残土処分開発で堺市「鉢ヶ峯の森」があぶない!(報告その3)

        関連記事 
        2010/11/01 残土処分開発で堺市「鉢ヶ峯の森」があぶない!
        2010/07/01 残土処分計画の中止を求める要望書 署名を堺市に提出
        2010/03/07 堺市南部丘陵で、今また開発(残土処分)計画が!
        2010/01/07 鉢ヶ峯地域における残土処分問題について(経過報告)
昨年の12月堺市議会に第3次の要望書・陳情書を提出!
 学校法人藍野学院(理事長 小山 英夫・事務所の所在地: 茨木市東太田4丁目5番4号)が、昨年9月30日に堺市環境影響評価条例に基づき「同学院野外活動施設整備事業に係る配慮計画書」を堺市長に提出し、建設残土で森を埋立てる開発を行う意思を明らかにしたことをニュースレターbX7号(H22年11月発行)で報告したところです。広大な森とツツジ尾根の樹木のほとんどを伐採し、建設残土で森を埋立て、23.3haの土地にグラウンドなど野外活動施設を整備するというものです。
 一昨年(平成21年)の11月13日に堺市長、市議会議長に対して、「鉢ヶ峯地域におけるみどりの保全を求める要望書」を提出、又、多くの市民の方々の署名を添えて平成22年6月には「南部丘陵での開発(残土処分)計画の中止を求める要望書」を提出し、森の保全を訴えてきました。そのような中で、藍野学院が残土処分開発計画を中止せず、残土処分開発を行うことが明らかになったことから、改めて平成22年11月に市長、市議会議長に次の2項目の要望・陳情を行いました。(要望書全文は末尾に掲載しています。
1. 配慮計画書に対して堺市環境影響評価条例に事前配慮制度を導入した趣旨を踏まえて、実効ある計画審査を行うこと。
2. 開発者に保全の働きかけを強めるなど具体的な対策を直ちに行い、万一、開発者の理解が得られない場合、都市緑地法に基づく「特別緑地保全地区」の指定等の有効な措置を講じること。
環境保全の見地から踏み込んだ計画審査を・・・?!
 藍野学院から提出された「配慮計画書」に対する堺市環境影響評価条例に基づく堺市の手続きは、以下のとおりです。
同計画書を「公告」し、大学教授等で構成する第3者機関の「堺市環境影響審査会/常任委員15名、特別委員4名」へ専門的な意見を求めます。
同審査会の意見を勘案して、環境保全の見地から意見を記載した「計画審査書」を作成し、審査書を藍野学院へ送付します。
 本会メンバーや開発者側と思われる人達が傍聴する中、昨年10月に第1回審査会が開催され、委員の現地調査(10月21日)、第2回審査会(11月25日)開催を経て、11月30日に配慮計画書に対する審査会の検討結果が市長に答申されました。
 12月10日、市長は同審査会の答申を踏まえて、環境の保全の見地から「事業者は、下記に示す理由から事業を回避することも含めて検討すること。」という計画審査書を藍野学院に送付しました。

【市長が示した主な理由の要旨】

(1) 藍野学院及びグループ校と事業計画地との位置関係からスポーツ施設の必要性や十分利用されないことと懸念する、農地は雨水以外の水供給手段がないことから、その必要性は疑問である、野外活動施設の一般市民開放の設備管理計画が整っていなことから、当該野外活動施設の必要性は乏しい等と判断せざるを得ない。
(2) 計画地を含む南部丘陵は、堺市にとって自然生態系が見られる数少ない地域の一つであり、第2次堺市環境基本計画で「南部丘陵地の豊かな自然環境の保全」、堺・クールシティ宣言では「南部丘陵など市域に現存する豊かな自然環境の保全」と位置づけられている。特に事業計画地は樹林地率が100%に近く、自然環境・生物多様性の豊かな地域であることから自然環境の保全や生物多様性の維持に関して最大限の配慮が必要。方法書の作成等に進む場合、事業規模の縮小等による環境負荷の低減等、各種環境配慮事項等の推進を強く要請する。
(3) 藍野学院とグループの給食用有機野菜等の栽培農地としているが、農地造成の必要性は低いと言わざるを得ず、環境影響の低減のため、農地造成の回避、事業規模の縮小を含め、検討結果を詳細に説明すること。
(4) 本来、自然環境の保全という面を考慮して事業計画の検討を進めるべきであるにもかかわらず、同質の自然環境であることの確認もされずに一部の環境を回復させればいいという姿勢が垣間見える。方法書及び準備書の作成に当たっては、現状ある自然環境の保全の配慮内容、対策措置を明確にして手続きを進めること。
(5) 東西道路の市道認定の遅延で事業着手が遅れた場合やオオタカの営巣等地域環境に著しい変化があった場合の手続きの再実施に当たっては誠実に対応すること。
 以上のほか、28項目に亘って意見が申述されました。これまで環境アセスメント制度について事業(開発)に合わす「環境アワスメント(合わすメント)制度」と一般的に揶揄されますが、本計画審査は強制力はないものの事業の回避=事業の中止を含めて環境へのさらなる配慮を求めており、事実上、堺市が残土処分開発の中止を求める姿勢を開発者に表明したものと言え、今後、藍野学院が条例に基づき方法書の提出をするか、その対応が注目されます。
「堺市環境影響審査会の配慮計画書に対する検討結果」、「堺市長の計画審査書」の本文は、「堺市環境影響評価制度」でインターネット検索すると掲載されています。
→ (堺市HP) 環境影響評価制度
堺市長、南部丘陵の緑地保全の仕組みについて「堺市緑の政策審議会」に諮問!
 このような動きと並行して、堺市は昨年9月1日施行された堺市緑の保全と創出条例第7条の規定に基づき設置された第三者機関の「堺市緑の政策審議会:委員14名」に南部丘陵の緑地保全の仕組みづくりを諮問しました。10月7日の第1回審議会が開催され、その後3回の部会で南部丘陵の現状と課題、緑地保全のあり方などについて検討されました。今年1月13日開催の第2回審議会で「緑地確保のしくみ(緑地保全制度を活用した保全策)について」の中間答申)がされ、6月に上旬に緑地保全運動、財源の仕組み等、南部丘陵の緑地保全の仕組みづくりについて最終答申が出される予定です。同審議会において、南部丘陵の中でも唯一まとまった森であり、生物多様性を維持する上でもかけがえのない自然空間である「鉢ヶ峯の森」の保全を視野に入れて検討されているものと考えられます。また、昨年10月から今年3月まで南部丘陵の植生調査と上神谷地域の緑保全の座残会が地域で開催されています。
「堺市緑の政策審議会」でインターネット検索すると審議会及び部会の会議録、資料が掲載されています。
→ (堺市HP) 緑の政策審議会会議録・資料
今後、大きな局面を迎えることが予想される?
 藍野学院野外活動施設整備事業に係る配慮計画書に対する計画審査で示された「事業を回避することも含めて検討すること」の市長意見は、環境影響評価の視点から市の姿勢を示したものであり、このことを踏まえて、1月予定の堺市緑の政策審議会の中間答申がどのような内容になるのか、残土処分開発に対して鉢ヶ峯の森の保全に対してどのような対応を表明するのかを注目する必要があります。
今後、藍野学院が環境影響評価条例に基づく方法書を提出した場合、堺市長の計画審査に背を向けたと判断せざるを 得ず、堺市に対して都市計画決定による「特別緑地保全地区」の指定について、さらに働きかけを強めるなど、里山保全に向けた取り組みを展開する必要があります。引き続き、会員の皆さんのご協力をお願いいたします。

平成22年11月12日

建設発生残土の埋立てによる「鉢ヶ峯の森」の破壊を中止し、 かけがえのない森の保全を求める要望書

堺市長
 竹山修身様
要望(代表)者
 住所 堺市北区東三国ヶ丘町5-2-9
 TEL 072-253-2072
 住所 堺市北区東三国ヶ丘町5
 (団体名)鉢ヶ峯の自然を守る会
 氏名   米道 綱夫
 住所 堺市南区庭代台1-23-5-206
 TEL 072−299−1779
 (団体名)堺野鳥の会
 氏名   清水 俊雄
 住所 堺市南区茶山台2-2-8-301
 TEL 072−291-5561
 (団体名)大阪自然環境保全協会堺自然観察会
 氏名  酒井 和子
要望の内容
 今年9月末、堺市環境影響評価条例に基づき、「学校法人藍野学院野外活動施設整備事業」の配慮計画書が堺市長に提出されました。この開発計画は、鉢ヶ峯の森や森に連なる尾根筋の樹木を伐採し、外部から約140万?(東京ドーム一杯の容積)の建設発生残土を搬入して森の尾根から石津川の源流にあたる「明正川」の谷筋にわたって大規模に埋立てるものです。約23.3haの土地に野球場、テニスコート等の施設を建設し、また、現在工事中の広域農道「東西道路」からの進入道路を築造する計画になっています。
 鉢ヶ峯の森は、豊かな生態系を育み、生物多様性を支える貴重な自然空間になっています。コナラ等の落葉樹を中心に堺で最も深い森であり、森の中を南から北に蛇行して流れる明正川はV字の谷を形成し、崖面は多種のシダ・コケ類で覆われ、せせらぎはサワガニやカワムツなどの生き物の生息地になっています。また、オオタカの採餌行動が見られ、かつて繁殖が確認されるなど、堺南部丘陵のなかでも第1級の自然環境、自然景観を代表するエリアになっています。
 東西道路からの野外活動施設への進入道路として築造予定の「ハーベストの丘」の東側に隣接する尾根筋は、私たちが通称「ツツジ尾根」と呼び、春の新緑にピンクのコバノミツバツツジが林床を彩り、ヤマザクラやカスミザクラが咲き誇る堺の里山景観を象徴する小径になっています。また、尾根筋の東側にある内河池には、冬に多数のオシドリが飛来します。
 配慮計画書には、開発に当り自然環境の保全に十分配慮するとなっていますが、開発計画区域のわずか約6.8haを残置森林として帯状に残すのみであり、また、明正川にバイパス管を敷設して川を暗渠化したりすれば、微妙なバランスで成り立っている生態系に致命的打撃を与えるものです。まさに森と川で成り立つ自然環境、生態系を根こそぎ破壊するものです。
 また、残土による大規模な埋立ては、防災上の問題があるだけではなく、下流に位置するハーベストの丘の小川や池に土砂や濁水が流入し、堺市レッドリストAランク(最重要保護)に指定されているヘイケボタルの生息を危うくし、さらに農業用利水として使用できなくなることが危惧されます。
 この9月1日に堺市緑の保全と創出に関する条例が施行され、堺市はみどりの保全に大きく足を踏み出しました。また、堺市環境モデル都市行動計画で「〜自然環境の保全と緑や水辺を活用したまちづくりによる堺独自の「環境文化の創造」の3つの戦略を基本視点に取り組む〜」と謳い、南部丘陵の豊富な緑・里山環境の保全などで大規模な緑の拠点「クールダム」を形成するとしています。
 学校法人藍野学院野外活動施設整備事業による建設発生残土処分は、堺市のみどり・環境計画や施策に大きく背反するものです。万一、残土処分によりかけがえのない鉢ヶ峯の森が破壊された場合、これからのみどり・環境行政に大きな禍根を生じ、次の世代に大きな負の遺産を残すことになりかねません。

このことから、次のことを要望します。

【要望事項】
1. 本開発計画は、単に自然環境に悪影響を与えるというレベルではなく自然環境自体を消失させると言えるものです。本配慮計画等に対して堺市環境影響評価条例に事前配慮制度を導入した趣旨を踏まえて、実効ある計画審査を行ってください。
2. かけがえのない「鉢ヶ峯の森」の保全に向けて、開発者の理解を得られるよう働きかけを強めるなど具体的な対策を直ちに行ってください。万一、開発者の理解が得られない場合、都市緑地法に基づく「特別緑地保全地区」の指定等の有効な措置を講じてください。

以上

ページ先頭へ