残土処分開発で堺市「鉢ヶ峯の森」があぶない!(報告その6)

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堺市から事実上、開発の中止を求めてられていた残土処分による野外活動施設開発について、今年5月23日、藍野学院は堺市環境影響評価条例に基づく「方法書」を堺市に提出し、開発を行う姿勢を明らかにました。
ところが、その数日後、藍野学院理事長らが堺市に赴き、「提出書類は何者かが偽造したもの、藍野学院はそもそも野外活動施設計画をしていない。」と申し出を行い、事態は予想だにしない展開となりました。
このことは本会7月号会報でお知らせしましたが、その後、当該野外活動施設開発を巡る動きやその背景が新聞報道で大きく報道され、その一端が見えてきました。

鉢ヶ峯の森の土地所有を巡る不可解な動きと背景
 今から20年程前に鉢ヶ峯寺地区でゴルフ場開発計画が起こりました。ゴルフ場開発予定地(約130ha)のほとんどを藍野学院グループが買収し、ゴルフ開発が頓挫した後、ハーベストの丘などの用地として堺市に売却した土地以外の広大な土地は同グル―プが引き続き所有していました。
平成19年2月にその一部の土地を野外活動施設開発予定地(約20ha/以下、鉢ヶ峯の森という。)として同グル―プから藍野学院が約1.4億円で購入しましたが、その後、本土地の所有を巡り、不可解な動きが明らかになりました。
平成19年9月、平成20年3月まで藍野学院の理事長であった小山昭夫氏(以下、元理事長という。)は、学校の経営難に陥った樟蔭東学園(東大阪市)に2億円の資金融資を行い、同学園の顧問就任と理事選任権を取得し、学園の事実上のオーナーになる。
平成22年3月〜4月まで、元理事長個人が無担保で樟蔭東学園から3.8億円の融資を受ける。
融資金の1億円を元理事長自身の借金返済に充て、2.8億円を藍野学院(現理事長小山英夫氏/元理事長の長男)の学生寮建設資金として藍野学院に貸し付ける。
平成23年3月29日に藍野学院への貸付金の代物弁済として、元理事長に鉢ヶ峯の森の土地所有が移る。
同年3月31日に樟蔭東学院が元理事長所有の鉢ヶ峯の森の土地に所有権移転請求権の仮登記をし、4月5日に抵当権を設定。
鉢ヶ峯の森の野外活動施設開発は堺市に土地買収させるための偽装開発か?
 樟蔭東学園が理事会決議を経ずに無担保で元理事長に4.3億円を融資(3.8億円+1億円追加融資の計4.8億円のうち、0.5億円のみ返済)したことを外部通報で知った文部科学省や大阪府は教育目的に使われるべき補助金や授業料が含まれる学校資金を学園顧問の元理事長の私的利益のために不適切に融資したとして、早期に元理事長から融資金を回収するよう同学園に指導していることが分かりました。文部科学省等からの指導に従い、樟蔭東学園は元理事長に返済の督促を行い、元理事長は今年7月4日付の文書で「所有している鉢ヶ峯の森が特別緑地保全地区に指定され、その土地の売却金で融資金を弁済する予定であった。」などと督促に対する回答していました。
 特別緑地保全地区に指定されると開発は制限されますが、堺市に対して開発土地の買い取りを法的に請求ができることになります。ところが、今年5月末に藍野学院が「野外活動施設開発計画はしていない、同学院は関与していない。」として堺市に申し出たことから開発手続が凍結され、思惑どおりにならず、融資金の返済の目途が立たたないとして樟蔭東学園に配慮を求めたとのことです。
藍野学院が、元理事長を背任罪容疑で告訴
 今年8月、藍野学院は「元理事長が現職理事長の時に理事会の決議を経ないまま、野外活動施設開発を計画し、理事長退任後の平成20年3月以降も計画を進め、開発計画の経費約7200万円を不正に支出した。」として、元理事長を背任罪容疑で大阪地検に告訴しました。また、本経費分の損害賠償請求の民事訴訟も起こし、9月28日の第1回口頭弁論で元理事長は賠償請求に対して争う姿勢を示しています。
この事態に堺市の対応は?
 堺市は、今年1月に堺市緑の政策審議会の中間答申を受けて、鉢ヶ峯の森は開発圧力が高く、緑地の減少が危惧される緑地として「特別緑地保全地区」の指定をすべく都市計画手続きを進め、今年7月に堺市都市計画審議会に提案し、8月に地区指定を予定していました。  
 7月27日開催の平成23年度第1回都市計画審議会に特別緑地保全地区素案に対する公聴会(4月27日開催)の公述内容を報告しましたが、地区指定の提案をせず、現在、都市計画決定の手続を進めていません。あわせて、野外活動施設開発計画における堺市環境影響評価条例に基づく「方法書」を受付した状態ですが、条例による手続を凍結したままになっているようです。
 また、公聴会では、開発者側以外に特別緑地保全地区予定地の近隣土地所有者5名から所有する土地への影響が懸念され、土地利用に制限がかかることへの不安があること、堺市の説明が不十分であることなど、地区指定に反対の公述意見があったことを重く受けとめて、土地所有者の理解と協力を得るために地元説明会の開催や緑地保全の協力者へのインセンティブを検討するとしています。現在、堺市は裁判の行方を探りながら地元対応を行い、特別緑地保全地区指定の都市計画決定手続きは留保する構えと推測されます。
 また、公聴会では、開発者側以外に特別緑地保全地区予定地の近隣土地所有者5名から所有する土地への影響が懸念され、土地利用に制限がかかることへの不安があること、堺市の説明が不十分であることなど、地区指定に反対の公述意見があったことを重く受けとめて、土地所有者の理解と協力を得るために地元説明会の開催や緑地保全の協力者へのインセンティブを検討するとしています。現在、堺市は裁判の行方を探りながら地元対応を行い、特別緑地保全地区指定の都市計画決定手続きは留保する構えと推測されます。
引き続き、南部丘陵の保全を求める取り組みにご協力を!
 事実上、開発計画が動かない状況のなかで、藍野学院が提訴した裁判において鉢ヶ峯の森の野外活動施設開発計画がどのような取り扱いになるのか、地元説明等を通じて地元関係者の理解と協力はどうなるのかなど相当の時間がかかると思われます。また、鉢ヶ峯の森の土地が元理事長の所有になり、融資金返済のため転売される可能性もあり、新たな開発の動きが現れる場合も予測され予断を許せません。引き続き、今後の動向を注視しながら南部丘陵の保全を求めて取り組みを進めていきたいと考えます。

【この間の経過概要】
2009年(H21年)
08/18(火) 堺市環境保全部環境総務課に対して鉢ヶ峯の森の「残土処分開発」の動きをヒアリング
11/13(金) 堺市長、堺市議会議長へ「鉢ヶ峯地域におけるみどりの保全を求める要望書」提出
当該残土処分開発計画の全容を明らかにし樹林地の消失と生態系を壊滅する当該計画を認めないこと。
早急に「堺市緑の保全と創出に関する条例」を制定すること。
12/15(火) 12月堺市議会で残土処分開発計画の概要が明らかになる。
2010年(H22年)
03/上旬 残土処分開発問題の署名活動を開始。
06/01(火) 堺市長、堺市議会議長へ第1次署名(3400筆)を添えて「南部丘陵での開発(残土処分)計画の中止を求める要望書」を提出。
南部丘陵での、残土処分による開発計画を中止させること。
早急に「堺市緑の保全と創出に関する条例」を制定し、かけがえのない森を守ること。
06/18(金) 堺市、9月1日施行の「堺市緑の保全と創出に関する条例」を制定。
07/下旬頃 現地に「建設計画予定地」看板が設置。
09/30(木) 藍野学院が堺市環境影響評価条例に基づく「同学院野外活動施設整備事業に係る配慮計画書」を提出。
11/12(金) 堺市長、堺市議会議長へ「建設発生残土の埋立てによる「鉢ヶ峯の森」の破壊を中止し、かけがえのない森の保全を求める要望書」を提出。
配慮計画等に対して事前配慮制度を導入した趣旨を踏まえて実効ある計画審査を行うこと。
開発者の理解が得られない場合、都市緑地法に基づく「特別緑地保全地区」の指定等の有効な措置を講じること。
堺市議会各会派ロビー活動を実施。(市議会陳情・里山生物多様性等の集い案内)
11/27(土) 「里山の生物の多様性と鉢ヶ峯の残土処分(開発)問題を考える集い」開催。
11/30(火) 堺市環境影響評価審査会が堺市長に配慮計画書に対する検討結果を答申。
12/10(金) 堺市長が計画審査書を藍野学院に送付。
*審査概要「環境保全の見地から事業者は事業を回避することも含めて検討すること。」
2011年(H23年)
01/20(木) 堺市緑の政策審議会が堺市長に答申。
答申概要
「豊富な緑地や希少な動植物が残る堺市の南部丘陵約160ヘクタールの区域 について、開発に市長の許可が必要な特別緑地保全地区の活用が有効。」
01/26(水) 「南部丘陵・堺市民アンケート調査結果/H22.10.18〜10.31」を堺市発表。
調査対象:堺市在住の18歳以上の3000人に郵送配布回収 有効回答数1382人
調査結果南部丘陵保全 
進めるべき(50.7%) どちらかといえば進めるべき(32.4%) あまり思わない(3%)
思わない(1.2%) 分からない(9.6%) 無回答・不明(3.2%)
02/10(木) 堺市都市計画審議会へ堺市南部丘陵における「特別緑地保全地区の決定(素案)」を報告
03/26(土) 堺市が「鉢ヶ峯寺地区特別緑地保全地区の決定(素案)」の地元説明会開催 於 堺市南図書館
04/26(火) 堺市都市計画公聴会開催  於 堺市役所本庁
05/23(月) 藍野学院が堺市環境影響評価条例に基づく「方法書」を堺市に提出
※同条例に基づき方法書の縦覧と意見募集(期間:5/31〜7/14の45日間)
05/30(月) 藍野学院の代理人弁護士から堺市長に堺市環境影響評価条例に基づく「配慮計画書」及び「方法書」を提出しておらず、何人かに偽造されたことが明白である旨の文書(内容証明郵便)が郵送される。
※5/27(金)、藍野学院理事長が堺市へ来庁し、上記の申し出あり。
※5/31(火)、堺市が方法書の縦覧を見合わせると発表。
08/? 開発計画を巡って藍野学院が元理事長を背任罪容疑で告訴、損害賠償請求の民訴訟を提訴
09/28(水) 損害賠償請求訴訟の第1回口頭弁論で元理事長が請求棄却で争うことを表明

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