残土処分開発で堺市「鉢ヶ峯の森」があぶない!(報告その5)

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昨年10月、堺市は鉢ヶ峯の森で建設残土処分開発が問題になっている中で、堺市緑の政策審議会に南部丘陵における緑地保全の仕組みについて諮問しました。同審議会は今年1月20日、「豊富な緑地や希少な動植物が残る堺市の南部丘陵の約160ヘクタールのエリアを特に保全を優先すべき地区とし、開発をする場合、市長の許可が必要な「特別緑地保全地区」の活用が有効である。」と答申しました。
答申を受けて、市長は2月10日開催の第5回堺市都市計画審議会で、残土処分開発(グラウンド等の野外活動施設)を主なエリアとする「鉢ヶ峯寺地区特別緑地保全地区:約14ha」の決定(素案)を報告し、今年8月頃の予定で同保全地区の指定(都市計画の決定)をすることを明らかにしています。

「鉢ヶ峯寺地区特別緑地保全地区の決定(素案)」の公聴会が開催
 都市計画決定の手続における公聴会に先立ち、堺市は、3月26日(土)南図書館集会室で特別緑地保全地区の決定(素案)についての地元説明会を開催しました。本会メンバーを含めて計12人の市民が出席し、素案に対する質疑応答がされました。
 1月後の4月26日、堺市役所本庁会議室で、素案に対する公聴会が開催され、17人の公述人が賛否の意見を述べ、公述内容は特別緑地保全地区素案に反対が7人、賛成が10人でした。公述記録から類推すると、反対された方々は開発者2人(うち1人は開発コンサルタント)、残土処分開発エリア内の土地所有者など地元の近隣接地権者5人、賛成の側は環境団体8人、地元団体2人(鉢ヶ峯土地改良区、同営農組合)の内訳でした。
 当該特別緑地保全地区の指定に反対の立場の方の主な理由は、@地区指定は私有財産権の侵害になる、A当該地以外も地区指定の答申がされており、地権者や近隣接地権者への十分な説明と同意を得ていない、B南部丘陵の利用の将来ビジョンを示していない等々です。一方、賛成の立場の意見は、@当該地は南部丘陵の中でも連続した緑地の中心部であり、多様な動植物を育み、一度は破壊したら復元できない、A堺市のマスタープランや緑・環境政策に合致し、その具体化を図るもの、B市民アンケート等から市民は南部丘陵の保全を望んでいる、C「上神谷米」は本地域の土壌と水から生まれたもの、農地・水・里山等の自然環境を末代まで守り発展させる思いであり、保全地区指定は上神谷米のふるさとの水を供給するため必要である、D私権=私有財産の問題は重要であるが、本地区指定に伴い都市緑地法により開発者・地権者は損失補償や土地の買取り請求ができる、私権の行使は公共性により制約されるものであり地権者の理解を望みたいなどの公述がされました。
*堺市ホームページに本公述記録全文が掲載されています。「堺市都市計画課 公聴会で検索」
開発者がアセス方法書を申請!
 特別緑地保全地区の都市計画決定手続が進められている一方で、5月23日、藍野学院が野外活動施設開発について堺市環境影響評価条例に基づき、環境評価の方法を記した「方法書」を堺市に提出しました。堺市から事実上、開発の中止を求めてられていましたが、開発を行うこと明らかにしたわけです。方法書には、当初の開発計画を一部変更しスポーツ施設用地を4.4haから3.3haに縮小し、緑地を0.4haから0.7ha、残置樹林を6.8haから8haに増やすなど、環境に配慮するなどとしています。堺市は同条例に基づき、5月31日〜7月14日の45日間、方法書の公告・縦覧と方法書への市民意見を募集することをホームページで知らせました。
その数日後、開発者から堺市に「その方法書は何者かの偽造で開発計画は当初からない。」と申し入れ?
 その数日後の5月27日、藍野学院の理事長らが堺市を訪れ、「昨年提出された環境影響評価条例に基づく野外活動施設開発の「配慮計画書や」今回の「方法書」も堺市に出していない。同計画は知らない。理事長は申請に押された理事長印を押していない。」などと説明し、5月30日には、藍野学院代理人の弁護士2名から内容証明郵便が堺市に届きました。代理人からは「配慮計画書」や今回の「方法書」は何人かに偽造されていることは明確であり、現実に堺市に提出した人物の氏名・住所の情報提供や提出者の署名や記名押印のコピーを返信するよう、堺市に求めています。なお、藍野学院は監督官庁の文部科学省高等教育局私学部私学行政課から、この問題を直ちに是正するよう指導を受けていることを追伸しています。
 以上のことはマスコミでも大きく報道され、堺市は「提出書類に理事長名の印もあり手続きに不備はなかった。事実関係を確認する」とし、方法書の公告・縦覧及び市民意見の受付を見合わせすることを決定し、環境影響評価条例の手続は止まったままで現在に至っています。
今後の動向は?
 以上が、最近の残土処分を巡る動きです。公聴会において開発者側からの特別緑地保全地区指定に反対する公述は予測されましたが、地元農業団体の方々が、残土処分の埋立による農業用水の水質悪化の危惧や農環境の保全を求めて地区指定に賛成する一方、地元の地権者の公述によると、地区指定地を含めて当該地域で藍野学院を入れて77人の地権者のうち66人が反対に対する同意書を集めたので、近々に堺市長に提出予定と表明しています。又、藍野学院理事長が、「そもそも残土処分による野外活動施設開発はしてない、この間の堺市への申請書は偽造されたもの。」と申し入れるなど、開発者側で、私たちが計り知れない動きがあると思われます。このような状況の中で、当初予定では公聴会の公述に対して堺市の意見を付して都市計画原案を作成し、この7月に堺市都市計画審議会に「鉢ヶ峯寺地区特別緑地保全地区の決定(原案)」を付議することになりますが、当初のスケジュールどおり都市計画決定の手続を進めるのか、今後の動きを注視していきます。

【この間の経過概要】
2009年(H21年)
08/18(火) 堺市環境保全部環境総務課に対して鉢ヶ峯の森の「残土処分開発」の動きをヒアリング
11/13(金) 堺市長、堺市議会議長へ「鉢ヶ峯地域におけるみどりの保全を求める要望書」提出
当該残土処分開発計画の全容を明らかにし樹林地の消失と生態系を壊滅する当該計画を認めないこと。
早急に「堺市緑の保全と創出に関する条例」を制定すること。
12/15(火) 12月堺市議会で残土処分開発計画の概要が明らかになる。
2010年(H22年)
03/上旬 残土処分開発問題の署名活動を開始。
06/01(火) 堺市長、堺市議会議長へ第1次署名(3400筆)を添えて「南部丘陵での開発(残土処分)計画の中止を求める要望書」を提出。
南部丘陵での、残土処分による開発計画を中止させること。
早急に「堺市緑の保全と創出に関する条例」を制定し、かけがえのない森を守ること。
06/18(金) 堺市、9月1日施行の「堺市緑の保全と創出に関する条例」を制定。
07/下旬頃 現地に「建設計画予定地」看板が設置。
09/30(木) 藍野学院が堺市環境影響評価条例に基づく「同学院野外活動施設整備事業に係る配慮計画書」を提出。
11/12(金) 堺市長、堺市議会議長へ「建設発生残土の埋立てによる「鉢ヶ峯の森」の破壊を中止し、かけがえのない森の保全を求める要望書」を提出。
配慮計画等に対して事前配慮制度を導入した趣旨を踏まえて実効ある計画審査を行うこと。
開発者の理解が得られない場合、都市緑地法に基づく「特別緑地保全地区」の指定等の有効な措置を講じること。
堺市議会各会派ロビー活動を実施。(市議会陳情・里山生物多様性等の集い案内)
11/27(土) 「里山の生物の多様性と鉢ヶ峯の残土処分(開発)問題を考える集い」開催。
11/30(火) 堺市環境影響評価審査会が堺市長に配慮計画書に対する検討結果を答申。
12/10(金) 堺市長が計画審査書を藍野学院に送付。
*審査概要「環境保全の見地から事業者は事業を回避することも含めて検討すること。」
2011年(H23年)
01/20(木) 堺市緑の政策審議会が堺市長に答申。
答申概要
「豊富な緑地や希少な動植物が残る堺市の南部丘陵約160ヘクタールの区域 について、開発に市長の許可が必要な特別緑地保全地区の活用が有効。」
01/26(水) 「南部丘陵・堺市民アンケート調査結果/H22.10.18〜10.31」を堺市発表。
調査対象:堺市在住の18歳以上の3000人に郵送配布回収 有効回答数1382人
調査結果南部丘陵保全 
進めるべき(50.7%) どちらかといえば進めるべき(32.4%) あまり思わない(3%)
思わない(1.2%) 分からない(9.6%) 無回答・不明(3.2%)
02/10(木) 堺市都市計画審議会へ堺市南部丘陵における「特別緑地保全地区の決定(素案)」を報告
03/26(土) 堺市が「鉢ヶ峯寺地区特別緑地保全地区の決定(素案)」の地元説明会開催 於 堺市南図書館
04/26(火) 堺市都市計画公聴会開催  於 堺市役所本庁
05/23(月) 藍野学院が堺市環境影響評価条例に基づく「方法書」を堺市に提出
※同条例に基づき方法書の縦覧と意見募集(期間:5/31〜7/14の45日間)
05/30(月) 藍野学院の代理人弁護士から堺市長に堺市環境影響評価条例に基づく「配慮計画書」及び「方法書」を提出しておらず、何人かに偽造されたことが明白である旨の文書(内容証明郵便)が郵送される。
※5/27(金)、藍野学院理事長が堺市へ来庁し、上記の申し出あり。
※5/31(火)、堺市が方法書の縦覧を見合わせると発表。

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