− 堺市長、大阪府知事に要望書を提出 ―

鉢ヶ峯公園墓地の北側尾根道の市道と酪農団地と堺CCに挟まれた市道を 拡幅する計画

 前号の1月号で行政への聞き取り結果について報告しましたが、「鉢ヶ峯公園墓地の北側の尾根道の市道」と「酪農団地と堺CCに挟まれた市道」を拡幅する計画の検討が行われています。
 この間、大阪府は河内長野市と千早赤坂村の合併に対する支援として、河内長野市から堺へのアクセス道(連絡道)整備を支援することを堺市と河内長野市に表明し計画の具体化を進めてきました。ところが、市村の合併が破綻した現在でも、引き続き道路拡幅整備を行うかについて大阪府と堺市で話し合いが行われようとしています。そのため、次のとおり堺市長に対して道路拡幅計画化の中止を求める要望書を2月9日に提出しました。大阪府知事にも同じ趣旨の要望書を提出しています。2月末までに文書にて要望に対する回答を求めていますが、回答の内容に応じて新たな対応をせざるを得ない場合があります。ハーベストの丘の南側の森での残土処分による開発問題の署名の取り組みと併せて、今後、皆様のご協力をお願いすることになるかもしれません。

堺市道釜室豊田1号線等の道路拡幅計画化の中止を求める要望書

平成22年2月9日

堺市長 
 竹山 修身 様

堺市北区東三国ヶ丘町5−2−9
鉢ヶ峯の自然を守る会
代表 米道 綱夫
  

はじめに
 本会は、鉢ヶ峯地域で計画されたゴルフ場開発問題をきっかけに、1992年に発足し今日に至るまで鉢ヶ峯の里山を中心に堺南部丘陵の身近なみどりの保全と再生をめざす取り組みを進めている市民活動団体です。
 泉北ニュータウンの南側に位置する南部丘陵は、豊かな自然環境を有し、多様な生態系を育み、潤いのある自然景観が見られるところです。堺市総合計画『堺21世紀・未来デザイン』において、無秩序な土地利用を抑制することによって良好な自然環境を保全するとともに、市民が身近に自然とふれあい憩う場として活用することが謳われて、さらに『堺市緑の基本計画』では、南部丘陵地の多様な自然環境と生き物の保全を目標としています。
 その南部丘陵において、府営田園空間整備事業「堺南部地区」として現在工事中の東西道路(以下、東西道路)と接続する堺市道釜室豊田1号線及び畑下里線の道路を拡幅し、河内長野市から堺市へのアクセス道路として整備する計画が検討されていると聞き及んでいます。
堺市道「釜室豊田1号線」の拡幅でみどりの回廊と里山景観の破壊を招く
 釜室豊田1号線が通る尾根道(本会では「妙見尾根」と呼んでいる)沿いは、里山の生き物が生息し、堺と大阪狭山や河内長野の樹林地を結ぶ重要な「緑の回廊」となっています。  
また、樹林地の南北には四季を彩る棚田が連なり、土手にはコモウセンゴケが群生、谷筋にはハナミョウガの群落が見られるなど、堺市で唯一まとまった稀少な植物が生育する貴重なグリーンベルトとなっています。
当該市道沿いは急斜面であることから道路を拡幅する場合は道路の幅よりも大幅なエリアの造成工事が行われ、車道だけでなく相当の道路法面の設置が必要になると推測されます。そのことから現在工事中の東西道路の例を見るまでもなく、拡幅工事によって樹林地のほとんどが消失するばかりでなく、周辺土地の乾燥化を招くことが危惧されます。その結果、生物の多様性が失われるとともに、市内の代表的な里山景観も壊滅的な打撃を受けることになります。
堺市道「畑下里線」拡幅で生じる光害の生態系への影響
 また、釜室豊田1号線から南下した畑下里線の区間は、道路尾根道を挟んで東隣りに堺カントリークラブのゴルフ場、西隣りには堺酪農団地、さらに堺自然ふれあいの森に繋がる樹林地があります。一昨年、堺カントリークラブが18ホールに夜間照明灯を設置しナイター営業することが明らかになりました。フクロウなど夜行性動物をはじめ動植物の生態に対する照明灯の光害による環境負荷軽減対策について同カントリークラブ側と協議を重ね、環境省の「光害対策ガイドライン」を遵守し、周辺への漏れ光対策等を行うことになりました。畑下里線の尾根道の両側にコナラなどの高木が帯状に茂り、幸いにもこれら樹林帯が西側の里山への漏れ光を遮断するものとなっています。
 予定では「延長距離約1.4qに及んで現幅員約2.5mを約9mに拡幅する。」とのことですが、拡幅工事により遮光効果のある樹林帯を伐採することが予想されます。伐採された場合、堺酪農団地と西側に拡がる樹林地の広範囲にわたって光害を受けることになります。この間、市民と民間事業者が話し合いを続け光害の防止対策を講じてきたにもかかわらず、環境省の「光害対策ガイドライン」を遵守し、範を示すべき行政が自身の公共事業によって光害を引き起こすことになりかねません。
両市村の合併が破綻している今、何故、道路拡幅なのか
 そもそも、河内長野市から堺市へのアクセス道路整備の検討は、河内長野市と千早赤坂村の合併支援策として大阪府から発案されたと仄聞しています。昨年、両自治体の合併が破綻したことにより、その経緯からしても引き続き多額の税金を投入してまで支援をする意義はなくなっていると言えます。
 また、河内長野市・千早赤阪村合併協議会会議録を見ると、堺へのアクセス道路ルートは河内長野市から畑下里線〜東西道路〜泉北2号線のルートであり、釜室豊田1号線は俎上になく、行政自らの計画や施策に背き、緑を破壊してまで道路拡幅する正当な理由はありません。さらに道路拡幅に伴い、長峰圃場整備地域の自動車の流入による営農環境の悪化につながると同時に、道路が整備されることにより尾根筋沿道の無秩序な土地利用や乱開発を誘発することにもなりかねません。
本道路拡幅計画化は、行政のみどり保全計画・施策に矛盾する
 折しも、堺市は環境モデル都市として低炭素型都市『クールシティ堺』の実現をめざし「古墳群・ため池・旧環濠・里山等の歴史文化・自然資源を保全・再生することで、ヒートアイランドを抑制し、市民が憩う、クールダム・クールライン・クールスポットを創出する。」とされています。また、現在策定中の『泉北ニュータウン再生指針(案)』には、再生を実現する都市像として「自然や農に触れ、ゆとりのある郊外居住を実現できるまち」とし、「農地や里山等の保全活動への市民参加」がニュータウン再生のキーワードとしています。
 さらに、昨年末の堺市市議会で次の市議会に『堺市緑の保全・創出に関する条例案』を上程する予定です。同条例案第5条、第6条で市民や事業者に「緑の保全の責務」を規定している一方で、総合計画など自ら策定したみどり・自然環境の保全の計画や施策に相反してまで、道路拡幅という公共事業を進めるという矛盾を起こすことになります。市長は先の市長選挙で「太陽光をはじめとするクリーンエネルギー、エコロジーのまちづくりをします。」と市民に約束されました。また、市議会での所信で「CO2削減に結びつく環境共生型のまちづくりを進めます。」と表明されています。
 竹山市長におかれては、以上のことについてご理解いただき、堺市道釜室豊田1号線等の道路拡幅計画化に関して慎重にご検討のうえ、計画化の中止をされるよう強く要望いたします。あわせて平成22年2月末までに本要望に対して文書にてご回答いただけますよ
うお願い致します。

ページ先頭へ