トンボ連載その5

10月のトンボ−マユタテアカネ

山本哲央

トンボ目不均翅亜目トンボ科アカネトンボ属
赤トンボも初心者にとっては見分けの厄介なグループです。できれば網で捕まえてみて、それでもわからないようであれば標本にでもしておいて、しかるべき人に見てもらうことも必要です。こと虫に関しては採るな触るなでは見分けに必要な知識を得るのは困難でしょう。特にトンボはオスとメスが色の違うのはもちろんのこと、未熟と成熟でもがらりと色が変わったりするので私も最初は随分悩まされたものです。
 
さて、鉢ヶ峯で記録されている12種のアカトンボ(アカネトンボ属)の中でマユタテアカネに似た小型の種類というと、ヒメアカネとマイコアカネがいますが、今やこの2種はめったに見られなくなっているのでわずらわしい思いをすることもないでしょう。
 
マユタテアカネの特徴は名前が示すとおり、額にあたる部分に眉のような紋があること、尾部の付属器がはっきり反り返っている点があります。注意したいのはメスに2タイプあって(オスにはない)、羽の縁がつま黒状になるものがあるということです。これはリスアカネのメスと取り違うかもしれませんが体型や胸の模様がだいぶん違います。
 
このトンボはアキアカネなどと違って夏の間山の上で避暑をすることもないので、6月に羽化した後から姿を消す11月一杯まで見ることができます。盛夏には木陰の多いところで見られますが、秋になると田んぼの脇の溝などで縄張りをはるオスが目に付くようになります。11月になって日差しが弱くなってくると、稲刈りの済んだ田んぼの白っぽいところで羽を広げて日向ぼっこをするのが見られることでしょう。このトンボも普通種でしたが、水田が放置されて脇の水路が干上がったり、溝がU字溝にされたりして産卵場所を奪われ、減少してきています。