2005年「鉢ヶ峯・ホタル調査」報告

報告/酒井和子

はじめに
2000年から第二豊田川沿いでホタルのルートセンサス調査を行ってきましたが、数年前からホタルの生息環境が悪化していることに気がつきました。川沿いの道で定期的に行われてきた草刈りがなされなくなったこと、周辺の林や廃田が放置され木も草も繁りすぎていること、川底には土砂が堆積しツルヨシが繁茂していることなどです。カワニナの数も減ってきました。果たしてこの予測は当たりホタルが減少。01年1166頭、02年1296頭、03年1032頭と6月の1ヶ月の総数が1000頭を超えていたものが、04年には588頭と激減してしまいました。特に「ホタル橋」前後のポイントが半減して、乱舞も見られなくなりました。
手をこまねいてばかりはいられなくなり、04年10月に自然生態修復工学の専門家である和歌山大学の養父志乃夫教授に視察していただき、アドバイスを受けました。05年1月には大阪府・堺市の関係部署の方々と共に生息環境復元のレクチャーも受けました。それに従い05年6月にホタル橋上流部の川底と管理道路を200mにわたって大々的に草刈りをしました。「川底をあばれさせて土砂と繁茂している草を排除し、川底に光りを入れること。とにかくカワニナの数を増やすこと」ホタルを呼び戻す方策への実践に取りかかりました。作業は継続しますが、その結果がみられるのは2,3年先。「ホタル橋」の名を甦えらせる努力は、果たして実るでしょうか。
2005年の特徴
例年なら5月末から予備調査を始めなければならないほど、ホタルの発生が早まっていましたが、05年は春先から草木の花も遅れて咲くほどに気温があがらず、大阪狭山市のヒメボタルも発生が遅れ気味となっていました(ヒメボタルの方がゲンジボタルより2週間ほど早い)。第2週と3週に開催される「ホタルの観察会」は今年は4日(土)と11日(土)に行われましたが、この発生の遅れと発生数の減少で皆さん、「ホタルの乱舞」を目にすることはできませんでした。
特徴としては、<記録>から拾い上げると、

1.

1日のカウント数は30頭〜60頭にとどまる
1ポイント+湿地の2ヵ所が調査地として増えたにもかかわらず、頭数は少なかった。最大数は16日151頭(ゲンジ+へイケ)だった。
ホタル橋付近では例年の35%程度の発生数で、一番多い日でも24頭。寂しい限りだった。
2. 法道寺川下流を調査地「No.9」として加えた
3年前に「堺ふれあいの森」のエントランスが造成され、法道寺川下流が開けことにより、ホタルが多数発生。今回から調査地に加えカウントすることにした。ゲンジが大量に発生。わずかだがヘイケも出ている。合計191頭をカウント、全体の17%を占めた。これだけ増えたのは、昨年の数回にわたる増水でホタルの幼虫が流されたとの見方もあったが、2年前から増えてきているので要因は複数あると思われる。
堺市納骨堂前からすぐの所なので気軽な見物コースとなり、ロコミでどんどん客が増え、“新名所”は大いに賑わった。ホタルを持ち帰る人もいたようだし、新墓地の夜行灯がホタルの交尾に差し支えるのではないかとの懸念もあるが、“新名所”は定着しそうな気配である。
3. 湿地に90頭! 新たな生息地になっている
04年に初発生し、8頭をカウントした第二豊田川の突堤より上流(泉ヶ丘CCの北側)の湿地で、本年はおよそ90頭をカウントした。激増である。上流に位置するので昨年の増水で流されて増えたとは考えにくい。何かでカワニナが増え、飛翔力のあるホタルが棲み着いたのだろう。崖地で闇が深く、遠目にピカッリピカッリと飛び交う様が美しく、今年の見所となった。
このポイントNo.1は小さなため池と田んぼという環境が設定されていたので、湿地という全く異なる環境を考えると、今後は<ポイントNo.0>として調査。経過を見た方がよいと思われる。

4.

600頭未満?

例年調査日は15日〜18日であったが、本年は25日となり調査日が増え、その分カウント数も増えて、全体としては1123頭と1000頭を超えたことになった。ただし日割りにすると800頭程度。それに新調査地での大量の発生数く全体の25%)を引くと600頭程度にしかならず、昨年に次ぐ低いカウントにとどまった。
まとめ
総数は1000頭を超えていますが、肝心の第二豊田川での生息数は減っています。私たち調査に携わってきたものばかりでなく、毎年ホタルを見に来られる方、数年振りに見に来られた方、皆さんが異口同音に「少なくなりましたね」とがっかりされています。ホタルは自然のシンボル、ホタルを守ることは、鉢ヶ峯の自然を守ることにつながっています。生息環境の復元は緒に就いたばかり。大阪府や堺市とも連携をはかり、会員や一般の参加者をどんどん巻き込みながら『カムバック、ホタル』プロジェクトを進めていけたらと思っています。
今一つ気がかりなことは、東西道路開発による影響です。合流地点先を高架で10m道路が通ることになっていて、工事ももう始まります。もう一つは06年4月にオープンの「堺・自然ふれあいの森」。隣接の第二豊田川のホタルは貴重な観察資源。モラルやマナー、オーバーユースなどに注意しながら楽しんでもらえたらと願っています。
最後になりましたが、今回はのべ65人の方がこの調査に協力して下さいました。ありがとうございました。毎週とか調査者がいない日は引き受けますとか、管理道路が歩きにくいので草刈りをしておきましたとか(一般の方でしたが)、夜、お疲れにもかかわらず鉢ヶ峯に来て下さいました。
大阪府と堺市の職員の方も現地見学かたがた調査を手伝って下さいました。みなさん童心に返って1頭、2頭、あそこにもいる!とうれしそうに声をあげてカウントして下さいました。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
05年度「鉢ヶ峯・ホタル調査」記録調査結果 詳細データはこちら
期間・時間/6月1日〜30日20:00〜21:00
調査方法/ルートセンサス方式(左右前後・地面・上空の見える範囲)
凡例 /ゲンジボタル=ゲ  へイケボタル=へ  どちらか不明=?
陸生ホタルの幼虫=幼
註 1.調査が複数の場合は多い方を記録とした
  2.泉ヶ丘CCの北側の湿地(第二豊田川)もNo.1に入れてカウント
※大阪府鳳土木事務所河川課3人、泉州農と緑総合事務所堺分室4人
 堺市農政都南部丘陵担当1人、河川水路課1人