して東西道路建設による自然環境への悪影響を中心に意見書を提出しました。9回にわたる審議を経て2003年1月に同委員会から大阪府に対して次の意見具申が出されました。

≪2003年1月段階の意見具申の要旨≫
〔必要性・事業効果〕
・東西道路事業は、都市住民との交流による地域振興を図る役割を果たす。
・あわせて、東西道路事業は里山を中心に農林業を通じて維持・保全されてきた自然環境を、将来にわたり良好に管理するうえで重要な役割を果たす。
・東西道路事業は、堺南部丘陵地域のみならず隣接する河内長野市、和泉市等の広域的な拠点施設のネットワークの形成に寄与することが期待される。
・あわせて、東西道路事業は堺酪農団地の活性化や府民交流を目的とした「酪農団地活性化基本計画」の実現に寄与することが期待される。
・東西道路事業は本地域の東西軸が整備されることにより、上神谷地域の生活利便が向上するとともに、副次的効果として「ハーベストの丘」周辺道路渋滞緩和につながることが期待される。
  ↓

東西道路事業を活用して、地域振興のビジョンの実現を図ることが効果的・効率的であり、全体として事業実施の必要性は認める。しかし、東西道路事業を通じて実施される農業振興、地域振興の取組みと効果などの緊急性は十分な確認に至っていない。
 このため、次の条件を付して事業手続きに入ることを認める。
〔条件〕

 (1)

農業振興・地域振興の実現に向けた取組み

 @

酪農団地の活性化は、「堺酪農団地活性化基本計画」に基づき、生産性の向上と地域交流の推進が図れるよう、国庫補助制度を活用し、府・市・酪農組合が協同して実現に努めること。

 A

ハーベストの丘は、農と都市住民の交流に一定効果があると認めるが、今後とも地域振興の核施設として持続・発展していくかの推移の検証が必要であり、関係市とも連携して拠点施設の広域交流のネットワーク化を推進すること。

 (2)

自然環境への配慮

 

里山、里地の管理・保全の仕方やあり方で立場を異にする意見がある。寄せられた意見に対して、環境負荷を最小限に止めることが可能か不確定な要因もある。

 @

今後ともモニタリング調査等を継続すること。

 A

その調査結果を踏まえて構造・工法・線形を変更するなど、適切な事業管理に努めること。

 B

事業実施中はもちろん、完成後の管理段階も、地元等関係者が自然環境への配慮について十分協議・意見交換しながら連携・協働していくことが可能となる仕組みづくりを進めること。

今後、(1)(2)の付帯条件が適切に担保されるように最前の努力を払い、その達成度を検証すること。

モニタリング調査を継続して行うことにより最終的に整備内容を精査し、全体として事業コストの縮減を図ること。

今後、所定の成果がまとまったと考えられる段階で東西道路事業のさらなる展開の是非について改めて検討する。

大阪府の対応と「(仮称)堺南部丘陵の自然環境を考える会」の発足

同意具申を受けて、大阪府は、同年1月27日に以下の方針を示し、大阪府から本会に鉢ヶ峯自治会などの地元団体や(財)大阪自然環境保全協会、府・市などで構成予定の「(仮称)堺南部丘陵の自然環境を考える会」への参加申し入れがありました。東西道路建設の必要性やあり方を含め、この間、鉢ヶ峯地域の里山の保全のあり方や仕組みづくりについて地元団体と話し合う場がないことから参加に応じることを決め、2003年7月からこれまで6回の会合(※)が開かれています。 

※会議録は大阪府泉州農と緑の総合事務所HPを参照してください。同会は「堺南部丘陵の地域振興と自然環境を考える会」に名称を変更。

(大阪府の対応方針概要)

@ 農業振興、地域振興について

関係市とも連携した農業祭、ウォーキングイベント等の取組み等を通じて、ハーベストの丘等の拠点施設との広域ネットワーク化による農と都市住民の交流をさらに進める。

堺酪農団地は、府、市、堺酪農組合で「(仮称)堺酪農団地活性化推進協議会」を組織し、新たな生産方式の導入等による生産性の向上、育成牧場を活用した地域交流の促進を行う。

A 自然環境への配慮について
将来の地域の環境保全、管理のあり方も併せ、地元等関係者が協議・意見交換し連携・協働していくため、「(仮称)堺南部丘陵の自然環境を考える会」を発足。
今後もモニタリング調査等を継続し、その結果も踏まえ、必要であれば東西道路の構造、工法、線形を変更するなど、環境負荷を最小限にするよう努力。
将来の地域の環境保全、管理のあり方も併せ、地元等関係者が協議・意見交換し連携・協働していくため「(仮称)堺南部丘陵の自然環境を考える会」をつくり、府がコーディネートする。

@Aについて所定の成果がまとまったと判断した段階で改めて建設事業評価委員会に報告。

大阪府建設事業評価委員会で再審議

 2003年11月開催の第6回考える会の会合で大阪府から同評価委員会にこの間の進捗を報告することが示され、評価委員会が改めて東西道路(府事業区間)に対する府民意見を募集しており、本会として次の意見書を提出しました。12月24日に開催された第10回大阪府建設事業評価委員会で東西道路は安威川ダム建設事業などとともに「別途意見具申を行うこととし、引き続き審議を行っていくこととする。」という審議結果になりました。
その間、前後して東西道路建設に密接に関係する堺酪農団地敷地での産業廃棄物の不法投棄事件、牛屎尿の不法垂れ流し事件、さらに30年間に及ぶ死牛の不法埋立て事件がマスコミで大きく報道され、市会議員や堺酪農組合の刑事事件にまで発展しました。
 しかし、2004年2月26日(木)に開催された、第13回大阪府建設事業評価委員会で、東西道路に関する意見具申がなされ、以下の理由により「事業実施は妥当」と判断されました。

@ 生活基盤整備が遅れる堺南部丘陵地域の利便・安全性向上・都市農村交流・農業施設相互連携等の農業振興地域の活性化及び渋滞緩和等の副次的効果から総合的に判断して事業の必要性を確認した。
A 準環境アセスメントにより生態系の環境評価の事前予測、適切な保全措置、必要な事後調査を行い、環境影響の最小限の軽減の取組みを進めいているとの説明を受けた。
B 昨年度の本委員会意見具申に基づき、(仮称)南部丘陵の地域振興と自然環境を考える会を立ち上げ協議し、引き続き地域振興と自然環境が共存する取組みを進める予定を確認した。
C 自然環境への配慮に関し、モニタリング調査結果に基づくワークショップの取組みと府の具体策を今後とも本委員会に報告のこと。
D 交流型農業などの農業振興がどのように発展しているか事後検証し本委員会に報告のこと。
E 堺酪農団地に発生した環境問題はその生産活動が地域の自然環境や生活環境に大きく関わっていることから府は「堺酪農団地活性化推進協議会」等で堺市との連携に努め今後とも適切に調整に取り組むべきであろう。

今後、東西道路建設問題については、事業の実施が前提とされ、どのような設計や工事の内容とするのか、また、判断した内容の事後検証などが中心になると思われますが、その進捗についてはまだまだ流動的であり、本会として鉢ヶ峯の自然保全に向けた取り組みを継続していきます。