第二豊田川 ホタルの生息環境調査 報告

(報告:酒井和子)

はじめに ここ数年にわたって調査してきたホタルのルートセンサス調査(生息数調査)で、ホタルの減少が著しくなり、ホタルの保護・保全が急務になってきました。生息地の第二豊田川の環境悪化やカワニナの減少も、もう見過ごせない状況になり、何とか減少化に歯止めをかけたい、できれば回復・増加に転じさせたいとの思いもあり、専門家の診断を仰ぐことになりました。  幸い、「ふれあいの森」の調査に携わっておられる福田壌嗣さんの紹介で、ホタルなど自然生態修復工学がご専門の和歌山大学教授の養父志乃夫先生にお願いすることができ、下記の通り現地を視察の上、的確なアドバイスをいただくことができました。
日 時 2004年10月2日(土)10:00〜12:30 雨
アドバイザー 養父志乃夫先生 著書『自然生態修復工学入門』農文協出版ほか
参加者 鉢ヶ峯の自然を守る会=野口隆司、岸田元男、米道綱夫、 清水俊雄、仁木梅子、田中多美子、酒井和子
ふれあいの森委員会=福田壌嗣、坂東龍二
コース 合流点より下流の法道寺川〜ポイント8〜ポイント1
各ポイントでのアドバイス
<法道寺川の状況>

カナムグラが繁茂していることから見て窒素分が多く、川は汚れている。これではホタルの生息は無理。 

・この三面張の護岸は50年に一度の洪水を予想。その洪水で川底が攪乱され、自然をコントロールし、食物連鎖のバランスを保っている。台風シーズン前に繁茂している雑草を刈り、川を暴れさせると良い。 

水の流れが直線化しているが、蛇行させて瀬と淵を作るのが望ましい。 
 <第二豊田川の合流点付近 ポイント7> 

林が茂って川面が暗く、川底も土砂がたまりすぎている。川底に光が入らない。→コケが育たない。→コケを食べるカワニナが育たない。 

暗いところを好むミルンヤンマのヤゴがいたことでも、川の状況が分かる。この暗さではオニヤンマも限界だろう。川を覆っている高木を払う必要がある。ただしチェーンソーや草刈りは資格を持った人にやってもらうこと。光が入るようになれは、カワニナも増える。 

カワニナは大きいものばかりがいるよりも、大(3cm位)、中(1.5cm位)、小(それ以下)と混ざっている方が、ホタルの幼虫が成長に見合って食べられるのでよい。ホタルは幼虫から蛹になるまでにカワニナを20個食べるという。  
<ホタル橋の下流と上流 ポイント5と4>

・「ザリガニ釣り」を行うため川底のヨシを刈り取ったので、川面が明るくなっている。こういう状態が良い。ただし土砂が30〜50cm堆積し、段差ができているので、この段差をならして緩傾斜にする方がよい(段差を全部無くす必要はない)。

ツルヨシが繁茂して川底が見えない所もあるが、ツルヨシは年に2回、梅雨前と台風シーズン前に刈り、草も土砂も大水でならすようにして、川面を明るくさせるようにする。
 <ポイント4> 

3面張りのコンクリート底がむき出しになっている所があるが、土嚢を積むか、大きめの石を横一列、または斜めに並べて”堰”を作り、土砂や落ち葉がたまるようにする。
<ポイント2>

2004年6月にゲンジボタルが多く発生した地点は、道沿いからはブッシュに見えるが川底は明るい。良好な状態である。 

クロマドボタルが湿った林の下草辺りでよく見られるが、これも調査の対象として続けた方がよい。 
<ポイント1> 

勾玉の田んぼにモノアラガイがたくさいるので、冬も田に水を張ったままにしておくと、ヘイケボタルがたくさん発生する。
診断と対策 

1.

環境はかなり悪化しており、危機的状況である。このままではホタルはさらに減少するものと思われる。 

2.

ホタルを増やすというより、まずはカワニナを増やすことが大事。カワニナが増えればホタルも増える。 
3. 川の中のツルヨシなどの草刈りをする。年2回、梅雨前と台風前に行い、大水で川底を洗い流すようにして(川を暴れさせて)川面を明るくする。また流れを直線から蛇行に変え、瀬と淵を作る。川底に溜まった土砂の段差を緩やかにする。川底がむき出しの所は、土嚢などで堰を作り、土砂がたまりやすくする。岸辺の高木も払って川に光が入るようにする。川底のコケを増やし、カワニナを増やす。 
4. 堺市や大阪府にホタルの保護・保全を要望するほか、例えばイオン環境財団などから助成を受けるなどして保全活動をしたらどうか。
終わりに 
雨の中、またお忙しい中、養父先生には岬町からいらしていただきました。ありがとうございました。調査にはほか9人が参加、雨にも負けず第二豊田川沿いを見てまわりました。診断は受けたものの、ホタルの回復は道遙か・・・。果たしてボランティアの手で作業できるのだろうか、と気がかりです。

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