トンボ連載その2

春のトンボ − フタスジサナエ・オグマサナエ

山本哲央

トンボ目不均翅亜目サナエトンボ科コサナエ属
前回紹介した越冬種を別にすれば、最も早くから姿を現すトンボの仲間といえます。
 このサイズで黄色地に黒の縞模様のトンボはビギナーにとって見分けにくいものが多いのですが、 鉢ヶ峯では、ため池に見られるのはこの二種と考えてよく、両種は胸の模様で区別できます。 4月下旬(オグマサナエはさらに10日ほど早い)ごろの晴れた午前中なら、 ため池の岸辺などで羽化が観察できるでしょう。
 私は5年ほど前に豊田川へ降りる途中のため池で、フタスジサナエの羽化を撮影しました。 十数頭の幼虫(ヤゴ)が水辺から、岸辺や水に浮いている落葉などに上ってきて次々と羽化を始めました。 ほとんど半分水につかった状態で羽化するので、うっかり波でも立てようものなら、ひっくり返ってしまいそうでした。 地味な色のトンボとはいえ、羽化したての個体が陽光に羽をきらめかせて飛び立っていく姿は実に印象的でした。
 産卵は羽化場所と同じような場所に、空中に静止したままパラパラと産み落とします。 ちなみにサナエは早苗の意味で、このトンボの仲間が田植えの頃に見られるものが多いところからきています。
 
鉢ヶ峯での観察ポイント
 護岸されていなくて、あまり日陰の多くない棚田付近のため池。 出始めの若い頃は、日当たりのよい農道や付近の草の上にかぶさるように止まっている。オグマサナエは少ない。