2008年「鉢ヶ峯・ホタル調査」報告

報告:野口 隆司

はじめに
本調査も今年で9回目を迎えます。6月1日〜30日の期間内で24日の調査日数、調査者は14人(本会調査者の延べ人数50人)でした。なお、大阪府泉州農と緑の総合事務所職員との合同調査を今年も実施しました。また、今年新たに「いっちんクラブ」の方々も調査に協力していただきました。
今年は桜の開花は平年並み、入梅が少し早く、6月前半は雨が降っても一時の集中雨で気温が低い日が多く、後半は空梅雨模様でした。第二豊田川沿いや合流部等の発生数が少なく、6月7日、8日のホタル観察会ができるのか気づかわれました。
08年の特徴
調査データ(別紙のグラフと記録を参照)
〔注〕今年の調査日数は24日(昨年の調査日数は26日、但しポイント10.11を除く)

(1) ポイント別の特徴
「第二豊田川沿いと合流部の区間」は河岸の片側が樹林で覆われており、「法道寺川沿い区間:ふれあいの森駐車場橋付近〜霊堂前の橋〜法道寺川橋」は一部樹林地があるものの、両岸は開けたスペースになっている違いがあります。調査ポイント1は別として、そのようなロケーションの違いで分類しポイント別の調査結果の特徴を検討しました。
 ○ 第二豊田川上流〜法道寺川の合流区間
 <調査ポイント1/勾玉の田の用水路と溜め池付近>
  総数324頭/18日間のヘイケボタルをカウントしました。最多数日は6月9日の38頭で、20頭以上の日が8日もあり、平均数は18頭/日でした。2006(H18年)までは、溜め池に注目してカウントしていたため見過ごしていたかもしれませんが、昨年から用水路沿いでのカウントをしており、昨年の平均数の18頭/日(最多数日:6月5日の35頭)とほぼ同じ平均数になります。
・発生箇所は用水路の曲がり角に集中しており、他の箇所との環境の違いがあるのかの検証やヘイケボタルの発生期間から見て来年は7月に入ってからもモニタリングをする必要があるかもしれません。
 <調査ポイント0〜8/第二豊田川〜法道寺川合流部付近>
ゲンジボタルの発生状況を分析すると、平均数は約19頭(総数455頭)で昨年の約22頭(総数562頭)に比べて思ったよりも微減でしたが、体感としてもっと減少している印象があります。特に最多数日の発生数は56頭/日(昨年78頭/日)で、ここ5年間と比較して2006年(H18年)の最多数日の201頭/日からみて明らかに減少しています。
ポイント0は、平均数1.7頭/日(総数41頭)で昨年の平均数0.9頭(総数24頭)で倍増傾向にありますが、尾根道の調査地点から川の方が樹木で覆われているため一部分しか見ることができず、実際の頭数はカウント数よりも多いと思われます。
ポイント2の減少が顕著になっています。昨年の平均数が4.2頭/日(総数108頭)が今年は1.9頭/日(総数46頭)で半減し、最多数日でも7頭(昨年20頭)しかカウントされていません。
・ポイント3も、昨年の平均数が3.1頭/日(総数81頭)が今年は1.8頭/日(総数43頭)で減少し、最多数日は8頭(昨年18頭)になっています。
また、ポイント7、8も減少しています。ポイント7は総数73頭で平均数は3頭/日(昨年:総数113頭で平均数4.3頭/日)、ポイント8は総数38頭で平均数は1.6頭/日(昨年:総数103頭で平均数4頭/日)になっており、特にポイント8の減少が目立ちます。
一方でポイント4・5・6は、昨年よりも各ポイントで微増傾向にあります。3ポイントの総数は211で平均数は8.8頭/日(昨年133頭で平均数5頭/日)で、平均数で断定するのか早計かもしれませんが微増しています。
 ○ 法道寺川区間
 <調査ポイント9/法道寺川:ふれあいの森駐車場橋付近〜霊堂前の橋>
昨年に比べてポイント9は決定的にゲンジボタルが減少しています。最多数日は昨年が59頭(6月8日)から今年は最多数日15頭(6月9日)で、平均数が2.3頭/日(昨年6.4頭/日)になっています。予想される減少原因として、以下のことが考えられます。
  1 ポイント9の下流区間で昨年以上に多く確認されていることから幼虫やカワニナが大雨で下流に流された。
  2 北側墓地の街路灯の光害により繁殖行動が阻害された。
  3 他の何らかの原因で生育環境が悪化した。
 <調査対象外ポイント>
調査ポイント10(法道寺川麦尾橋〜上流関電高圧鉄塔付近)は、昨年から東西道路工事用塀で囲まれ調査できない状況で調査ポイントにはしていませんが、有志で調査した結果、今年は2日で総数10頭(最多数日6頭)、昨年は6日で46頭(平均数7.7頭、最多数日15頭)を確認しました。調査日数が少なく必ずしも正確な数字とはいえませんが、減少しているようです。
「仮称」調査ポイント11(法道寺川:霊堂前の橋〜法道寺川橋)として、有志で徒歩等で調査をしました。12日間で総数は255頭(最多数73頭〔6月10日〕 次点49頭〔6月7日〕で平均数は12頭を確認しました。昨年の最多数は100頭をカウントした日があり、昨年は調査日数が少なく一概に言えませんが、今年の発生数は同程度と思われます。以前から少しは確認されていましたが、昨年から多数確認されてきました。なお、昨年に比べて霊堂前の橋の下流付近からさらに下流の区間中間地点及び法道寺川橋上流付近に多く見られました。前述したポイント9が大幅に減少していることから幼虫が下流に流されたという推測や3〜4年前から下流域にホタルの生息環境ができてきたとも考えられます。

 (参考:ゲンジボタル 昨年との比較一覧表)

ポイント 平均頭数 総頭数   最多日頭数
  今年 昨年 今年 昨年 今年 昨年
1.7 0.9 41 24 10(6/16)  7(6/25)
1.9 4.2 46 108 7(6/16)  20(6/16)
1.8 3.1 43 81 8(6/19) 18(6/16)
2.6 1.9 62 50 8(6/19) 6(6/6,20)
2.6 1.3 62 33 11(6/10) 4(6/15)
3.6 1.8 87 47 10(6/16) 12(6/16)
3.1 4.3 75 113 15(6/16) 15(6/19)
1.6 .0 38 103 6(6/16) 16(6/11)
2.3 6.4 55 166 15(6/9)  59(6/8)
10 5.0/2日 6.6/7日 10 46 6(6/10)  15(6/11)
11(仮) 21.2/12日 255 73(6/10)
(2)調査日から見た特徴
「第二豊田川上流〜法道寺川の合流区間」と「法道寺川区間」に分けて分析すると、6月
中旬までは第二豊田川に比べて霊堂前の橋から下流の法道寺川橋までの間に多数確認されています。第1位:73頭(6月10日)、第2位:49頭(6月7日)、第3位:27頭(6月16日)と6月前半までで、後半は急にいなくなっています。
調査ポイント9/法道寺川:ふれあいの森駐車場橋付近〜霊堂前の橋は、絶対数が少なくなっているとともに、相対的に昨年は6月前半に多く発生しましたが、今年は6月前半にほとんど確認できませんでした。
一方、第二豊田川沿いは、昨年同様、前半は発生数が少なく6月中旬をピークに徐々に少なくなっていきますが6月20日過ぎまで確認されました。
以上のとおり、6月上旬に法道寺川下流から飛び交い6月中下旬にかけて上流で多く確認されていますが、この特徴は昨年と同様の傾向になっています。
 
08年調査のまとめ
ここ5年間のカウント数の変化から見ても、往時の状況を知る者からすれば隔世の感があり、いかにゲンジボタルの発生数が減少しているかが分かります。いつまで第二豊田川沿いでホタルが飛び交う風景を見ることができるのか、心もとない限りです。
もう少し長期的に振り返ってみると、ゲンジボタルの鑑賞スポットの変化が見られます。ホタル橋と第二豊田川合流部がスポットでしたが、その後、合流部のカウント数が少なくなりその代わりにホタル橋の少し上流部→ポイント2の砂防ダム近くの潅木林付近で多く見られ、ここ数年は合流部下流のポイント9に、今年はさらに下流に移行していることが大きな特徴になっています。
それ程、実感はないのですが、ポイント4・5・6は、昨年よりも各ポイントで微増傾向になっています。単に調査日の違いによる変化なのか早計に傾向を断定するのではなく、来年以降のデータを見て検証する必要があると思われます。
現在、東西道路の橋脚と橋梁設置工事中の調査ポイント10は、調査日が少なく昨年と比較するには限界がありますが、来年以降、工事による影響が出ているのかどうかをもう少し見極める必要があります。
なんといっても嬉しいのは、調査ポイント1/勾玉の田の用水路でのヘイケボタルが昨年にも増して発生していたことです。6月早々の調査から上流部でヘイケボタルのイルミネーションのように点滅するシーンを見て、調査活動へのモチベーションアップにつながりました。
今後に向けて
次年度からは、正式に調査ポイントにしていなかった霊堂前の橋〜法道寺川橋を「調査ポイント11」として設定し、さらに下流も有志による調査が必要になってくるかと思われます。調査距離と調査時間が長くなり負担が大きくなってくるので、第二豊田川班と法道寺川班に分けるなどの配慮が必要かもしれません。
ポイント11でもカワニナカウント調査を実施して、「生育環境」と「カウント数の増加」の要因などを調べてみることも必要と思われます。
ヘイケボタルの発生期間が長いので、次年度からは7月にも調査を続行し、あわせて、ここ数年、発生数が増加した要因や用水路の中でも曲がり角に集中して発生している要因を調べることが必要と思われます。
来春、東西道路での車両ヘッドライトによる漏れ光害の走行実験が行われる予定です。ポイント9、10(第二豊田川合流部〜法道寺川麦尾橋〜上流関電高圧鉄塔の区間)のホタルへの光害の有無を検証するため、次年度は調査ポイント10を正式の調査区間にしたいと思います。
終わりに
今年もたくさんの方に天候も悪い日や夜遅くまでの調査をお願いし、無事に調査を終えることができ、ありがとうございました。大変お疲れ様でした。また、新たに調査に加わっていただいた方もおられ、嬉しい限りです。

3年ほど前に「第二豊田川ゲンジホタルの生息環境修復プラン(素案)」を作成し、さらに検討を加えて実践に繋げていこうとしていましたが中断しています。当時に比べて新たな問題としてゲンジボタルの発生が法道寺川の下流に移行しており、公園墓地内の街路灯の漏れ光による光害(ヒカリガイ)範囲の拡大が懸念されます。また、現在、大阪府と東西道路での走行車両のヘッドライト光害対策について話合いをしていますが、東西道路の供用により走行車両のへッドライト光害による影響も心配されます。

平成18年12月に環境省の「光害対策ガイドライン」が改訂され光害による動植物(自然生態系)への影響・・・を考慮するよう明記されました。
また、堺市は、平成19年3月に策定された「堺市・環境まちづくりアクションプログラム」の取組メニューとしてホタルを里山環境の象徴として身近な生き物が生息できる自然環境の保全・再生の一環として「ホタルの里づくり」を推進するとしています。折から、堺市は今年、国が募集している「環境モデル都市」の候補都市になっています。
このような状況の中で、堺市に対して同ガイドラインを遵守するなど、少なくともホタルの繁殖期間中は公園墓地内の街路灯を消灯することを求めていきたいと思います。

さらに堺市・環境まちづくりアクションプログラム」によるホタルの里づくりに向けて、環境モデル都市に相応しい「環境=低炭素型社会」のシンボルとも言える−ホタルとその生息環境−の保全と再生に向けて、本会だけでなく行政や他の市民団体、地権者など、関係者と一緒になって取り組んでいけたらと願ってやみません。

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