堺カントリークラブ「ゴルフ場ナイター照明計画」について(報告)

報告/野口 隆司

 堺市内には南部丘陵の市域境界沿いに3つのゴルフ場があります。その1つの鉢ヶ峯に近接し堺酪農団地の東側にある「堺カントリークラブ」が18ホールにナイター営業の照明設備を設ける計画が明らかになりました。昨年5月、本会メールボックスに工事施工者の叶V井組(本社/兵庫県西宮市)からナイター計画について意見を聞かせてほしいとの連絡がありました。
 工事施行者との話合いに先立ち、ナイター照明設備の設置についての法規制について調査したところ、環境省の「光害対策ガイドライン」があるだけで、ナイター照明の立地規制や照度を規制する法律がないのが実情でした。このガイドラインは1998年に策定され、2007年2月の改訂で、光害対策の目的を「人間活動だけでなく、自然生態系にとっても好ましい光環境の形成」であることをより明確に打ち出し、照明設備の計画に際して、関係者に(1)エネルギーの有効利用、(2)人間諸活動への影響、(3)動植物(自然生態系)への影響−−を考慮するよう明記していますが、あくまでも啓発指針であり法的強制力がありません。このような状況で、どう対応するか、本会メンバーで協議した結果、基本的には絶対反対としても食い止めることは困難であり、光害の環境負荷をどこまで軽減させること、本ガイドラインの遵守を求めるというスタンスで臨まざるを得ないと判断しました。

工事施行者との話合い
5月末と6月末に2回にわたって、新井組の責任者と本会メンバーで話合いの場を設け、ナイター計画の説明を受けて本会から何項目かの指摘と要望をしました。

(新井組からのナイター照明計画説明概要)

ナイター照明設備の発注者は、アコーディアゴルフ鰍フ子会社であるスポーツ振興鰍ナ堺カントリークラブを経営。工事施工者は、新井組。
交通利便性などの立地面で関西ではナイター営業は少なく、姫路の「三木セブン」があるが、三重県や関東では多い。
この間、大阪府、堺市、河内長野市の関係所管にナイター照明計画を説明した。照明灯の高さが15m以上であれば届出等が必要な場合があるが、当該計画の照明灯高さが13mであり、設置について特に規制がなく、また申請が不要である。
行政側から地元自然環境団体に説明するよう指導があった。
工事スケジュール、ナイター営業、照明設備等は以下の予定。
工事期間:20年8月〜10月(最短)
 発注者から来春の本格営業の前に今年10月中旬から11月末まで、従業員の訓練のため試験ナイター営業できるよう言われている。製品購入、夜間工事のみでありタイトなスケジュールであるが8月頃から着工を予定。
ナイター営業期間(予定)について
 3月中旬〜11月末
ナイター営業時間について
 個別ホール毎、点灯時刻(17:30〜18:30) 消灯時刻(23:00〜24:00)
 ※最終プレーヤーが当該コースのプレイを終えたらそのコースは消灯する
ナイター照明設備の配置について
  1 本コース27ホールのうち、北部の9ホールは北側に果樹園等もあり影響範囲が周辺全体に及ぶため、ナイター設備は南部の18ホールを計画。
  2 梅コース7番ホール、8番ティ部@、竹コース4番、6番、7番外周部Aの範囲は照明配置、侠角照明器具等による対応が必要。遮光ネット等の併用必要可能性あり。
  3 照明器具仕様は、街路灯:20個(メタルハライドランプ)、投光器:505個(メタルハライドランプ)を使用。照明及びポール配置は、狭角配光/15基、中角配光/84基、中角配光/6基(ルーバー内臓)、広角配光/25基の4種類の投光器を配置。西側ゴルフコースは、主として狭角配光と中角配光。西側法面沿いは東側向きに設置。北東コースには、中角配光(ルーバー内臓)6基を設置し、農作物への漏れ光対策をしている。
  4 ティグラウンドは標準水平照度約100Lx程度(ゴルフの打ちっぱなし場の1/3から1/4の明るさ)の均一な照明。
  5 フェアウエイは水平照度約50Lx程度を確保。ポール高さは13〜15mでポールの配置間隔は70〜100mが基本。
  6 グリーンは2方向からの均一な照明で水平照度約100Lx程度。
  7 芝生のグリーンを鮮やかに浮かび上がらせるメタルハライドランプを使用。虫の誘引性を低減するUVカット形を採用。
  8 近隣への配慮として、ポールを敷地境界側にレイアウトしホールを照らし、敷地外に漏れにくくする。
  9 すべてではないが、照明器具にルーバーを取り付け、上空への光をカットし、明るさが必要な場所だけを照らしムダな光漏れを抑える。
(本会からの指摘・要望概要)
ア. 行政から具体の指導はあったのか。ナイター営業は、環境面に影響を与えるだけでなく相当な電力消費を伴い、今日、CO2削減の企業責任に背反している。
イ. 環境影響評価法(条例)の適用がないとのことだが、環境影響評価に準ずる調査をされたい。
ウ. 環境省の「光害対策ガイドライン」は光害対策の目的の1つに動植物(自然生態系)への影響を考慮するよう明記しており、遵守されたい。
エ. 18ホールのプレイは約5時間を要す。自然環境負荷軽減として最終組が日没前の午後5時頃からプレイを開始で遅くとも午後10時に消灯の検討をしてもらいたい。
オ. 上空は光の柱のようになるとのことだが、夜空の明るさは検証されているのか。上空への光の拡散に対して、すべてにルーバーをつけるなどの対策を講じられたい。
カ. 説明を受けたが、分かりやすくするために、周辺のどの範囲にどの程度の明るさの光が出るのかをシュミレーション図で説明してほしい。なお、コース西側は狭角配光と中角配光の配置であるが各々ルーバー内臓ではなく、水平(西側)や上空への漏れ光を防ぐために西側エリアの投光器をルーバー内臓型にするよう検討されたい。
キ. ガイドラインでは、虫の誘引性を防止するには、水銀灯よりも高圧ナトリウム灯が良いとなっているが、変更できないか。
ク. 投光器は相当の熱を発生するが、投光器の正面に昆虫が飛び込んだら死ぬので避けて飛ばず、投光器の後ろ側を飛ぶ習性があり、熱で死なないように後ろ側に防護ネットの取り付けを検討されたい。
(新井組からの返答概要)
ア. 基本的には行政からは現行法令の規制の有無についてのみの話であった。お願いとして猛禽類の生息への配慮として工事期間を避けるよう話があり、8月からの着工予定している。
イ. 環境影響評価に準ずることは困難だが、周辺には猛禽類の生息が確認されている鉢ヶ峯の森があることは承知しており、また、周辺現況の照度測定なども行っている。
ウ. 環境省「光害対策ガイドライン」の遵守についてオーナー側は認識している。環境省の「光害対策ガイドライン」は、漏れ光の照度などについて具体の数字は明記されていないが、できる限り配慮して計画をしている。
エ. 運営上の事項でありオーナー側に伝えたい。なお、最終プレーヤーが当該コースのプレイを終えたらそのコースは消灯するので、実際にはナイター営業終了まですべてのホールで照明している訳ではない。
オ. 地表面の起伏や芝などの植生などの反射光も相当あり、明るさの測定が難しい。また、ルーバーを付けても地面からの反射光で上空への拡散効果として限界があると認識している。
カ. 西側コース〜西側尾根(尾根の南北沿いに市道)〜酪農団地〜鉢ヶ峯の森の間の照度分布のシュミレーションをしている。
西側尾根筋道路レベルとゴルフコースとの最大高低差は北西部で約30m。分析条件として、@西側境界付近の一番高低差の低い(市道〜コース面:高低差13m)箇所で設定、A敷地境界付近の樹木等の障害物がない前提、B市道GLを市道西側土地の照度計算面とする、など最も不利な条件で照度分布を測定した。
地形の断面を正確に出せないため、水平面では可能だが、正確な照度のシュミレーションは困難だが、市道から東側からコースGL面より+10m上の初期水平面照度が2Lx、市道両サイドが1〜0.5Lx、市道西側へ0.2Lx→0.1Lxである。
※0.1Lxは満月の月明かり程度で酪農団地建物の一部がかかる程度の範囲で、そこから西側への漏れ光はほとんどない。
このような地形、さらに西側尾根筋道路沿いに樹林帯があるため、遠くからボルフ場を見ると、上空にボヤッーとした光が筒状に見えるが西側(酪農団地〜鉢ヶ峯方向)の漏れ光は少ないと判断できる。なお、西側に隣接する酪農団地組合には説明済み。
西側エリアの投光器をルーバー内臓型にするか検討するが、試験営業の際に相当の漏れ光があれば後付タイプのルーバーの取り付けも可能。
キ. 高圧ナトリウム灯にする場合、投光器の個数が多くなるなど経済性の面があり難しい。
ク. 岩崎電気とも相談して検討する。
(本会からの意見)
これに対して本会から、当該ナイター計画に対する考えは、絶対反対という姿勢ではないが、計画を了解するということでもない。基本的には環境省の光害対策ガイドラインを目安とするが、ナイター照明を設置し、実際にどの程度の光害があるのか、実際にどのように、どのような動植物への影響が出るのかなどをモニタリングしながら検証していきたいので、本会と継続的な協議をされたい旨をオーナーのスポーツ振興鰍ノ伝えられたい。
11月に試験営業とのことだが、本会と現地立会い(ゴルフ場内外)し、また、検討結果を連絡されたい。
新井組から、まだ正式に工事請負契約を締結していないが、言及されたことについて発注者側に伝えて連絡したい。また検討項目についても連絡したいとの返答でした。

堺C C 、新井組との話合いと現地立会
9月末、堺CC(総支配人等)、新井組、本会メンバーで、堺CCクラブハウス内の会議室での堺CCと顔合わせと協議をしました。
新井組より、現在、照明灯はすべて設置済みだが角度調整等の工事が残っており11月に工事完了する。なお、10月10日から、11月末までナイター試験営業を行う。今回は顔合わせを主とし、第2回の点灯の立会も予定したい。
西側コースの投光器にルーバーの取り付けは可能にしている。また、虫の防護対策として、一番誘虫性の低い照明灯を使用している。当該照明灯はUVカットメタルハライドランプ(紫外線90%カット/セラミック形:別添資料参照)で、水銀ランプ(蛍光形)の誘虫性比率を100とした場合、40の割合になる。
本会から、@ナイター営業時間として予定よりも早められたい、Aナイターゴルフの利用者数は何人かを確認する。現在、泉北2号線〜ハーベストの丘〜酪農団地までの東西道路の工事中だが、開通したら車利用者のルートとして利用されるのか、を要望・質問する。
・堺CCから、
 1 18ホールをプレイするのに約5時間を要するが、フル営業の場合に最終組が終わるのは午後11時ないしは11時30分までにある。なお、ナイター終了時刻を早めるのは困難だが、最終組が各ホールでのプレイを終わる毎にそのホールの投光器を消灯していくので、午後11時過ぎまですべて点灯しているわけではない。
 2 フルのナイター営業の利用者は100人を予想している。東西道路を通ることについて、現在検討していない。
本会から試験営業期間中に照度測定され、次回立会時に測定結果を提示されたい旨を伝える。また、今後も堺CCと適宜協議する旨を確認する。
新井組から、次回立会日について連絡するとのこと。堺CCより協議の継続を了解される。
協議の後、すべてではないが投光器の点灯をして状況を見る。

第2回 堺C C 、新井組との話合いと現地立会
第11月末に、第2回の話し合いの場をもちました。
新井組と本会メンバーで、酪農団地と堺CC間の尾根の舗装道路を歩きながら堺CCの入り口ゲートに設置した照明施設近くの地点、尾根道の中間地点で典型的な状態の地点、河内長野市の下里グラウンドへ下る曲り道の地点で堺CCの南西端の地点で照度測定器を使って測定する。
  ゴルフコースの照明灯の光が木立の隙間から眩しいが、堺CC沿いが樹林地になっており酪農団地側への漏れ光はほとんど無い状態。
一方、堺CC沿いの樹林の樹冠部分は西方向の照明灯の光に照らされ鮮明になっている。
○堺CCの南西端の地点では樹林がなく南西方法に漏れ光が相当あり、西南遠方の関電高圧鉄塔にも照射している。→ 新井組から堺CCに対して堺CC敷地法面に遮光のため高木を植えるよう伝えているとのこと。
立会後、堺CC総支配人とも話をする。南西端の地点での遮光樹木の植栽を確認したところ、植栽を予定しているとのこと。また、今後、引き続き協議をされたい旨を確認しました。

 以上が、この間の経過概要ですが、堺CCナイター照明問題への対応を通じて、光害に対する法規制が全くと言っていいほど整備されていないこと、また、ホタルの繁殖行動に対する光害などは解明されていますが、総じて自然生態系・動植物に対する光害について実証が遅れていることを再認識しました。このようなことも背景として光害に対する本会の対応が各論・技術論になっていることに取組みの「弱さ」を認めざるを得ません。今後、専門知識や取組み面等での限界もありますが、光害に対して夜行性動物をはじめ自然生態系へ影響が出ているのかなどのモニタリングも検討しながらゴルフ場事業者と引き続き協議していきたいと考えます。

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